「影」
「僕だすが、さっきトラブルが起きただすよ。
警察官に逮捕されそうになっただす。
だすから、今日は中止だすよ。
わかっただすなあ」
「ずるいわよ!
嘘ついたの?
3時間って約束したでしょう?」
「だすから、トラブルだすよ。
僕が逮捕されてもいいんだすか」
「うーん。それはイヤよー」
「いい子だから、待つだすよ。
顔がキレイでも性格が悪ければ、
意味ないだすよ」
「うーん。
じゃあ、あたし、今日帰る」
「それがいいだすよ」
「でも、明日は絶対よ!」
「うーん、がんばるだすが、
警察次第だすなあ」
「お願いね」
かおむは携帯電話を切ると、
例の病院に向かった。
かおむはさっきの警官がいないか、
こそこそ周りを見ながら、
果物屋でこっそりフルーツの盛り合わせを買うと、
また、例の病院に向かった。
「あのーだすなあ。
もとえさんの病室はどこだすかなあ」
かおむはフルーツの盛り合わせの包みを見せながら
病院の受付で訊く。
「はあ?もとえ様?上のお名前は?」
「ああ?
うーん?
もとえさんしかわからないだすよ?」
「あの上のお名前がわかりませんとねえ」
「うーん」
かおむは考え込んだ。
「もとえさんという方の字もわかりませんか?」
「うーん。
僕としたことがだすなあ?」
かおむが受付の女性と話しをしていると、
幸か不幸か、
かおむの後から、
もとえが嬉しそうに声をかけた。
「わー!だすごさんですねえ!」
「おおー、このおじょうさんだす」
「ああ、ハナヒサさんですか...」
しかし、もとえとかおむの表情とは、
対照的に、何故か、受付の女性の顔は明るくはなかった。