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迷宮の試練

柔らかな朝の光が森を照らす中、リアナと私は迷宮の入口に立っていた。蔦に覆われた石のアーチの向こうには、先が見えない暗闇が広がっている。風に揺れる葉のざわめきが、まるで迷宮自身が呼吸しているかのように感じられた。


「……行くのね。」リアナの声は少し震えていた。

「うん、でも……怖くはないよ。」私は自分に言い聞かせるように答えた。


迷宮の中は、想像以上に静かだった。足音は自分の鼓動に飲まれるほどで、かすかな滴の音や、遠くで何かが擦れるような音が、不意に心を揺さぶる。私は手に握った小さなランタンを少し高く掲げ、光の輪で周囲を探った。石壁に映る影は、まるで生き物のように揺れている。


迷宮の入り口を抜けると、最初の試練はすぐに現れた。床に散らばる鏡の破片。普通なら単なる障害物だろう。しかし、鏡のひび割れた表面に映るのは、私自身の不安や迷いだった。「これが……迷宮の力?」私は息を呑んだ。


リアナは少し後ろに下がり、私の肩に手を置いた。「大丈夫。私たち、ここで何があっても一緒よ。」その言葉に、微かに胸が温かくなる。彼女の存在が、迷宮の不安をほんの少しだけ和らげた。


最初の通路を進むと、次第に迷宮は変化していった。壁の色が徐々に深い青に変わり、空気は冷たく湿ったものになった。呼吸が白く染まるほどで、足元の水たまりが光を反射して小さな星のように輝いていた。


「見て……」リアナが指を差す。水面に映る自分たちの姿が、微妙に歪んでいる。私の目は少し大きく、肩は少し細く、表情はどこか悲しげだ。迷宮は、私たちの心の奥底を映し出しているらしい。


「この迷宮……ただの試練じゃない。私たちの心を試しているんだ。」私は囁くように言った。リアナはうなずき、二人で息を合わせて一歩ずつ進む。


しばらく進むと、迷宮の中に巨大な石の扉が現れた。その前に立つと、扉に刻まれた模様が徐々に光を帯び、私たちの感情に反応して揺れ動く。扉を開くためには、恐怖や不安ではなく、互いの信頼と勇気を示さなければならないらしい。


「やってみる?」リアナの手が私の手に触れた。その温もりが、私に小さな勇気を与える。深呼吸をして、二人で声をそろえた。「私たちは……一緒。」


扉は静かに軋みを上げて開き、中には光の回廊が広がっていた。白い光に包まれると、不思議な安堵感が体を満たす。迷宮の最初の試練は、こうして二人の心の絆を確かめるためのものだったのだと、自然と理解できた。


回廊の先に待つのは、さらに深く、複雑な迷宮だった。私たちは恐れながらも、互いの手を握りしめ、次の試練へと歩みを進めた。その背後で、迷宮の影は静かに揺れ、私たちの決意をじっと見守っているかのようだった。

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