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藤森:「此処かな?」
重いスチールドアの鍵を開けて、手探りで部屋の蛍光灯のスイッチを入れる。
閉じ込められて沈殿した時間が、生気を求めて、一気に、…溢れ出してくる。
中は、教室三つ分位の広々した縦長の倉庫で、びっしりと三列に本棚が、それこそヒトの入る隙間も無い程びっしりと、並んでいた。
大和田:「ここが「184番」だよねー、でもこれ、どうやって本、取るのかなー?」
番号札を頼りに、お目当て本棚を探し当てるも、本棚と本棚の隙間は、…ざっと1cm、
藤森:「多分、このスイッチを押すんだよ。」
本棚に付いたボタンを押すと、…電動モーターの働きで、その部分の隙間が、キュルキュルと開いて行く。 大体1m位の隙間が空いて、本棚は自動的に、…止まった。
藤森:「「02」って、上から2段目?」/大和田:「下から2段目ミタイだよー、」
藤森:「「A」って?」/大和田:「一番奥だねー、」
藤森:「どっちが行く?」
先生には、二人で一緒に本棚に入っては駄目で、一人は必ず本棚の傍に居て、間違って本棚が閉まらない様に見張っていなければならないと言われていた。…そして、私はジャンケン(注、関西ではインジャン)が弱い。
藤森:「何だか、変な臭いだな~、」
恐らく、防腐剤?防黴剤?の臭い、それと、古い紙の匂い
藤森:「D、…C、…B、…あっ!」
突然、蛍光灯が、…消えた。
丁度、真上の蛍光灯が、古くなっていて、消えたり点いたり、…ピンピン音を立てて跳ねている。
藤森:「見難いナー、」
確か此処が「A」の筈なのだが、点いたり消えたりする蛍光灯の所為で、余計に見え難い。
藤森:「どれだー? 目がチカチカスル~!」
大和田:「ちょっと待ってて、私、懐中電灯取って来るねー、確か入り口の所に有ったよー。」
千恵子が本棚の隙間から姿を消して、、不意に、正面の壁に張られた、「ポスター」が目に入る。
防犯ポスターらしいが、何でこんなヒトの来ない処に?…ポスター?
ポスター:「誰も居ないと思っていても、何処かで誰かが見ているよ!」
そして、左斜め上からじっと見詰める「目玉」の絵、…
と、その瞬間! 本棚が! 急に!…動き出した?