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気が付くと、親友が私の太腿にぶら下がっていた。 どうやら腰が抜けたらしい。…って、アンタどんだけビビリなのよ?
私は苦笑いして、…女王様は、少しバツの悪そうな表情で、…
藤森:「ちょっと、今日は、無理みたいです~。」
三条:「そう、みたいですね、」
萱島:「あかん、ちびったかも知れんー!」
…って、アンタどんだけビビリなのよ?(大切な事なので二回言いました。)
三条:「では、近い内に、ウチに招待させてもらえないですか?」
女王様の家に招待だと? …そんな事が取り巻き連中に知られたら、一体どんなに恐ろしい事になってしまうのやら!
私は、さらに苦笑いして、言葉を濁す。
藤森:「はあ、じゃあ、その内に、」
三条:「きっとね。 私、三条茜です。 良ければ、貴女、お名前を教えて頂ける?」
藤森:「私、藤森って言います。 同じクラスの、…」
三条:「そう、…これからは仲良くしましょうね。」
女王様は、にっこり笑って、軽く会釈して、それからシャナシャナとモデル歩きで校庭の端っこのお客様用駐車場の方へ、…やがて、何だか高級そうなデカイ外車のルームランプが灯って、…運転手らしいヒトが、お辞儀をしながら後ろのドアを開けて、待っている。
藤森:「へー、ホントにあんな事するんだ。」
萱島:「どうしよー、ちびったかも知れんー!」
私は、上流階級の日常の風景に見蕩れながら、…ガニ股気味に不思議なステップを踏む親友の非日常に溜息を漏らす、
藤森:「あー、腹減った、」
萱島:「なあ、トイレ、着いて来てくれるよね?」
あーー、怖いんだネ。 一人でトイレ行くの。
しかし、親友が此処までビビりになってしまった責任の一端は、もしかすると私に有ると言えなくもない。 何しろ私は小学生の頃から事有る毎、美弥子にオカルト心霊話を聞かせ続け、禁忌と呪いと祟りで雁字搦めに洗脳し続けてきたのであった。 まあ、トイレについて行くくらいは、…
藤森:「しょうがないなぁ、…ほら、行くよ!」
結局、あの「まっぱの美少女」の件は有耶無耶になってしまったが、服装の乱れた女王様といい、ナザール・ボンジュウと言い、もしかして夜の校舎で、ナニやら怪しげな黒ミサ的な何かが執り行われているのでは無いか知らん? と、どうしようもなくウズウズと、私のオカルト・マスター(笑)?の血が、…騒いてしまう。。。
私は、親友が個室で粗相の後始末をする間、学校の夜のトイレの洗面台の鏡に映る、自分の背後を、じっと眺めていた。
アモルファス分子構造の歪みが醸し出す精妙な真相のずれをもってしても、「此処とは違う世界」を映し出す事が叶わないのは、既に2年前に検証済みだ。 それでも何故かしら、私は其処に「深い水面の向こう側」が見える様な、そんな気がして、ついつい覗き込んでしまう。 目が離せなくなる。
萱島:「一寸、かえチャン(=楓、私の事)! ちゃんと其処に居おるやろね?」
藤森:「……、」
萱島:「ちょっと! 居るよね!」
藤森:「……、」
萱島:「アカンて、ヤメテや! 居らんかったら怒るよ!」
藤森:「……、」
親友は異常に怖がりで、…私は鏡の中を覗くのに忙しい。
エピソード1 「JK×夏休み」
登場人物のおさらい
藤森楓:主人公、オカルト好きな極普通の女の子
萱島美弥子:親友、成績優秀、小学生3年迄は大阪府育ち
三条茜:学園の女王様、容姿端麗、Fカップ、成績優秀、家はお金持ち、学校の通学は運転手付きマイバッハ。イラストは茜のイメージです。(イメージです!)
不思議な男の子:中学生にもなってお漏らし?するが、可愛いので許せるらしい、