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triangle  作者: 田中タロウ
42/95

第3部 第6話

「いやー、人徳だよな。神様はちゃんと見てるんだな」

「・・・」


和歌さんが「お、落ち着いて!」と私を止めてくれなければ、

私はそこに転がってる石で伴野聖の頭を殴っていただろう。


伴野聖は左頬を摩った。


「ちょっと痛かったけどな。これであの女と切れれるんだから、安いもんだよ」



信じられないことに。

伴野聖はさっきまでイチャイチャしていた女と別れたいと思っていたようなのだ。

そこに私というエセ彼女が現れ、彼女との仲をぶち壊してくれた。


伴野聖としては万々歳という訳だ。


「あんた、本当に人間!?」


私は、彼女を追うどころか笑顔で両手を振りかねない伴野聖の胸倉を両手で掴んだ。

もっとも伴野聖の方がずっと背が高いから、

下からグイッと服を掴んだだけだけど。


「マユミチャンには、いっつも助けてもらってばかりだな。アリガトウ」

「!!!」


ああ・・・

こいつ、殺してもいいですか?


だけど、幸い(?)和歌さんが私と伴野聖の間に割って入った。


「マユミちゃん!・・・あの、どなたか存じ上げませんけど、

先ほどはマユミちゃんが失礼なことをして申し訳ありませんでした」


和歌さんが伴野聖の方へ向かって頭を下げる。


そんなことする必要ないですって!


が、和歌さんも馬鹿じゃない。

私と伴野聖の間に何かあったのだと察したのか、

キリッとした視線を伴野聖に向けた。


「でも、詳しい事情は知りませんが、女性に対してあんなことばかりしていると、

いつか罰が当たりますよ」


伴野聖が鼻を鳴らす。


「美人に睨まれるってのも悪くないねえ。で、罰ってどんな罰だよ?

歩いてたら雷に打たれるとか?」

「まさか」

「だよな」

「マユミちゃんに訴えられる、とかです」

「・・・」

「私、弁護士を目指してるんです。私の彼氏のお父様も弁護士です」

「・・・」

「近頃はプライバシー保護がしっかりしてますからね。

マユミちゃんは未成年ですし、名前を伏せたままあなたを訴えることもできます」

「・・・」

「さ、マユミちゃん。行きましょう」


私の手を取って歩き出そうとする和歌さんの肩を、

伴野聖がガシッと掴んだ・・・







「へー。で、あんたの彼氏が今、あのレストランで女子高生と飯食ってる訳か」

「はい」


レストランが見えるベンチに腰を下ろし、

私と和歌さんはコーヒーとサンドイッチを食べた。

その他にも、おにぎりにお菓子、ホットドッグにポップコーンにジュース・・・

様々な物がベンチに置かれている。

伴野聖が自ら進んで買った品々だ。


これくらいじゃ絶対許さないんだから!

ふんっ!


「怒ってるくせによく食うな、お前」

「ほっといてよ!てゆーか、あんたもう帰っていいわよ!目障り!」

「酷いなあ。一時は愛し合った仲なのに」


コーヒーの缶を持ち上げた私の手を、

和歌さんが素早く止める。


「伴野さん、ごちそうさまでした。私達、もう帰ります」

「あれ?彼氏は置いていっていい訳?」

「はい・・・私にはどうしようもありませんし」


向かいのベンチに座っている伴野聖が興味なさそうに「ふーん」と言う。


「ちょっと、あんた。少しは『かわいそうに』とか思わないわけ?」

「俺がそんなこと思ったところで、どうにもなんねーだろ」


そうだけど。


「・・・いいこと思いついたわ」

「お前がいいこと思いつくなよ」

「あんた役者でしょ?協力しなさいよ」


伴野聖が面倒くさそうに眉を寄せる。


「なんだよ、協力って」

「和歌さんの彼氏と女子高生の仲をぶち壊して」

「お嬢様が物騒なこと言ってんじゃねーよ。やるならさっきみたいに自分でやれ」

「私達が尾行してることは、和歌さんの彼氏は知らないの。

後から私が和歌さんの知り合いだって和歌さんの彼氏にバレたら、

尾行してたこともバレちゃうでしょ」

「だからってなんで俺が」


私は和歌さんの肩を抱いた。


「和歌さんのこと、ちゃんと紹介してなかったわね。

この人は、私のお姉ちゃんの婚約者のお姉さん。月島和歌さんよ」

「・・・月島?」

「そう。月島」

「・・・」


訳がわからない様子の和歌さんはさておき、

私と伴野聖の間で意味ありげな視線が行きかう。


伴野聖が諦めたようにため息をついた。


「わかったよ」

「そうこなくっちゃ!」

「ちょっと、マユミちゃん!伴野さんも・・・いいですよ、そんなこと。

あの女子高生と関わらない方が伴野さんの身の為です」


こんな奴の身の心配をするのは和歌さんくらいだ。

まあそれも、伴野聖が何をやったか知らないからだろうけど。


「大丈夫ですよ、和歌さん。こいつ、女に関してだけは百戦錬磨みたいだから」

「だけ、は余計だ。その代わり、俺流の遣り方でやらせてもらうぞ」

「?」


私と和歌さんは顔を見合わせたが、

伴野聖はニヤニヤしながら腕を組み、何やら1人で考え始めた。





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