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「カミサンさんへの祈り」
かおむは後に倒れ込んだ。
「こら、婆さん、
そんな皺くちゃな顔で、
変な色目でも使ったんだろう!」
「本当、
いい歳して男には目がないんだから!」
「ほら、戻りなって」
村人にそう言われて、
老婆はかおむの部屋からゆっくりと出ていった。
「かおくーん!」
かおむは暗闇の中、
誰かの声を聞いた。
「ダメ!目を開けちゃ!
いーい、あのときに戻るの!
邪心を捨てて」
「おー...」
「カミサン、カミサン、カミサン!」
「あー...」
「さあ、復唱して!」
かおむには誰かがどこかで聞き覚えのある声で
そう囁くように話すのが確かにきこえた。
かおむはまるで催眠術にでもかかったように、
女の声を聞いたとたん、
「カミサン、カミサン、カミサン」
と復唱し始め、
次第に声を大きくしていった。
「カミサン、カミサン、カミサン」
「カミサン、カミサン、カミサン」
「カミサン、カミサン、カミサン」