「手鏡と答え」
しかし、
目の前の生き物はまったく変わりなかった。
相変わらず、
「かおくーん?
かおちゃーん。
あたしキレイ?
早く答えて、
はやくー」
と、
かおむをせかすように、
同じ言葉を吐いているだけだった。
この手鏡を覗くしか、
この状況を変える方法はないと考え、
かおむは決意した。
かおむはおそるおそる手鏡を裏返した。
しかし、
予想に反し、
そこには昔のままの自分が写っているだけだった。
だが、
目の前の生き物は、
「かおくーん?
かおちゃーん。
あたしキレイ?
早く答えて、
はやくー」
とまた同じことを言った。
かおむは考えた。
きれいだと言ってあげれば
丸くおさまるのかもしれないと。
しかし、そういうことは嘘だった。
かおむは悩んだ。
おそらく、
かおむが答えるべき、
正解はひとつしかないないのだ。
そう、
かおむが答えるべき正解は、
「おまえは醜い」
だった。
そして、その言葉をかおむは吐いた瞬間、
目の前の生き物を自分の姿を確認しようと
目のない姿で動き回るか、
かおむを罵るかのどちらかだと。
かおむは予想した。
逆にかおむが今までのように、
「キレイだすよ」と
言ったら、
目の前の生き物は
「もっとキレイになりたい」
と言うの決まっていることもかおむはわかっていた。
しかし、
かおむにわからなかったのは、
かおむが、
目の前の生き物に、
「おまえは醜い」と言って、
目の前の生き物が行動に移った後のことだった。