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イーヴィル・アイ(邪視眼)  作者: ランプライト
第二章:討論大会×係
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高校一年の夏休みは、楽しい事で溢れかえっている筈だった。 何と言っても取り敢えず今年の夏休み位は受験の事を忘れても良いよね。 友達と遊ぶとか、友達と旅行とか、私友達少ないけど親友の萱島はどうせ暇だからきっと付き合ってくれるに違いない。 素敵男子との運命的出会いは望み薄だけど、ぱっとしない先輩とは言え、再来週には部活の合宿で天体観測&化石堀りに行く予定。 お父さんは相変わらず家ではゴロゴロしっぱなしだから家族旅行なんてモノは端っから諦めてはいるけれど、もしかしたら外食位は連れて行ってくれるかも知れない(注、あくまでも嫌嫌渋渋仕方なく付き合ってあげるんダカラネ)。


それに何と言っても、コレだけまとまった時間があるんだから、一寸位は「オカルト研究」に手を出しても良いよね。 中ニ病とか意味判んないけど、私には「陰謀で封印された奥義に触れてしまった者」としての責任が有ると思うんだ。 最近気になっているのはネットで見つけた「と或る夢想家の詩集」と言うブログ。 あくまでもポエムの形で発表しているけれど、それはあくまでもカモフラージュ。 この夢想家の綴る言葉と行間には、私にならば解読できる奥義の欠片が、散り嵌められている。 そう、あたかも聖書に散り嵌められた暗号の様に、…読み解ける者の登場と接触を待っているに、…違いない!



と、思っていたのに。…それなのに!


夏休みが始まったばかりの晴れた午後、私は何故か学校の職員室横の会議室のテーブルに腰掛けて、じっと目立たない様に頭を抱えていた。 いや、それ所では無い。 この先、毎週二回、火曜と木曜の午後を丸々潰して、学校に通わなければならないなんて!


藤森:「何故、…こうなった!?」


それは、私が「討論大会」の係、…だからだ。



ウチの学校のユニークな取り組みの一つがこの「討論大会」だ。 もう一度言う、弁論大会ではない、「討論大会」なのだ。 中等生の部と高等生の部に分かれて、1チーム6人以下(注、一人でも可)×10チームでそれぞれ3つのテーマについて「討論」するのだ。 チーム編成上のルールは、学年混合はOKだが男女混合は駄目だと言う事(注、理由は不明)。 


予め15個のテーマが決められていて、例えば「明智光秀の裏切りは正しかったか否か」、「日本の道路にランナバウトを導入するのは正しいか否か」、「朝のニュースの占いは必要か必要ないか」等。 参加者はこれら15個のテーマからジャンケン(注、関西ではインジャンとも言う)で3つのテーマを選択(注、奪い合う)する。 


試合は同じテーマを選択した敵チームと討論して言い負かす、と言う単純なものなのだが、一寸ヤヤコシイのは、「良い/悪い」のどちらの意見を述べるかは、当日討論会場のコイントスで決められると言う事。 つまり参加者は、前もって両方の意見の論拠とデータを準備しておかなければならないと言う訳なのだ。 


勝敗は互いの反論に反論できなくなったチームの負け、…と言う形で決定される(注、所謂ディベート大会の簡易版ネ)。



問題は、この大会が、夏休み中に準備されて、夏休み中に戦われる。と言う事だった。 テーマの発表は夏休み前日、チームのエントリ期限は夏休み開始後一週間以内。 そして大会本番が夏休み8月第三週の土曜日! 


参加者には夏休み中、学校の図書室とコンピュータ室(注、ネット接続可)、申請次第では化学実験室や家庭科実習室の教材機材を優先的に使える権利が与えられる。 参加者達の準備も大変そうだけど、この大会は、県外の教育機関他からも結構注目されていて、大会当日には外部からかなりの人数の見学者が訪れる。 


そこで私達「討論大会」係の役割は、この大会の大掛かりな運営と準備のサポートという訳だ。


でも何故、皆が夏休みを丸々潰して迄この大会に入れ込むかの本当の理由はと言うと、…なんと、最高勝ち点を取ったチームには、ご褒美として大学推薦の優先枠と夏休み最終週の海外旅行チケットを手に入れる事が出来るからなのだ!


とは言えまあ、ただの「討論大会」係の私にそんな特典が貰える訳も無く、こんな天気の良い夏の午後を丸丸潰して、大会参加チームの数調整をどうするか(注、大抵10チームに満たないので知り合いに電話を掛け捲ってエントリしてもらう様に説得する)について延々不毛な打ち合わせを続けるのは、やはり、…


腑に落ちない。

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