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海とミサンガ  作者: 深田おざさ
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夏休みー成宮そら(6)

 10時を過ぎた頃、るるの弟の大輝が急いで階段を降りてきた。昨日は午後から部活があると言っていた大輝は、ごはんも食べずに歯を磨いて急いで支度をし始めた。

「るる姉起きたら、俺もう部活行ったって言っといて」

 30分ほどで支度を終えた大輝は、そう言い残して部活へと向かって行った。

「あ、うん。いってらっしゃい、、」

 そらとるのは呆気にとらわれながらも彼を見送った。

「準備早かったね」

「さすが男子って感じ」

 二人はその後宿題に取り掛かり始めた。るのは何も持ってきていなかったため、そらの持ってきた古典の宿題プリントを借り、答えをスマホのメモに入れ始める。

「文からそのまま抜き出せって問題、変換とか出てこないから難しいな~」

 と言いつつも、すらすらと問題を解いていく。

 そうして11時が過ぎたころ、るるとゆみがやっと起きた。るるに大輝がもう部活に出かけたことを話すと、

「あ、そうだ。起こしてってお母さんに言われてたのド忘れしてた」

 と言いながら昨日の残り物を電子レンジで温め始めた。どうりで大輝はあんなに急いでいたわけだ。

「あれ、そういえばひばちゃんは?」

 ゆみがリビングを見渡してるるに聞く。

「ひばは午後から部活らしいから帰ったんじゃない?インターハイあるからダメ元で誘ったら一日だけ来てくれるって言ってたし」

「わー。大変なんだね」

 ゆみはそう言いながら、るるから手渡しされたたこ焼きを食べ始めた。

「はっしーは今日一日暇なの?今日もお泊まり会するけどどうする?」

 今度はるるがるのに聞いた。

「あ、わたし今日は夕方から塾があるから、食べ終わったら一回帰ろうかな」

「塾終わったらまたくる?」

「気力があればまたお邪魔して良い?」

「もち」

 るるは親指を立ててそう言った。なんだかんだで、るるとるのは仲が良いようである。


 ピンポーン!


 4人で無心にたこ焼きを食べていると、インターホンが鳴った。るるが応答する。

「はーい。え、早くね?」

 るるはそう言うと玄関へ小走りで向かっていった。そらとゆみが顔を見合わせていると、るるがリビングに戻ってきた。後ろから続いて誰かが入ってくる。


「おーっす!おっじゃましまーっす!」


 そこには目をキラキラさせている、榎田(えのきだ)にいなの姿があった。

「あれ、にーなちゃん。今日のゲスト?」

「え?なんでゆみいるの?あれ?成宮さんも?」

「あ、おはよう、、」

「るるちゃん、もしかしてにーなちゃんにも何も教えてないの?」

 ゆみがるるに聞くと、るるがしてやったりの顔を向けてきた。

「言ったでしょ。来てからのお楽しみだって」

「ゲスト増えるのは聞いてなかったよ!」

 テンポの良い会話が生まれ、一気にるるの家が騒がしくなる。ひばりがいたときとは違う賑やかさが、そこにはあった。

「さっきも言ったけど、ひばが一日しかいれないってことだったので、ついでに呼んどきましたー。では、自己紹介の方、お願いしまーす」

「ちょっと?!ついでにって言ってるけど?!」

 るるの言い回しに突っかかるにいな。そらは教室の昼休みのような空気感に、どこか安心したような気分になった。

 あれ。今、私、、、。

 そらは自分が昼休みのようなこの時間を、力を抜いて過ごせていることに驚いた。これまでのそらは、授業以外で教室にいる時は大抵ヘッドホンで周りの音を遮断していた。それが気付けば、当たり前のように友達と呼べる人たちと話し、笑い、一緒に行動をしている。ゴールデンウィークが明けてから、自分が身をおいている環境が一変したのだ。

 私、変われてるのかな、、。

 そらはそんなことを思いながら、寝起きには辛いくらいの大声で自己紹介をするにいなの様子をじっと見ていた。


 昨夜の残り物であるたこやきを食べ終わり、それぞれ歯磨きやら髪の整えやらを済ませた後、スーパーへ買い物に出かけることにした。るのはスーパーで買い物をした後、そのままるるの家には戻らず、自宅へ帰るらしい。

