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夢幻菌機ウィルシオン  作者: 八房 冥
1章 復讐の始まり
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突然

 コンビニエンスストアを出た浩輝は購入したスポーツドリンクを飲んでから、ランニングを再開する。


(まったく……、何が青春だ。馬鹿馬鹿しい)


 走りながら彼はその様な事を考える。彼は現在、自分か所属する中学校の近くを走っていた。彼の視線の先ではテニス部の活動が行われていた。男女が入り交じり、とても楽しんでいる様に浩輝には思えた。


(結局アイツらはテニスなんかしたい訳じゃ無いんだよな。くたばれば良い)


 そこまで考えてから、彼は自分の幼稚さに苦笑する。彼がしばらく走り続け、中学校から少し離れると、横には海が見える様になった。そして今度は、自分が入学当時所属しようと思った陸上部の生徒の姿が見えた。


(クズ共め……)


 そこにいたのは四人の男子生徒。その内三人は浩輝と同じ二年生で、一人は一年生である。


「日元ぉ、俺らマジ金欠なんだよなぁ。ちょっと貸してくれね?」

「えっと……無理です」

「別に良いじゃねえか。お前んち、金持ちなんだろ? センパイの言うことが聞けねえのか?」

「でも……」

「実は俺達、ファントムのメンバーなんだよなぁ……。逆らったらどうなるか、分かるよな?」

「……」


 大柄な大田亮おおたりょう、小柄な小泉翔こいずみしょう、中くらいの中島恭なかじまきょうが後輩の日元奏太ひもとそうたを脅しているという構図である。奏太は背が低く、体型は太めで、勉強も運動も出来ないと言うことで、しばしばこのような目に合っている。巻き込まれたくない浩輝は、すぐにその場から離れようとする。しかし。


「黒月じゃねえか。何見てんだコラァァァッ!」


(しまった!)


 浩輝を見付けた大田は、彼の元へと近づいて行く。一方で中島と小泉は奏太を囲みながら、浩輝に声をかける。


「黒月ぃ……。正義のヒーロー気取りかぁ?」

「お前なんか、他のファントムのメンバーを呼ぶまでもねえ。俺達だけでブッ潰してやる」


(えっと……、何でこうなってるんだっけ。アイツも俺に、救世主でも見るような目を向けてるし)


 今すぐにでも逃げ出したい浩輝だが、奏太のすがる様な目を見ると、逃げたくなくなる。


(仕方無い……。ハッタリでもかまして何とかやり過ごせるか?)


 浩輝は内心で震えながら、ニヤリと笑い、四人へと近づきながら言う。


「それはどうかな? 偽物」


 それを聞いて、怪訝そうに大田は答える。


「偽物だあ?」

「ああ、俺は本物のファントムの一員だ。組織はお前達みたいな模倣犯の存在を問題視していてな。それを片付けるのが俺の役目だ」

「やべえよ。バレてるぜ大田、どうする?」


 浩輝の言葉を聞いて、中島が驚きながら大田に問い掛ける。しかし大田は動じない。


「どうもこうもえ! 相手は一人だ。三人がかりでやっちまおうぜ」

「言っておくが、こっちが一人だなんて一言も言ってない。仲間は近くに隠れている。数で有利なのは俺達の方だ。それでも構わないのならかかって来い」


(何だよコイツらの目付き……)


 シニカルに笑いながら言う浩輝だが、内心では怯えていた。普段、彼らの様な不良生徒の事を見下し、相手にしていない浩輝は敵を作るということに慣れていなかった。そんな彼を見て、小泉が口を開く。


「ちょっと待て大田、中島。コイツ震えてね?」


 彼が指摘したように、浩輝は少し震えていた。浩輝は出来るだけ震えないように頑張っていたが、無理なものは無理であった。


「マジだコイツ震えてやんの。ダセー」

「結局ハッタリっつーことか。それじゃ、遠慮なくやっちまおうぜ!」


 中島は笑う。そして三人は大田の言葉を合図に、浩輝に向かおうとする。奏太はどうすれば良いのか分からず、困った様な顔をしている。浩輝は体を鍛えているとは言え、殴り合いの喧嘩などしたことが無い。ましてや、相手は三人。勝てる見込みなど無い。


(ここは逃げるしか無いか?)


 そこまで考えた浩輝は急いで逃げようとする。しかしそこで、近くにあったスピーカーから、住民に向けての放送が流れる。


「ただいま、常空市沿岸部において、禁忌獣と思われる巨大な生物の接近が確認されました。住民の皆さまは至急、お近くの避難所まで避難してください。繰り返します。ただいま……」


「禁忌獣だと!? こんなの聞いてねぇぞ!」


 大田は叫び、悪友二人と共に走り出す。


(何故だ? 禁忌獣はチオデ島の近くにしかいないんじゃなかったのか?)


 浩輝が考えていると、近くにいた奏太が慌てて言う。


「何やってるんですか! 僕たちも逃げましょう!!」

「ああ……、そうだな」


 奏太に言われて、浩輝は走って逃げようとする。すると、彼らの近くに自動車が来る。自動車は浩輝の目の前で止まると、運転席の窓が空く。


「二人とも、乗って!」


 声の主は、先程浩輝が行っていたコンビニエンスストアのアルバイト店員、福士玲であった。


「はあ?」

「えっ……?」

「いいから急いで!」


 あまりのタイミングの良さに二人は疑問を持つ。しかし彼女の必死な表情を見て、思わず車の後部座席に乗る。右側の運転席の真後ろの席に浩輝が、その左に奏太が座っている。


「二人とも言いたい事は有るでしょうけど、詳しい話は後でするわ」


 福士はそう告げ、車を発進させる。

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