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中年男:「何故、ポスターを破った?」
駒ちゃん:「えっ、ポスターって? あら、これって宿直室にあった奴?」
私は、中年男に身竦められて、息が出来ない。…どうして? 何なの、この男?
中年男は、不審そうに私を睨みつけたまま、ゾンザイに、私の掌をとって、痣を、観察する。
そうして、確かに、私にだけ判る角度で、ニヤリと哂った?
中年男:「こんなものは、放って置けば治る。 …全く、人騒がせな!」
駒ちゃん:「あら、そう、良かったわね、」
中年男:「それより精神状態の方が心配だ。 病院に連れて帰って検査した方が良さそうだな。」
えっ? 私を、何処へ連れて行くって?//:「嫌ダ! 逃ゲナキャ!…」
中年男:「直ぐに支度をしろ、」
そんなの、きっと、酷い事をされるに、…決まってる。
この男は、きっとこの「呪い」の事を知っている、…関係している。
//:「行ッテハ駄目ダ!…」
何かが、本能を揺さ振るほどに、私に胸騒ぎさせる。
藤森:「私、帰らないと。 もう、大丈夫だから、…」
何時の間にか、私は制止を振り切って、保健室を飛び出していた。
でも何処へ、逃げればいい?
家は? 駄目だ直ぐにバレル。 それで、何だかんだ理由をつけて、親を騙して、「検査」に連れ出されるかも知れない。 そうしたら。きっともう、…御仕舞いだ。
誰に、助けを求めればいい?
私、どうかなっちゃったの?…頭、おかしくなっちゃったの?…それとも本当に、何かが私に取り憑いてるの?…それに、あの中年男は一体何者なの?…あの目、絶対にまともじゃない事考えてるよ!…検査とか言って、私の身体に悪戯するに決まってるよ!…怖いよ、どうしよう?…どうすれば良い?…
30分後、私は、親友の家で毛布に包まって、熱いココアを飲んでいた。
萱島:「落ち着いた?」
藤森:「……、」
萱島:「それで、何があったん?」
私は、手の甲に浮き上がった丸い痣に、ぼーっと視線を落す。
親友を、こんなモノに巻き込んじゃいけない事位、分かってる、
でも、…
何だか、急に、涙が零れて来て、溢れてきて、…止められない。
私は、其の侭15分位、何も言えない侭、泣き続けていたと、思う。




