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「大目玉」
かおむは目覚めた。
そこは綺麗な水中だったが、
大きな目玉を見てかおむは驚いた。
かおむは声を上げようとしたが、
今度は口がないようだった。
鼻で息をしようとしたが、
鼻もつかえなかった。
どうやら、
かおむは目しか使えないようだった。
かおむには意識があった。
わかるのは水中にいることと、
自分にはどうやら目しかないということだった。
そして、すぐ前には大きな目玉が見えるだけだった。
かおむは考えた。
そして。
自分に今あるのは、
目と耳だけか?
それとも、
目だけなのかと。
静かだった。
何の音もしなかった。
ただ、
水中の向こうに大きな目玉が見えるだけだった。
かおむは考えた。
目玉!
目玉親父!
いや、
目玉親父には身体がある。
やはり、ただの目玉。
そして、
かおむが辿り着いた結論は、
自分が見た大きな目玉は自分ではないか
ということだった。