月の子守唄
昔々、森の奥に、小さな小さな「ねむり屋さん」がありました。
そこでは、眠れない動物たちのために、静かで優しい「子守唄」を売っていたのです。
お店を営んでいるのは、年老いたフクロウのミミさん。
夜になると、ゆったりとした声で、こう歌います。
「おやすみ 星のかけらたち
風にのって ゆらり ほわり
夢の国まで あとすこし」
その声を聞くと、リスもウサギもクマも、まぶたがふわりと重くなって、心の奥まで温かくなるのでした。
ある夜、小さな人間の女の子が森に迷い込み、「ねむり屋さん」の扉をたたきました。
「こわい夢を見そうで、眠れないの」
ミミさんはにっこり笑って、あたたかいハーブティーを差し出しました。
そして、女の子の膝に小さな毛布をかけて、歌いました。
「おやすみ 今日の涙たち
明日はもう 違う空
あなたの心に 光が灯る」
女の子はすぐに目を閉じて、静かに寝息を立てはじめました。
そして夢の中で、森の動物たちと手をつないで、星の小道を歩いていったのです。
それ以来、女の子は毎晩、ミミさんの声を思い出してから眠るようになりました。
こわい夢も、不安な気持ちも、そっと風に流して。






