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「イーヴィル・アイ」、…見ただけでヒトを不幸にし、ある時はその命すらも奪う、邪視、邪眼。
その元々は、聖でも悪でもなく、邪視の始祖は天使「サリエル」だとも言われている。 「サリエル」は悪魔すら退けるその強力な邪視の為に、ルシフェルと並ぶもう一人の堕天使と称される事もある強大な天使だ。 更に遡るエジプトでは「ホルスの目」が魔を退ける力があるとされた。 見ただけで敵を滅ばす力を持つ眼力は、近年では「プロビデンスの目」として、アメリカドルの紙幣にそのデザインが使われている事は、広く知られている処である。
しかし、根源的な邪視の発動源は、神の力に遡るまでも無く巷に極普通に存在する。「嫉みの視線」である。 他人の「恨み嫉みの視線」は、それだけで呪いの力を持つとして古くから忌み嫌われてきた。
そして、この邪視を防ぐ護符アミュレットが、「ナザール・ボンジュウ」であり、「ハムサ」である。 要するに、「変な目で見んなよ!呪い返すぞ!コルゥア!!」…と言う訳だ。
でも、どうして、私の掌に、そんな「モノ」が?
三条:「その不思議なポスターが、「ホルスの眼」の呪力を活用したものだとしたら、その呪力に対抗する為のモノかも知れませんね。」
藤森:「でも、どうして私が、そのポスターの呪いに対抗しなければならないの?」
私は、ポケットに入れっぱなしだった2枚のポスターを取り出して、二人に見せる。
萱島:「こんなポスター見た事無いな、」
三条:「私も、気付きませんでした。 確かに、これは「ホルスの眼」をモチーフにしていますね。」
藤森:「見てこれ、全く同じポスターなのに、生徒会の判子の日付と作者の名前が違っているの。」
萱島:「単なる生徒会のミスか、手抜きとちゃうん?」
藤森:「三条さん、この名前に、何か意味があると思う?」
茜が、捨てられた子犬みたいな悲しそうな瞳で、私の顔をじっと、…/藤森:「茜、どうかな?」
三条:「ワザワザ名前を変えて描いているのだとしたら、其処には何か意味が有る筈です。」
茜、嬉しそうにニコニコしながら、私の服の袖をちょこっと、…撮む、
藤森:「本当に、この名前の生徒が学園にいたのか、調べられないかな? 何か共通点とか?」
三条:「きっと、お父様のパソコンなら、歴代の生徒名簿が見れると思います。 任せて下さい。」
それから私は、最後にもう一つ、胸につかえていたものを、吐き出した。
藤森:「御免、茜、一つだけ教えて、私達が最初に会った一学期の最後の夜、貴女学校で何してたの?」
途端に、茜の顔が曇り、…口篭った。
藤森:「悪い、言いたくないなら、無理には聞かないわ。」
三条:「違うんです、…言います。 私、もう一人の、御姉様に、会ってたんです。」
茜は、恥ずかしそうに、伏せ目がちに、…何でだ??
藤森:「もう一人の御姉様って?」
三条:「私が中等部に入ったばかりの頃に、私が一人で泣いていた時に、優しく慰めてくれた方。」
三条:「あの晩も、私、ちょっと辛い事があって、御姉様に慰めてもらって、…どうしよう、私、お姉様が二人になってしまって、…これからどうすればいいんだろう?」
茜、何だか一人で思い出し悶え、…している?
萱島:「いやーー、三条さんがこんなサバケタ百合やったなんて、全然気付かへんかったわ、…」




