終末世界で哭いた烏たち
初投稿のテストを兼ねた作品です。ちゃんとした作品が書けていれば良いのですが。
突然だが、この惑星はもう少しで終末を迎える。なのでこうして遺書ならぬ遺音声をここに遺しても無駄だとは思うが、やらぬ後悔よりやる後悔。とりあえず撮っておくことにする。
えー......記録日時は、西暦3207年、9月18日、15時24分。記録者は、白縫 一花。人口僅か23人、通称荒れた星。惑星B-3400、アーキテクトの住民だ。この惑星はもう少しで隕石が墜ちてくるらしい。......らしい、というのは私自身が観測したわけではないからだ。ニュースで言っていたから、程度の情報でしかない。
メディアの言っていることなど眉唾物だ、と思っていたこの惑星の住民たちだが、大きすぎるニュースに混乱した。安全上の理由から惑星間飛行船を運休するとまで言われたのだ、無理もない。脱出用ポッド__といってもただの小型惑星間飛行船だが__を取り合い、最終的に飛べたのは5隻中3隻。5隻でも全人口には足りないというのに、3隻となると全人口の6割乗れていれば良い方だ。数日経つと秩序も崩れ、インターネットすらも破壊されて死んでいる。私が壊れたデジタルカメラという時代の遺物を使ってこれを撮っている理由がそれだ。
なぜデジタルカメラを持っているのか。それは、私が学者だからだ。二千年初頭の文化を専門に、家に籠ってずっと研究している。これもただの研究道具の一つでしかなかったのだが、役立つ日が来るとは。......残念ながら、レンズは割れてしまって映像は撮れないのだが。
遂に充電用の電気すら確保できなくなってきている。出発は早い方が良いだろう。
__少々お喋りが過ぎたようだ。隕石が堕ちるまであと約20分。私はこの惑星の様子を記録しようと思う。
市場に到着した。いや、元市場と言うべきか。今では何かを売る人はおらず、置いてあるはずの食料は根こそぎ空になっている。荒れた星の通称通りに周囲には荒れ地と砂漠しかなく、砂埃が絶えず舞っている。そのお陰で、防護眼鏡とマスクを装備しなければ出歩くことも不可能だ。
だが、こうして砂を掘ってみると__やっぱり、砂に埋まって見逃された食料が顔を出すこともある。死体の側には大抵、何かしらが埋まっているのだ。水があれば嬉しかったが、残念ながらなさそうだ。
空き地に到着した。ここには元々脱出用ポッドがあったと報じられていたはずだ。今では壊された脱出用ポッドのガラクタすらも落ちていない、まっさらの荒れ地だ。誰かが脱出用ポッドを組み立てようとしたのだろうが、どこの馬鹿なのかはわからない。惑星間飛行船など素人の手で直せる訳がない。
市街地に到着した。ここには烏のような原生生物と骨しかないようだ。彼らの主な食料のゴミすら落ちていないので、飢えて死んだ烏も多く、その烏を他の烏が喰い、残るのは骨のみ。食物に感謝して残り物を出さないという、人間も見習わねばならないことの一つだろう。
妙にしんとした市街地に違和感が募る。そういえば、ここに来るまでに生きた人間を見ていない。闘争の中で全員死んでしまったというのか?あの馬鹿なニュースが出る前には女子供は勿論、妊婦や赤ん坊までいたはずだ。その守られるべき人間までもが、全員?
......小さく人の声が聞こえた。どうせ後数分で終末を迎えるので、その方向に進むことにする。
全て合点がいった。子供たちが、泣いていた。私は背後から刺された。そうだ、ニュースなんて眉唾物だったのだ。惑星間飛行船が止まり、食料が無くなったこの惑星の人々は、烏と同じ手段のようで、実に賢い手段をとった。これは食料となる生物を誘い出すための罠だったのだ。惑星の終末などありはしなかった。小型惑星間飛行船などありはしなかった。この秩序の崩壊した地獄の終末など、ありはしなかった!
これは、私の記録だ。兎に角不運で阿呆な、私の遺物だ。
この惑星と哭く生物たちに、救いがもたらされんことを。
最後まで読んでくださりありがとうございました!