「はっしー。来てくれてありがと」

「こちらこそ、急に来たのにありがとうね」

 るのはるるとあいさつをしたのち、そらのもとへ寄ってきた。

「そらちゃんも、昨日の夜からいろいろありがとうね」

「うん。こっちこそありがとう」

 るのとひばりの関係を彼女たちの口から聞くことができたことが、そらには何よりもうれしかった。

「そらちゃんのこと、わたし応援してるから」

 るのは両手をぐっと握り、任せてくれと言わんばかりの顔をした。

「なんでも相談してね!」

「うん、ありがとう。はっしー」

 そらはふふっと笑いながら、彼女に感謝する。脳裏にうみの顔が出てきたことは、るのには言えなかった。るのとはそのままスーパーで別れ、るるの家へと戻る一行。

「ていうかさー、なんでこんな早いのにーな。3時とかに来るとかいってなかった?」

「いやー、楽しみ過ぎてあんまし寝れんかったからそのまま来たんだよねー!」

「遠足行く幼稚園児みたい」

「純粋でかわいいでしょー?」

「自分で言ったらなんか違うんだよねー」

 いつもと変わらないるるとにいなのやり取りを聞きながら、四人はスーパーから帰ってきた。

「あっつぅ。ひ、干からびちゃうよぉ」

「今年えぐくない?去年の3倍きつい気がする」

「うぅ、エアコン消さなきゃよかった」

 エアコンをつけて部屋が涼しくなってきたところで、にいなが手を叩いた。

「よし!さっそくやることやろう!」

 いきいきとそう言いながら、にいなが宿題のプリントの山を取り出した。

「じゃあ!教えてください!成宮様!」

 そう言いながら、にいなは深々とそらに頭を下げた。

「え、、」

「宿題一緒に進めようってるるが話してたから持って来たんだけど、るるだけじゃ足の引っ張り合いになる覚悟して今日来たんだよね」

「ちょっと?」

「でも!学年でも成績上位者の成宮さんがいてくれたら百人力だよ!」

 どこでそらが上位者だという話を聞いたのか。確かに成績はいい方だが、誰かにそれを見せたり言ったりした覚えがない。しいて言うなら、、。

「そらは頭いいんだよ」

 横で誇らしげにしているるるを見て、彼女が広めたのだとすぐに分かった。

「分からない部分だけ聞くようにしないと、自分の力にならないよ?」

「こんなこと言ってるゆみ、昨日ほとんどゲームしてましたー」

「ちょっ!るるちゃん言わないでよー!」

「あーあ。ゆみ、ゲームばっかりしてたら自分の力にならないよ~」

「あー!めっちゃ煽ってくるんですけどこの人!」

 そらは五十歩百歩で言い合うゆみとにいなを見ながら苦笑いするのだった。


「きゃー!寝てたぁ!」

 勉強やらゲームやらで18時が過ぎたころ、16時くらいから寝息を立てていたにいなが起きて叫んだ。昨夜寝れていたなった分が押し寄せてきたのだろう。るるが体を揺らしてみるも起きる気配がなかった。

「起こしてよー!」

「にーな、声かけても何しても全っ然起きなかったよ。そのまま明日まで寝てんのかと思った」

 そう言うるるも、途中で宿題を進める気力がなくなりスマホで動画を見ていた。ゆみは逆に15時くらいまでは勉強に身が入らず、ごろごろしてスマホを見ていたが、途中からそらと英語のワークに取り掛かり、もうすぐ宿題の範囲の半分が終わろうとしていた。

「じゃあ、ここは動詞省いてもいいってことか!なるほどなるほど、、したら、、」

「あー!ゆみ待ってー!あんただけは仲間だと思ってたのに!」

「私も昨日全然やってなかったから、危機感持ってるんだよー!」

「ってか、成宮さんはずっと宿題やってたの?って!ほとんど終わってない?!」

「英語のワークは。まだ古典の問題は全然手付けてないんだけど、、」

「それでも十分すぎるでしょー。まだ夏休み2日目だよー?」

 しなしなになっているにいなを見て、そらは思わずふふっと笑ってしまった。

「じゃ、ひと段落したところで夜ご飯でも作り始めよっか。そろそろ大輝も帰ってくるし」

「え?大輝って誰?」

「ひと段落って、るるちゃんほとんどなーんにもやってなかったくせに」

 三人がまた言い合いをしていると、大輝が帰ってきた。

「ただいまーっと。え?なんか増えてね?」

「はいにーな、自己紹介」

「よしきた!」

「え、マジで何?って声でっか」


 その後、そら、るる、ゆみ、にいな、大輝でカレーを作って食べ、昨日と同じようにゲームをして時間が過ぎていった。明日は大輝が午前練習なので、日が変わらないうちに自部屋に上がっていった。そらが風呂から上がると、ゆみがすでに寝ていた。

「ゆみ寝すぎ」

 るるはそう言って爆睡中のゆみのあしをぺしぺし叩いた。

「じゃ、みんな寝る準備できたとこでぇ~、、」

 にいながそう言いながら近づいてきた。るるとそらの間に座ると、満面の笑みを浮かべた。


「二人とも、気になる人とかいる?」


 にいなの言葉に、るるが座り直して目つきを変えた。


「なるほど。恋バナね」

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