肝試しー関雄大
「あれー?おっかしーなー」
18時が過ぎたころ、雄大たちは高校の最寄りの駅の前にいた。声をかけたのは30人ほどであり、その中の何人かには同じ高校の同学年を誘うようにたのんでおいたのだが、実際に来ているのは15人もいない。
「ねぇゆーだい。もうそろそろ行く?」
同じクラスの長谷川那奈がそう言ってきた。
「あー、、。んー、、」
雄大が迷っていると、近くにいた勝吾が呆れたように言った。
「19時スタートなのに、お前途中から誘うやつらに19時に集合って言ってたぞ。そりゃまだ来ないだろ」
「え?ガチで?言ってよそれ、、」
「ゆーだい、あんたさぁ、、」
那奈の近くにいた浦田結花がため息交じりに首を振った。
「うわ~。やっちゃったわ。まじごめん」
「とりま声かけるね~」
「助かるわ。じゃ俺もー」
「ゆーだいは絶対やれや」
勝吾のどつきに近くにいた人がくすくす笑う。雄大はスマホを取り出して周りを一通り見た。それぞれの集団で固まり、あちこちから喋り声や笑い声が聞こえてくる。
「あれ、あの人いねーじゃん」
雄大はふと、ここ数日で共通点を見つけてテンションが上がった人がいないことに気が付いた。
俺、あの人にも19時って伝えちゃってたっけか?あれ、そーいえば行けたら行くって言ってたな。絶対来ないやつっぽいなー、、、。まいーや。かけるだけかけてみよっと。
そう思いながら電話をかけた。昼に電話をかけた時よりも早く繋がる。
「おーっす。成宮さん?」
19時が近づいた頃、やっと誘っていた人が大体来た。数は30人を超えているだろう。急にざわざわし始めたので、静かにするように手を上げた。
「はーい注目!みんな、今日は来てくれてありがとー!来てくれてマジで嬉しいっす」
ざわつきが止んで、雄大の声がよく通る。
「そんで、今から森の方行くんだけど、普通に住宅街通ってくから静かになー?」
「おぃーっす」
「りょうかーい」
「おーし。じゃ行こーぜ」
雄大はこの集まりの主催なので、一通り声掛けをしてから森の入り口に向かう。この森の中を少し進むと祠があり、そこを抜けると小屋がぽつんと立っている。何のためにそこにあるのかは分からないが、昼でも森の中で暗く、不気味な雰囲気を醸し出している。今回考えた肝試しの内容は、4、5人で森に入って祠を通り過ぎ、その小屋の前で写真を撮ってくる、というものである。どうしても怖かったら手前の祠で写真を撮り帰ってくるのでも良い、とした。
雄大は歩きながらその趣旨を、一緒に歩いていた那奈と結花に話していた。
「えーっと計算したら、全体で38人いるらしいわ。だからー、、4人7組と5人2組かな」
「え、5人の方少なくするんだ」
「当たり前やん。肝試しだからな。人数は少ない方が絶対良い」
「分け方は?好きな人と組むとか?」
「いやいやいや。せっかくこんなに人数いるならくじ引きにしようぜ」
雄大は我ながらいい考えだと思ったが、那奈たちはどこか不満そうだ。
「ななビビりだからさ、ゆーだい一緒に行ってあげてよ。主催者一緒なら怖くないっしょ」
「ちょ、は?ゆーだいの方がビビりそうじゃね?」
「うーわ。ヤバお前。ひとりで行けお前マジで」
雄大はけたけた笑いながら冗談を飛ばし、那奈は
「聞いた?今の。最悪なんですけど」
と言いながら雄大のことを叩いてくる。
雄大は那奈に限らず、こんなやり取りが大好きだった。
森に入る前には開けた場所があり、雄大はそこで説明とくじ引きをすることにした。説明はメッセージで送り、雄大が回ってくじを引いてもらうことにした。
「よ!」
「お、にーなじゃん。間に合ったんだ」
「バイト終わって速攻来たからね。マジで疲れた!途中で寝るかも」
「えぐ。肝試し優勝じゃん」
にいなにくじを引いてもらい、隣にいたキャップを深くかぶっている女子にスマホを見せる。
「あ、ありがとう。関くん」
そう言って顔を上げた彼女は、雄大がここ数日で仲良くなった人だった。
「成宮さんか!マジで気付かんかったわ」
少し声が大きかったか、そらはびっくりして身を縮めた。
「あ、ごめんごめん。てか絶対来ないと思ってたから、電話で聞いたとき来るって言っててよかった~ってなったわ」
「あ、うん。ちょっと色々あって、、」
「そらちゃんうちのバ先の最寄り駅にいてさ、会ったときちょうどゆーだいと電話してたんだよね。だから無理やり連れてきた!」
「マジナイスにーな」
「へーい」
にいなはどや顔で雄大とグータッチを交わした。
「仲いいね」
近くにいたオレンジ色のホッケーシャツを着ている女子がそう言ってきた。
「一応中学一緒なんだよねーこいつ」
にいなが呆れたように話す。雄大とにいなは中学2年の頃に同じクラスになり、性格が合ったのかすぐに仲良くなった。雄大はサッカー部、にいなはソフトテニス部だったので、部活の時に話すことも頻繁にあった。高校受験の時、にいなは公立に落ちて、雄大はサッカーが強い学校に入りたいと思って、同じ私立高校に入ることになった。にいなはそれ以来あまり勉強にモチベーションがないのか、バイトに明け暮れているように感じる。
