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「かおむの怖れと覚悟」
かおむは、
内心は、
正直に
「おまえは醜い」と、
目の前の生き物に言ってやりたかった。
しかし、
そう言った後、
目の前の生き物が逆上し、
自分に襲いかかってくるかもしれないので、
それが恐かった。
そして、目の前の生き物に、
襲われて殺されるなら、
それはそれで覚悟はできていた。
しかし、
かおむは違うことを怖れていた。
かおむが怖れていたのは、
かおむが目の前の生き物に
吸収されることだった。
目の前の生き物は、
また、
「かおくーん?
かおちゃーん。
あたしキレイ?
早く答えて、
はやくー」
と同じことを言った。
かおむは
前にいる生き物のおうむのように何度も繰り返される言葉に、
もう限界を超えていた。
かおむは、覚悟を決めて言った。
「残念だすが、キレイじゃないだす。
すごく醜いだすよ」と。