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海とミサンガ  作者: 深田おざさ
73/89

夏休みー成宮そら(7)

「言い出しっぺさんから行こうよ」

 るるは体勢を崩し、ニヤニヤしながら言った。思ったよりも乗り気だったのが意外で、にいなとそらは思わずるるを二度見した。

「ん、なに」

「いや、るるってこういう話嫌いなのかと思ってた」

「んーん。逆に結構皆の気になるよ。ほら、昨日だってそうだったでしょ?」

「あ、確かに、、」

 るるは昨日、ひばりとるのが付き合っているということを聞いてひばりを質問攻めしていた。

「ってことでにいな、お先にどうぞ」

「いやー、切り出しといてなんなんだけどね、うちそういうのほんとにないんだよね」

「え、嘘でしょ。じゃあ、過去付き合ってた人とか」

「だーれもいないんだよね〜。誰かのとこ好きになったこと一回もなくて、、」

「うーん、それはそれで恋の悩みだね」

 るるが真剣な表情で顎に手を置く。にいなはしんとした空気を察して、その空気を払うかのように腕をぶんぶん振った。

「あーもうほら、うちのことはいいからさ~!」

 そう言いながら、にいなはるるをびしっと指さした。

「るるちゃんいこっか!」

「え、私?」

「だってるるちゃんのそういう話聞いたことないんだもーん」

「私もそんなのあんまり無いって、、」

「あんまりってことは、ちょっとはあるってことじゃん!」

「うわ、めんど」

 るるが苦虫をつぶしたような顔でにいなを見る。

「はい、はい、教えてくださ〜い」

「えー、、」

 嫌そうな反面、るるの態度は満更でもなさそうだ。


「いやまぁ、好きな人っていうか、気になってる人っていうか、、。は、まぁいるって感じで、、」


 もじもじしながら、るるの声はどんどん小さくなっていく。それでもにいなは聞き逃さない。口を両手で抑え、目をキラキラさせる。

「ちょっ、急に乙女になるじゃん。なに可愛い〜」

 にいながるるの背中を擦りながら寄り添う。るるは顔を真っ赤にして目を逸らした。

「え、それはいつから?同じ高校の人?」

「そんなの絶対言わないし」

「え〜なんで。ここまで言ったら言っちゃおうよ〜」

 粘るにいな。断固拒否するるる。結局るるはそれ以上の情報は言わず、自分の番を強制的に終わらせた。

「はい、次そら」

 何事もなかったかのようにるるがそらに振ってくる。

「あ、確かにそらちゃんのそういう話も全然聞いたことない!聞きたいな〜」

 にいなはいつの間にか「成宮さん」から「そらちゃん」呼びになり、距離もぐっと近づけてきた。

「そうだよそら。私ら3人しかいないんだし、言っても大丈夫だって」

 るるは自分の番を終えて肩の荷が下りたのか、先程とは打って変わってノリノリで聞いてくる。

「え、んー、、」

 そらは必死に頭を回そうとした。しかし若干の深夜テンションと、るるとにいなのおだてが思考を鈍らせる。そして昨日のうみとの会話と彼女の顔が頭をよぎる。

 これがうみちゃんの言ってた深夜テンション、、。


「気、、、になる人が、、、」


 ついつい口から出てしまった言葉は元には戻らない。そらの言葉はるる以上に小さい声だったが、るるとにいなは聞き逃さなかった。ずいっと前のめりになって、そらに顔を近づけてくる。

「え~。ちょっとちょっと。何々2人とも。ちゃんといるんじゃ~ん」

「にーなうるさい。ちょっと黙って。そら、その人のどんなところが好きなの?」

「いや、その、、」

「じゃあそらちゃん、その人って同じ高校の人だったりする?」

「ちょ、ちょっと待って。なんでこんなに質問してくるの、、、!」

 そらは2人から次々投げ込まれる質問を振り払い、冷静になろうとした。

「い、いったん落ち着かせて、、」

 そらの様子を見て、るるは少し距離を取る。にいなはその体勢のまま、

「ごめんごめん、がっつきすぎた」

 と言った。どうやらまだ質問をすることはあきらめていないらしい。一拍置いて、にいなが再び質問を始める。

「じゃあさそらちゃん、どんなとこが好きなの?」

 そらは答えるか迷ったが、もうすでに気になる人がいると言ってしまったこともあり、ここまで来たのならば一緒だと思って素直に話し始めた。当然、顔は未だに熱を帯びて真っ赤である。

