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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

三題噺 「ココア」「ギフト」「目隠し」

作者: 苺ミルク

 エフ氏は宇宙飛行士だった。

 現在、新しく発見された小惑星、B258の調査の為、アール氏とともに宇宙船に乗っていた。

 まだ宇宙飛行士になりたてのエフ氏は今回が初の任務だったためとても浮かれていた。

 ともに乗船しているアール氏は学生時代のエフ氏の先輩で、それなりに会話も弾み、惑星までの長時間の移動もそれほど苦ではなかった。

「先輩は何回ほどこうした調査を行ったことがあるんですか?」

 ココアを飲みながらエフ氏は尋ねた。

 昔とは違い、最近の宇宙船はほぼオートで運転されるためずっと操縦席に貼りついていなければならないというわけでもなかった。

「これが5回目くらいかな」

 アール氏は答えた。

「俺は調査に向かうよりも調査後の資料を本部で整理する仕事のほうが多かったからな」

「こういう調査って結構きついって聞いているんですがどうなんですか」

「慣れないうちの仕事なんてみんなきついものさ。数回こなせばすぐに慣れて、問題なくなる」

 実際、他の大きな星の調査ならともかく、小惑星の調査はそれほど大変な仕事ではなかった。

 現地から土を採取し、探査用施設を設立する。それだけの仕事だった。

 

 エフ氏たちの宇宙船は無事小惑星に着陸した。

 エフ氏たちが宇宙船を下りるとそこには見渡す限り一面に謎の生物が群がっていた。

 それらはタコのようであったが色は地面と同じような灰色だった。目が頭部のかさの部分に一つだけついており、耳や口は外見からは見当たらなかった。その頭部からは足らしき無数の触手がうねうねと出てきており、何とも

言えない気持ち悪さを醸し出していた。

「先輩、小惑星ってこんなにたくさんの生物がいるんでしたっけ?」

「いや、そんな前例は聞いたことがない」

 両氏の声は震えていた。

『おまえらはなにものだ』

 頭の中に声が響き渡った。

「!?」

 突然のことに驚く二人。しかし声は響き続けた。

『おまえらはなにをしにきた』

「どうやら目の前の生物が話しかけてきているようだな」

 アール氏がエフ氏に囁く。

「どうしますか」

「とりあえず友好的な態度を示したほうがいいだろう」

 そういうとアール氏は一歩前へと踏み出した。

「我々は地球とういう星からやってきました。よろしければこの星の皆様と親交を深めたいと思っております」

『すぐにたちされ』

「どこか代表の方はいらっしゃられないでしょうか、話だけでも聞いていただければと思います」

 アール氏はタコたちの拒絶にもめげずに話も続ける。

『たちされといった』

 そういうとそれらは地面の石を拾うと一斉にアール氏を石でなくり始めた。

「がぁ!!」

 アール氏が倒れてもタコたちは殴るのをやめない。

「何をしてるんだ!」

 エフ氏がアール氏のもとに駆け寄ろうとするとすぐにほかのタコたちがエフ氏を無数の触手で取り押さえた。

「くそ、はなせ!」

 何とか逃れようともがくエフ氏だが一匹にアール氏同様に殴られ、意識を失った。


 気がつくとアール氏は両手足を縛られ、地面に転がされていた。

 周囲はタコたちに囲まれていた。

「先輩はどうした! 俺をどうするつもりだ!」

『おまえといっしょにいたやつならころした』

『おまえにはこれからおまえらがのってきたはこのつかいかたをおしえてもらう』

『うそをいうところす』

 次々と頭の中で声が響いた。

「お前らみたいな下等生物に教えるか」

 エフ氏がそう吐き捨てた瞬間、エフ氏の右足に岩が落とされた。

「ぐゎっ!!」

 あまりの痛さに声を上げる。

『くちさえきければこちらとしてはもんだいないのだ』

『くるしいおもいをしないうちにさっさとしゃべれ』

「くたばれ」

 今度は左足に岩が落とされる。

「ぐっ!」

 何とかうめき声を上げるのをこらえようとする。

『ごうじょうなやつだ』

 手や足を石で、ミンチになるまですりつぶす。拷問はエフ氏が「話すからもうやめてくれ」と言うまで続けられた。


 暗がりの中でエフ氏は目隠しをされ、頭に多数の電極を付けられて座っていた。

 エフ氏の周りにはたくさんの高価そうな装置が置かれ、数人の白衣を着た男たちが立っていた。

「こいつは不合格だな」

 一人の男が言う。

「不合格通知とともにギフトカードでもつけて送り返せ」

 電極は取り外されたエフ氏は目隠しをされたまま連れ出されていった。

「筆記、実技試験で合格しても最終試験でこうも不合格になるものが多いのは困ったことだ」

 男はひとり呟いた。

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