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「祈りと究極の美」
「カミサン、カミサン、カミサン!
お願いです。
どうかお許しください」
少女は暗闇で祈り続けたが、
真っ暗なままだった。
「カミサン、カミサン、カミサン。
僕も殺してくれだす。
何故、あのとき助けたのだすか?」
しかし、
そう思っても声にはならなかった。
少女は少女で、
男は男で祈り続けた。
しかし、
変わることはなかった。
少女も男も絶望し、
死にたいと思ったが、
死ぬことができなかった。
究極の美しさも、
誰にも、
見えなければ意味はない。
究極の美しさは、
おのれが感じないと意味がない。
そして、
究極の美しさは、
人間に欲望がある限り、それを得、
かつ、自覚することはできないであろう。
それ故、
人間に究極の美しさを与えることは不可能なのだ。
だとすれば...