「なんか、こう、、。性格的に私に持ってないものを持ってて、すごいなって思ってて、、」

「ふんふん」

「そらちゃんは自分と似てる人ってよりも、真逆寄りな人に惹かれるんだね~」

「だからその、まぁ気になるっていうか、、、」

 恥ずかしくなって2人の目が見れなくなってしまったそらに、にいながフォローをする。

「で、で?ほかにはほかには?」

「え、えっと、、。うーん、、、」

 そらは少し考えた。何も出てこない。そもそもそらは自分がなぜ彼女のことが好きなのか、考えたこともなかった。3人の間に気まずい雰囲気が流れる。

「じゃあさ、そら。付き合ったら何かしてみたいこととかあったりするの?」

 るるが雰囲気に耐えられず話題を変えた。そらはうみと付き合っているところを想像する。ミサンガの世界で過ごしているような日々は現実世界で送れないにしても、ミサンガの世界以外でも一緒にいられる。彼女が楽しそうに過ごしているところを現実世界でも隣で見ていられるのだ。


 あれ?でもそれって、、、。付き合わなくてもできることなんじゃ、、。


 そらはそこまで思考して、ある疑問が浮かんできた。


 付き合うって、どういう事、、?


「そら、、?」

 るるに声をかけられ、そらは我に返る。

「あ、えっと、逆に聞きたいんだけど、二人はどんなことしたい?」

 そらは思わずるるとにいなに投げ返した。

「え、うちこれ毎回言ってるんだけど、おうちデート。彼氏の家でデートってめっちゃきゅんきゅんしそうじゃん!あ、あとペアルックとかもめっちゃ憧れるんだよね~」

「好きな人できたことないのにそういう妄想はするのね」

「別にいーじゃん!そう言うるるはどうなのさ!」

 にいなはべしべしるるを叩いて言った。

「え、私?うーん。でも確かにペアルックとかしてみたいかも。夜景とかも見に行ったりしたい」

「うわ。めっちゃ乙女じゃーん。かわい~」

「やり返したいだけで今私に振ったでしょ」

「ちょ、違うって。あ、いたいいたい、、!」

 るるに二の腕をつねられて悶絶しているにいなを見ながら、そらは不安に駆られる。

「私、付き合うってどういうものなのか、まだ分かってないのかも」

「単純だよ、そらちゃん」

 そらの不安を一蹴するかのように、にいなが堂々と口を開いた。


「付き合うっていうのは、独占欲と性欲だよ!」


「「、、、、。え?」」


 にいなの口から意外な言葉が出てきて、そらとるるは固まった。

「要はさ、相手のことをどうしたいか、って話だと思うんだよね。付き合うのは『好き』って気持ちが大前提だけど、その『好き』っていろんな種類があると思うのね。例えば、『友達的な好き』と、『恋愛的な好き』と。で、みんな『恋愛的な好き』な人と付き合っていくのね」

「それはそうだね」

「だからまず、そらちゃんの分からないって言ってた『付き合う』っていうのは、『恋愛的な好きな人』と友達以上の関係になることだってうちは思ってる」

「にーなにしてはちゃんと考えてる」

「普段全然考えてないみたいなこと言わないでくれない?!」

 そらもここまではにいなの言うことに納得しながら聞いていた。しかしそこで次の疑問が出てくるのだ。それをにいなが言及する。

「じゃあその『友達的な好き』と『恋愛的な好き』の違いって何?って話になってくるの!」

「その基準が独占欲と性欲だってこと?」

「そういうこと!」

 にいなは興奮して声を少し荒げた。顔が活き活きしてきている。

「るるが言った通りで、『恋愛的な好き』にその人が入ってくるのって、その人の一番になりたい、とか、ほかの女子を好きになってほしくない、とかっていう独占欲と、そういう独占欲が変化して変化して、結果出てくる性欲の二つを、その人に対して感じるかどうかってところなんだよ」

