「救出」
「彼女は助かったのだすか?」
「うん?
おー、意識が戻ったぞ」
かおむは、
知らない男たちの顔を見た。
かおむは周りを見まわした。
そして、
「彼女は助かったのだすか?」
また、訊いてみた。
「彼女と一緒にあの辺を歩いていたのかい?」
一人の男がそう訊いた。
かおむは少し考えてから、
「あのだすなー、他には誰もいなかっただすか?」と、
男の答えには答えず、また、訊いた。
すると、
別の男が、
「あんただけだよ。
穴に落ちていたのは。
運がいいな。
普通なら、
とっくに死んでいるよ」
そう言った。
「僕が死んでいただすかあ」
「ああ、
一月以上は穴の中にいたはずだぞ。
覚えてないのか」
もう一人の男が、
不思議そうな顔で言う。
「おー、そんなにだすかあ」
「着ていた服だって、あんただって、
泥だらけだったからな。
てっきり死体だと思ったよ」
もう一人の男が言う。
「でも、
どこも怪我していないなんて、奇跡だな。
あんたは余程、
日頃の行いが良かったんだろうな」
別の男が笑う。
「日頃の行いだすか...」
かおむはあのときのことを思い返した。