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海とミサンガ  作者: 深田おざさ
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出会いー立花うみ(2)

 うみが自分のもつミサンガの秘密を知ったのは、高校1年生の冬休み頃だった。ある日、たまたまミサンガが切れてしまったことをきっかけに、()()は訪れる。






 ()()に気付くのに、うみはしばらくかかった。いつもご飯の時間になったら呼びに来る母親が、今日は来ない。不思議に思った彼女は家中を探したがいない。慌てて外に出ると、外は恐ろしく静かだった。通りには人っ子一人おらず、近くのコンビニにも人の気配がなかった。それどころかカラスもスズメもおらず、異常な光景にうみは非常に混乱する。

 つまり自分以外の誰もこの世界から()()()()()()()()()()のだ。人も、虫も、動物も。彼女以外の生物という生物が消え去った。

 ふと左手首を触ったうみは、切れたはずのミサンガがまだついていることに気がつく。見ると切れた痕もなく、きれいな輪っかのままだった。うみはまさかと思い、家に戻ってミサンガを再び切ると、目の前が一瞬だけ真っ白になり、それがなくなるとミサンガが元通りになっていた。部屋を出ると母親がいて、外を見ると人が歩いている。

 うみはこの経験から、ミサンガの切断で起こることを様々な条件で行い、自分なりに考えることに没頭する。


①ミサンガを切断すると、人も動物もこの世界から消えて自分一人になる。

②切る行為を誰かに()()()()()()()場合にのみ起こる。

③自分以外では起こらない。

④ほどくだけでは起こらない。

⑤誰もいない世界では時が進む。

⑥誰もいない世界には植物だけ残る。

⑦電気も通っている。

⑧誰もいない世界でもう一度ミサンガを切断すると元に戻る。

⑨戻る時は時間も戻り、切断する瞬間に戻る。

⑩誰もいない世界の記憶は残る。


 以上のことが、様々なことをやって来て得られた情報だった。2,3度、現実世界でミサンガを切断することになったが、その度に直していった。

 このミサンガは、特別なミサンガ。誰にも秘密だ。

 うみはそう決めると、誰にも打ち明けなかった。成績が優秀だったのも、芸能の仕事の合間に誰もいない世界で勉強をしていたからである。彼女は仕事や生活のストレスがある程度溜まると、それを解消するために向こうの世界に行くことにしたのである。

 こうしてミサンガの秘密を上手に使いつつも誰にも打ち明けず、高校2年に進学して引っ越しても、このミサンガは手放さなかった。


 校長室で担任の先生から呼ばれるのを母親と待っていたうみはの左腕には、不思議なミサンガがかかっている。それをいじっていると、やがて先生が来た。校長室を出て母親と別れ、教室に向かう。

「緊張することないよ、立花さん。クラスの皆さん、とてもいい子たちですから」

 担任の女の先生・岸は、優しくうみに言った。

 教室の前に着くと、岸はスライド式のドアを開けて中に入り、うみにも入るように目くばせをする。うみは一つ深呼吸をして教室に入った。


 教室には40人前後の生徒がおり、うみが教室に入るや否や、動揺が走る。

「え?!大瀬良杏奈?!本物?!」

「マジで?!」

「ドッキリか!」

 様々な声が飛び合うなか、うみはクラス全体を見渡す。みな制服をきちんと着て、いい意味で目立つ人はいなかった。一人を除いて。

 一番後ろの窓側の席に、コンビニにいた赤髪の男子生徒がいた。うみは驚いたが、仕事で鍛えたポーカーフェイスで表情に出さない。先生が静かにするように促した。

「えー、彼女は今日からこちらの高校に転校してきました。じゃあ立花さん、自己紹介をお願いしますね」

 うみは返事をすると、一歩前に出た。

「はじめまして、立花うみです!東京から来ました。」

 2年1組は騒然となった。


「立花さん!」

 朝のホームルームが終わると、隣の席の女子が話しかけた。

「私、葉月桃。よろしくね!」

「うん、よろしく!」

 うみは桃に笑いかける。

 めっちゃ可愛い、、、!

 うみの桃への第一印象はそれだった。非常に整った顔に、素材を消さないメイク、肩まである黒髪は手入れされていて、芸能人顔負けの容姿をしている。

「ねぇねぇ連絡先交換しよ!」

 うみはスマホを差し出しながら周りを確認した。彼女の友達が5,6人集まってくる以外にはうみには近づかず、チラチラうみを見るか、話しているかである。廊下には人だかりができ、うみが本物の「大瀬良杏奈」かどうかを確認しに来ていた。

「立花さんって、やっぱり()()()()の性格なの?」

 桃が言っている「あのまま」とは、「明るく純粋で、優しいよく笑う子」のことであろうと、うみは理解した。それがうみのブランドイメージだったのだ。

「そのまんまかなぁ。あんまり変わんないかも!」

 そらにしてみれば、これは間違いではなかった。自分を偽ることはとても疲れる、そう教えられていたので、自分の性格をそのまま芸能界でも出していた。


「あ!そろそろ授業始まっちゃう」

「またあとでねー!」

 しばらく質問攻めにあったうみは、教科担任の先生が入ってきたことで一息ついた。

 よし、授業がんばるぞ。

 うみは教科書をカバンから取り出しながら、気合を入れる。最初の授業が始まるチャイムが鳴り響いた。

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