「あ、できました。これ」
「ん、ありがと成宮さん」
そうこうしているうちにそらがくじを引き、スマホを雄大に返した。
「お、5番。一緒やんオレら」
「そうなんだ。よろしくね」
「うん。よろしく」
雄大は優しく話しているつもりなのだが、彼女の対応を見ていると、どうやら雄大に怯えているようだ。
やっぱあの噂っぽさ全っ然ねーな。
雄大はそう思いながら、にいなとそらを含めた5人にくじを引いてもらいその場を離れた。
「ゆーだーい」
雄大は奥の方で集まっていたサッカー部4人のもとへ行った。原田康太、高島勇輝、根石北斗、牧瀬宇一の4人だ。
「おいーっす」
「お前さっき話してた帽子の子だれ?」
「可愛くなかった?あんな子いたっけ?」
勇輝と宇一が雄大に迫った。
「え?ああ、成宮さんだよ」
「は?はるみやさん?誰やねん」
勇輝が首をかしげる。
「『妖精』じゃね?成宮そらでしょ本名」
彼女と同じクラスの康太が言った。
「えぇー!マジで?!髪の色だけで認識してたわ」
「それな」
「お前今可愛いって言ってたのやば。噂の男子みたいに遊ばれるって」
「うわ終わったじゃん俺」
宇一が頭を抱えているのを見てほか3人は笑っている。雄大はそれを聞きながら彼らにくじを引かせていった。
「お前よく話せるな。ゆーだいって誰にでもあんなだけど、さすがにすげぇわ」
北斗が驚きながらそう言ってきた。
「いやなんか噂があるにしてはそんな感じしないっつーか。むしろ真逆の性格じゃね?って感じ」
「ばーか。猫被ってんだろそれ」
「お前狙われてんぞ」
やばいやばいと口々に好き勝手言ってくる。
「葬式は俺らでやるからな。安心して眠れよ」
「何で死んでんの俺」
雄大は4人にくじを引かせるとその場から離れた。別の集団にくじを引いてもらっている間、雄大はにいな達の集団を横目に見つけた。そらが目に留まる。ふと、宇一が可愛いいと言っていたことを思い出し、雄大は改めて顔を見てみた。確かに顔立ちは整っていて、目がきりっとしていて印象的だ。背も女子の中では高い方で、かつ小顔なのでスタイルも良い。
宇一が好きそうな感じだわ。確かに。
雄大はそう思いながら、別の集団のもとへと移動した。
「あ、ゆーだい来た」
「おーっす」
今度は1組女子のところだ。那奈と結花、葉山桃がいる。今日は田辺伊代も誘ったのだが、彼氏と別の用事があったらしく来れなかった。
「ももじゃん。いつ来たの?」
「マジで今さっき!ぎりっぎりだった」
「え、すごいね。てかここまで一人で来たん?だいぶ怖かったでしょ」
「マジで怖かった!から!二人と電話つなげて来た」
雄大は話しながら那奈、結花とくじを引かせていく。
「5ばーん」
結花がそう言って見せてきた。
「オレと一緒~」
「えー。ゆーだいと一緒やだぁ」
「なんでやねんマジで」
「チェンジ。なな、チェンジで」
「え?」
「ほら嫌がってるじゃん。もう引いちゃったから変えれませ~ん残念」
「うざこいつー」
「任せろなな。こいつ俺が責任もってビビらせてくるから」
「じゃあ頼んだわ~」
「マジで任せろって」
「逆にゆーだいがビビってるところ激写してやるし」
「やってみな。ビビんねぇから」
そうして全員にくじを引かせ、5分おきに1組ずつ出発させていく。小屋の前で写真を撮り終わった組は別ルートから別の広場へ行くので、ここへは誰も戻ってこない。どんどん人がいなくなってくる。雄大は主催者なので、くじ自体は5番だが最後に出発する予定だ。
「暗過ぎね?」
「えちょっとマジでヤバい!」
あちこちあら怖がる声が聞こえてくる中、雄大はくじの番号が5番だった人を集めた。
「5番の人~?」
「ほーい」
「あ、はい、、」
「ゆーだーい!」
そうして集まったのは、そら、結花、そして宇一だった。
「は?なんでいるのお前」
雄大は自然に歩いてきた宇一にびっくりした。
「え?あぁ。もとやんが5番だったんだけど、彼女と回りたいからっつって俺と交換しに来た」
もとやんとは、同じクラスの渕上基弥のことである。
なんだよあいつ彼女いんのか。
雄大は若干の驚きとともに、宇一を見た。言っていることは本当そうだが、くじを引かせに行った時の発言が妙に引っかかる。
宇一のやつ、成宮さんのことかわいいって言ってたからな。まさかとは思うけど、、。
雄大が少し怪しんでいると、スマホのタイマーが鳴った。最後の組、つまり雄大たちの出発の合図だ。雄大は懐中電灯を持って森の入り口へと皆を誘導していく。大きな木が何本も生い茂り、暗闇に音が吸い込まれて消えていく、見れば見るほど不気味な森である。
雄大、そら、結花、宇一。4人は森の入り口に立った。恐怖はそれなりに感じるが、表情に出るほどではない。雄大は先陣を切り、3人に声をかける。
「よし。そんじゃ行きましょーか」




