「カミサンの声」
かおむは祈り続けた。
そして、しばらくすると、
また、目眩がした。
さらに、
今度は声が聞こえた。
「これで本当に最後だぞ!
本当に前のおまえの姿でよいんだな!」
と。
「カミサンだすか?」
かおむはそう声をあげたかったが、
もちろん声は出なかった。
「こちらの質問に答えるのだ!
これで本当に本当の最後だぞ!
おまえの昔の姿に戻してよいんだな!」
かおむにはまたそう声が聞こえた。
耳もないのに。
かおむは考えた。
カミサンは自分の心が読めると。
そして、
悩んでいた。
どうしようかと。
「もう一度だけ訊いてやる!
本当に前のおまえの姿でよいんだな!」
かおむにはそう聞こえた。
かおむは考えた。
カミサンは今、
「もう一度だけ訊いてやる」
と言った。
それは、前の姿に戻ることを躊躇している
自分に決断を促すために言った言葉なのか、
それとも、
逆なのか?
かおむはどちらにしても
怖い結果になるような気がして悩んでいた。
「さあ、結論が出たか?
前のおまえの姿に戻していいのか?
それともこのままでいるか?」
かおむが悩んでいると、
また、
そう聞こえた。
その声がカミサンなら、
カミサンはどうしたいのだろう?
かおむはまた考えた。
カミサンにお任せしますと答えてみよう
とも思ったが、
それもいけない気がしていたかおむだった。