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そこは、真暗な、「宇宙」?「深海」?
何処か広大無縁の「空間」の中で、私の身体だけが、上も下も無く漂い続けていた。
振り向くと、私のほんの直ぐ後ろに、手を伸ばせば届く程の距離に、例の、男の子の姿が見える。
男の子は、また、泣いているミタイだった。
私は、夏休みの臭いのする、裸ん坊の、可愛い男の子に、辿りついて、そっと、…抱きしめる。
藤森:「ほら、アンタ「悪魔」なんでしょ、しっかりしなさいよ。」
男の子:「君は、怖くないの?」
藤森:「アンタが怖がってるから、イチイチ怖がってられないのよ。」
男の子は、ワザとか?偶然なのか?…私の乳房の辺りに顔を、…埋める。
可愛いじゃないか!、…こんちきしょう!
藤森:「此処は何処なの? 死後の世界?」
男の子:「そうとも言えるし、そうじゃないとも言える。」
男の子は、まるで甘えた子猫みたいに、私の身体の中で、背伸びする。
男の子:「此処は「可能性のスープ」、或いは「妄想のソース」、」
藤森:「とか言う割には、何にも無い所ね。」
男の子:「此処は、要するに「魔法陣」の裏側なんだ。 …魔法使いは、「魔法陣」を通じて、此処からアラユル可能性を引き出す事ができるんだ。」
藤森:「元の世界に戻る事は出来ないの?」
男の子:「僕達にできる事はもう何も無いよ。 僕達は偶々「認識」する事ができる別々の存在が近くにいたから、元の世界の「残像」を引きずって姿を保っていられるけれど、これも長くはモタナイ。 暫くすれば、他の可能性達と同じ様に、「存在しないのと殆ど同じ状態」に分解されてしまうんだ。 …ちょうど、ミキサーの中の果物の繊維みたいに、」
藤森:「ごめん、あんた可愛いけど、言ってる事は全く分からないな。」
男の子:「此処にあるのは「可能性」、つまり「存在の材料」だけなんだ。 可能性が「実在」する為には、「ルール」と「認識する者」が必要なんだよ。」
男の子:「たとえば、アルファベットが紡がれなければポエムにならない様に、0と1が紡がれなければギャルゲーにならない様に、言語やパターンに価値を持たせるという「ルール」と、それを「認識」する読者やプレイヤーが居なければ、ドラマやラッキースケベは発生しないって、…そういう事なんだ。」
藤森:「ごめん、もっと分かんなくなった。」
男の子:「たとえば、クラスで苛められて皆から空気の様に扱われている子が居るとする。 無人島に一人きり取り残されて途方に暮れている子が居るとする。 世界が滅亡してただ一人だけ生き残った子が居るとする。 確かに存在するのだけれでも誰からも見られない言葉も聞かれない触っても気づかれない、まるで認識されない子が居るとする。…ここは、それよりももっともっと誰からも相手にされない、そういう場所なんだ。 誰かが気づいて呼び出さない限り、僕達は存在しないのと殆ど同じ、…可能性や妄想は、そのままでは存在しないのと同じ事。 僕達はそういう所に居るんだよ。」
一瞬、男の子の姿が、大和田千恵子と、重なって見えた、…様な気がした。




