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「何ものか」
かおむは、
手もない、
足もない、
首もない、
歯もない、
舌もない、
ことに気づくと、
ようやく、
自分が何ものかを考え始めた。
目はある。
耳もある。
鼻もある。
口もある。
考える脳もある。
しかし、
手もない、
足もない、
首もない、
歯もない、
舌もない。
かおむは考えた。
また、
かおむは考えに考えた。
手もない、
足もない、
首もない、
歯もない、
舌もない。
ダルマ?
違う。声は出る。
そう考えたとき、
急にかおむの視界が暗くなった。
「もう悪いことはしないだすよ!
元に戻してくれだす。
真っ暗だすよ!
どうしただすかあ?
助けてくれだすよ!
僕は真っ暗は苦手なんだすよ!」
かおむは必死に叫んだが、
その声は彼らには届かなかった。