「繰り返される、あたしキレイ」
かおむの思惑に反し、
自ら手で触った感じでは、
まったく身体に異常はなかった。
しかし、
かおむはまだ怖れていた。
手の感触がまやかしではないかと。
目の前では
見たこともない生き物が、
相変わらず、
「かおくーん?
かおちゃーん。
あたしキレイ?」と、
おうむのようにかおむに訊いていた。
そして、
その生き物に渡された鏡にも、
かおむは何か違和感のようなものを感じていた。
が、
かおむが鏡を見るのを待っているかのように、
目の前の生き物は何度も同じ言葉を繰り返していた。
かおむの目の前では
見たこともない生き物が、
相変わらず、
「かおくーん?
かおちゃーん。
あたしキレイ?」と、
おうむのように同じ言葉を繰り返していた。
恐らく、
目の前の生き物は鏡を覗くまで
ずっと同じ言葉を繰り返すだろうと、
かおむは思っていたが、
かおむには決心がつかなかった。
何故なら、その生き物は目が見えないのだから、
かおむがどうやって鏡を覗いたか
わかるはずがないと思ったからである。
そして、
もし、それにもかかわらず、
目の前の生き物がかおむが鏡を覗いたことに気づくなら、
視覚以外の方法によるしかないと、
かおむは考えていたからだった。
視覚以外の方法。
鏡。
かおむは考えた。
味覚?
聴覚?
触覚?
嗅覚?
嗅覚!
かおむは目の前の生き物を見て、
それに違いないと確信した。