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「化け物の香り」
「助けてくれだすよ!
もう悪いことはしないだすよ」
かおむはその手に向かって、
大声を上げた。
しかし、
その手の主の耳には届かなかったようだった。
かおむをつかんだその手は意外にも柔らかく、
そして、いい香りがした。
「あなた、凄くきれいよ」
しかし、かおむには
その声は化け物のわめき声のように聞こえた。
かおむは思わず、そのわめき声に驚いて、
耳を塞ごうとしたが、
そのとき初めて手がなくなっていたことに気づいた。
「本当だ。綺麗だね。
でも、君ほどではないよ」
「またあ!口がお上手!」
後ろからまた化け物がやってきて、
変な奇声をあげたので、
思わずもがいて逃げようとしたとき、
かおむは足もないことに気づいた。