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海とミサンガ  作者: 深田おざさ
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セカンドコンタクトー藤堂ひばり

「ねぇひば、なんか最近成宮さんと仲良くない?」

 昼休み、ひばりはいつものように村川(むらかわ)れな、榎田(えのきだ)にいなと昼食を食べていると、れなが突然聞いてきた。

「え、それな」

 にいながれなを指さしながら大きくうなずく。

「体育祭からめっちゃ話してるイメージある」

「怖くないの?」

 二人に注目され、ひばりは気まずそうに目を背けた。

「別に怖くないけど、、、。って、二人ともあの噂信じすぎ」

「いや別に信じてるわけじゃないよ?!でももしホントだったら怖くない?って!体育祭中一回だけ話しかけたんだけどめっちゃ不機嫌顔だったし!」

「あんた、マシンガンだったからじゃないの?」

「へ?」

 れなの指摘ににいなはぽかんとする。

「にーながマシンガントークで一方的に話しちゃってたからじゃないの?今みたいに」

 確かに、にいなはとにかくよく喋る。しかしそれを煩わしいと思ったことは一度もなく、むしろ彼女がいるだけでその場の雰囲気が良くなるような彼女の性格を、ひばりは尊敬していた。

「え、嘘でしょ?」

 にいなは自分で気づいていないのだろう。ぽかんとしている。しかし急にハッとして叫ぶ。

「確かにあんときぜんっぜん会話してないかもぉ!!」

「ちょ、うっさいって」

 れなは笑いを堪えながらぺしっとにいなを叩いた。

「まぁまた話してみれば良いじゃん?」

「れな適当なんだけど。だから彼氏できないんだよ」

「今それ関係ないでしょ!」

「ぎゃー!ひば助けてー!」

「もー。ふふっ」

 ひばりは笑いながら彼女たちのやり取りを見て笑った。やはりこの二人のやり取りが好きだと、改めて思った。


「にーなちゃんー、おーい、、、」


 ふと教室の後ろのドアから声がした。3人で同時に振り返る。そこには初めて見る女子生徒が立っていた。手招きでにいなを呼んでいる。

「あれ?かほじゃん。何してんのこんなとこで」

 かほと呼ばれるその女子はにいなを廊下に連れて行って何か話していたが、数分後ににいなだけが戻ってきた。

「え、なになに。だれだれ?」

 れなが興味津々でにいなに聞く。

「あぁ、永野(ながの)かほって子。軽音の後輩なんだけど、、、」

 にいなの頭には疑問が浮かんでいるようだ。眉間にしわが寄っている。

「けど、、、?」

 れなもそれを察して催促した。

「なんか、成宮さんが今いるかって聞かれて、、、」

「え、ファン?」

「え、でもさ、いないって言ったら、自分が来たこと言わないでーって言ってどっか行っちゃったんだけど」

「隠れファンとか?」

「んー。今までそんな感じの雰囲気出てなかったんだけどなー」

 にいなは腑に落ちないらしいが、れなはどうでも良くなったのか、ふーんと適当な返事をしてスマホをいじり始めた。


「ひば、ちょっと良い?」

 昼休みが終わり、5限目の授業の準備をしていると、そらが話しかけてきた。

「うん。なに?」

「えっと、急なんだけどさ、今日の放課後、テスト勉強しない?」

「テスト、、、勉強、、、」

 ひばりはその単語を聞いて一気に思い出す。

「ヤバい、数学がヤバい、、、」

 ひばりはもともと数学が苦手で、その度に橋本(はしもと)るのの手厚いサポートがあった。毎回毎回なんとかギリギリで赤点を回避して乗り切ってはいるものの、どんどん内容が濃くなっていき、もうお手上げ状態なのだ。

「もしよかったら、あの、橋本さんもご一緒に、、、。あの時すごく集中できたから、、、」

 そうだ。実際あの時はひばりも恐ろしいほどの集中していた。るのと二人きりで勉強をしていると、ちょっかいを掛けたくなってくるのだ。それの抑止ができ、なおかつそら自身も頭が良いので、るのの負担も減るだろう。部活はテスト1週間前から禁止になるが、ひばりはこの状態なので参加は任意になっている。つまり数学を克服するチャンスなのだ。

「ぜ、是非お願いします、、、!」

 ひばりは深々と頭を下げた。そらは笑いながらお礼を言うのだった。


 放課後になり、ひばりたちは3組の教室でるのを待っていた。ひばりは顧問にテスト勉強をするといって部活参加を断り、るのに連絡した。るのはこれを快諾し、3人で数学をやるつもりだ。

「おまたせ~」

 教室に誰もいなくなったことを確認して連絡すると、すぐにるのが入ってきた。

「るの、ごめんね急に」

「ううん。わたしもそろそろ数学やろうかなーって思ってたから、ちょうど良かったよ」

 こうして勉強会が始まった。基本的にひばりにはるのが付いて教えてくれる形で、そらは一人で黙々とワークを進める。時々るのはそらと一緒に難しい問題を考えていたが、ひばりには一言一句理解ができなかったためにそこには参加しなかった。