「へー。なのに好きな人できたこと、、」

「何回それつっかかってくるわけー?!」

「うそうそ。ごめんごめん。ぎゃー!」

「好きの、種類、、、」

 るるとにいなが取っ組み合って布団に倒れるところを横目に、そらは考え始めた。

「ちなみに『友達的な好き』の方にはさ、独占欲は入ってないの?」

「い~い質問!そらちゃん!」

 にいながびしっとそらを指さした。

「確かに、『友達的な好き』にも多少独占欲はあると思う。でもそれは『恋愛的な好き』の独占欲と比べると、密度が違うわけ!」

「密度?」

「そう!だから重ければ重いほど、『恋愛的な好き』に寄っていくんだよ」

「そしたら、結局その二つの違いって言えないんじゃないの?」

「そこで登場するのが性欲なんだって!」

 にいなは腕をぶんぶん振り回して言った。

「じゃあ聞くけども、るる。友達に対してえっちな気分になる?」

「え?いやなんないけど。でもさ、付き合いたいって思ってる人にもそういう気分になるかって言われたら、それは人によると思うんだよね。実際わたしもそんなこと思ってないし」

「じゃあさ、その人ともしそういう流れになったらどうするの?」

「え?いやそれは、、」

「受け入れるってことは、その人に対してちょっとでも性欲があるってことじゃん!でもそんな風に思えない人と、えっちなんてできないでしょ?」

「当たり前でしょ!」

 るるは何言ってるんだと言いたげな顔で叫んだ。

「ていうかにーなの言ってる性欲って、付き合ってから出てくるものじゃないの?」

「えー?そうなのかなー。じゃあさ、逆にるるの思う付き合うってどんなことだと思うの?」

「そこについては、私もにーなとおんなじ。『恋愛的な好き』な人と、お互いの気持ちを確かめ合って一緒にいることだと思う。で、私はその先の『恋愛的な好き』と『友達的な好き』の違いのところがにーなと違ってて」

「ふんふん」

 にいなとそらは興味津々にるるの話を聞く。


「ずばり、その人が自分以外の人と付き合って、喜べるかどうか」


「、、、喜べるか?」

 そらはるるの言葉を繰り返した。

「そう。つまり、その人の彼女ができましたって報告を聞いて素直に喜べるか、それ以外の感情が出てくるか。嫉妬とか、悲しいとか、そういうの色々」

「ほうほうほう、、」

「素直に喜べないってことは、その人に少なくとも『友達的な好き』以外の感情が入ってて、その感情の根本が『恋愛的な好き』だと思うんだよね」

「じゃあ、好きかどうかわかんなかったら、そういう妄想してみて喜べるかどうかやってみるってこと?」

「まあ、そういうことになるね」

「じゃあその話を含めて、そらちゃん。その気になる人に彼女ができたって報告されました。はい、どう思う?」

「うーん、、」

 そらは想像してみた。うみがミサンガの世界で、目をキラキラさせてこちらに走ってくる。そしてそらに彼氏ができたことを告げるのだ。

「嬉しい、、かも?幸せになってほしいって思ったけど、、」

「うちも好きな人には幸せになってほしいと思う。でも悲しくない?隣に立ってるのが自分じゃないって」

 にいなの言葉に、そらはもう一度想像してみる。

「てかまぁ、実際そうならないと分からないってパターンの方が多そうだけどね」

 そらの返事を待たずにるるが言った。

「それじゃあ遅いじゃん」

 にいながつっこむ。

「私が言ったのは恋愛と友達の違いだからね。タイミング的には最悪だけど、一番わかりやすいのはそこだと思うよ」

 るるは冷静にそう言うと、そらの方に顔を向けた。

「だからさ、そら」

 ゴールデンウィーク明け初日。うみが転校してきた日。ミサンガの世界に初めて入り、彼女と海を見に行った日。あの日、そらはうみに一目ぼれをした。

「もしかしたらなんだけど」


 いわゆる『恋愛的な好き』な感情がうみに対して芽生えたのだと、そらはこれまで思っていた。


「そらのその人に対する『好き』は『恋愛的な好き』じゃなくって、『友達的な好き』なんじゃないかな」

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