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藤森:「綺麗、…」
それは、まるで完璧な球体関節人形ミタイで、何だかとても人間とは思えない。しかし、何故?…全裸?
藤森:「あの子、何で裸なの? 何でこんな夜中にプールで泳いでる訳?」
萱島:「しー! なぁ、見に行かへん?」
藤森:「えっ?…何でよ?」
萱島:「もしかして彼氏とか来て、其の侭「やってまう」とか、…有り得るんとちゃう?」
正直プールに近づくのは嬉しくないのだが、「やってまう」は、…健康な女子高校生には抗い難い響きだ。
勿論、自分が「やってまう」のは有り得ない。…それは怖すぎる。
萱島:「ちょっとトイレー!」
藤森:「お手洗い行って来まーす!」
私達は急いで階段を駆け下りて、校舎を抜け出すと、プールに通じる更衣室に向かう。
果たして、更衣室のドアには、案の定と言うか、しっかりと鍵が掛かっていた。
藤森:「もう、帰っちゃったのかな?」
萱島:「まさか、そんな早う着替えられへんやろ? 中から鍵かけてるんとちゃう?」
男子なら、フェンスによじ登って、とかやるのかも知れないけど、…流石に其処までは無理だな、でも、…
藤森:「ちょっと待って、ホントに人間だった?」
萱島:「ナニそれ? まさか幽霊とか言うンちゃうやろね?」
藤森:「何だか、不自然に綺麗すぎるって言うか、…」
萱島:「アカンて、やめてーや!」
プールの仕返し、と言う訳ではないが、親友は、意外と怖がりだったりする。…と、行き成り! 私達の背後に、…人の気配!
物音:「ガサっ!」
萱島:「ひィ!」
其処に現れたのは、見知った顔、…我らがクラスの、…女王様?
三条:「あら、今晩わ、…こんな遅くに、こんな所で、何をしているんですか?」
珍しく、一人だ? そう言えば、取り巻きが居ない。
藤森:「あっ、私達、地学部の部活で、天体観測の途中、…」
三条:「そうですか、…」
伏せ目がちに、長い睫を見せ付ける女王様、確かに美人だ、何故だか不自然にシャツの襟元が、肌蹴ている? そのフクヨカナ胸の深い谷間にチラリと見えた…「青い目玉のペンダント」、
藤森:「ナザール・ボンジュウ、…」
その一瞬、女王様の目つきが変わった。
三条:「貴方、このペンダントの事、…知っているの?」
藤森:「確か、ギリシャかトルコの、魔除けのペンダントだとか、…」
女王様はペンダントを胸の奥に仕舞って身形を整え、少し頬を高揚させて私に、…上目使いする?
三条:「ねえ貴女、もし良かったら、少し、…お話しませんか?」