 こうして1時間程経ち、一度休憩を入れた。

「なんかめっちゃイケる気がする、今回」

「ひーちゃん、毎回それ言って赤点ギリギリなんだから。もー」

「橋本さんは毎回この時期くらいから数学始めてるの?」

「うん。そうだよ。それでひーちゃんにも教えてって感じ。数学はその方が落とし込むの速いんだよ~」

「そうなんだ。確かに、、、」

「そら、頭良いのにもっと上目指せるの凄いや」

「ひばも理解凄い早い気がする。、、、。何で苦手なの、、、」

「いや、あたしはちょっと先生変えてもらわないと、、、。話ムズいんだよね。って言うか、るのの教え方がめっちゃ分かりやすいんだよ。それで助かってる」

「確かに。ひばの分からないところが分かってる感じで進めてる気がする、、、」

「ひーちゃんにはすっごい教えてるからね~。ていうか、二人とも凄い仲良くなってるんだけど!呼び方もいつの間にか変わってるし~!」

 るのの指摘に口ごもる二人。説明するのは恥ずかしい。

「どっちにしても、溝なくなって良かったぁ~」

 るのが安心したように言った。体育祭の次の日、そらと話し合って誤解を解いたことをるのに報告すると、安心して泣いてしまったほどだ。いろいろと彼女も心配だったのだろう。

「じゃあさ、成宮さん。わたしのこと『はっしー』って呼んで?」

「え、あ、うん。は、はっしー、、。じゃあ、私のことも、『そら』、、、で、、、、」

「うん、そらちゃん!」

 二人はその後、勉強の方法を共有し合っていた。ひばりはその間、るのの嬉しそうな顔を見て癒される。ひばりはこの瞬間が大好きだった。

 あー。今めっちゃ幸せかも、、、。


 ガララッ


 そう思っていると、急に教室のドアが開いた。3人で一斉にそちらを見た。誰かが顔をのぞかせる。


「あ、やっぱりはっしーだ!」


 そう言いながら教室に入ってきたのは、立花うみだった。

「え、うみちゃん?!」

 るのも突然の登場に驚いている。そらも驚いているのだろう、言葉を失って目を見開いていた。

「こんなとこで何してんのー?」

「今勉強会。テスト来週でしょ?だからしてるの~」

「え、、、」

 うみが急に暗い顔をした。

「私も数学ピンチ、、、。どしよ、、、」

「い、一緒にやる?」

「え、良いの?!」

 うみの表情が一気に明るくなる。

 なんかテレビで見たまんまの人だな、、、。

 ひばりはそう思いながら一連の流れを聞いていた。

 ん、一緒に、、、?

「一緒にやるの?!」


 数分後、4人は机をくっつけて座っていた。ひばりの隣にはるのが、そらの隣にはうみが座った。

「よろしくねー!」

 うみはやる気満々だ。ひばりはそらの方を見た。意外に思ったのは、そらが緊張していなさそうなところだった。こっそりそらに勉強会にうみが混じっても平気なのか聞くと、そらは大丈夫と言っていたのだ。そこでも緊張は見られなかった。

「分かんないとこあったら聞くかも!よろしくね。えっと、、、」

「あ、成宮そら、、、です」

「そらちゃん!私、立花うみ!『うみちゃん』とかって呼んで!」

「あ、うん。よろしくね、うみちゃん」

「あい!よろしくー!」

 彼女の距離の詰め方は、もしかしたらにいなよりもすごいかもしれない。あっという間にこの場の空気に馴染んでしまった。

「よーし!やってこー!」


 ガララッ!


 うみがそう言った瞬間、再びドアが開いた。4人はそろってドアの方を見る。


「ん?どんなメンツ?」


 入ってきたのは、外内るるだった。

「るる、どうしたの?」

 そらが真っ先に反応した。彼女たちは体育祭が終わってから仲が良いようである。

「家で数学やろうと思ってたんだけど、学校に忘れてるの思い出して取りに来たんだけど、、、。みんな数学やってるっぽいね。混ぜてよ」

 るるはこちらが返事をする前に、机を移動させ始める。

「あ、噂の転校生」

 るるがうみに話しかけた。

「立花うみです!『うみちゃん』とかって呼んで!」

「じゃ、私のことは『るる』で良いよ」

 るるは向かい合うそらとひばりの机に接するように机をくっつけ、後ろのロッカーに数学を取りに行く。

「なんでうみちゃんは3組にいるの?」

 早くも『うみちゃん』呼びでるるは聞いた。

「廊下歩いてたらるのちゃんの声が聞こえて、みんな数学やってたからわたしも混ぜてもらったんだよ」

 るるはそれを聞くとこちらを振り返った。るのの方を見る。

「もしかして、学年1位の、、、」

 そう言いながらひばりの方も見る。

「今日言ってた『強力なバックアッパー』って、、、」

「あ、そう。るののこと、、、」

 ひばりは気まずそうに認める。

「ずるいぞ!私も教えてもらう!」

 こうして5人で数学を勉強することになった。るのとそらの2人がかりで3人に数学を教えていく。


 これ、マジで大丈夫なのか、、、?

 いままで感じたことのない緊張感が流れる中、ひばりは本当に勉強に身が入るのか不安になるのだった。

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