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海とミサンガ  作者: 深田おざさ
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体育祭ー成宮そら(5)

 学年リレーはその後、1位のままアンカーのるるにバトンが渡ってそのままゴールした。るるが目の前でゴールテープをきった瞬間、隣で見守っていたゆみがやったー!と叫びながらハイタッチを求めてきた。そらはそれに応えてハイタッチすると、るるの方へ歩いていく。

「ナイス、成宮さん」

 るるは合流するや否や、そらとグータッチしながら冷静に言った。

「うん。ありがとう。外内さんもすごかった」

「ありがと。るるでいいよ」

「ていうかさぁ、るるちゃんがネガティブなこと言うからバトン落としちゃったじゃん!」

「それ私に言われても困る。ていうか何て言ったっけ?」

「忘れんなし!」

 彼女たちが言い合っていると、生徒席側にいたやこ、いくみ、はるみが駆け寄ってくる。

「ホントに1位になっちゃったようちら」

 やこはそう言うと生徒席の方を見た。

「ひばー、やったぞー」

 そらも生徒席側を見た。ただしひばりを探すためではない。

 ありがとう、うみちゃん。

 そらは心の中でうみに感謝する。彼女が直前でミサンガの世界に入って言葉をかけてくれていなかったら、きっとこんな結果にはなっていなかったはずだ。彼女がいたあたりを探したが、姿は見えなかった。

「さ、戻ろ。次は男子の番だ」


 その後の男子は4位を取ってしまったが、3年生の学年リレーは男女ともに2位を、色別のリレーでも2位を取った。これで体育祭の全種目が終わり、続く閉会式では結果発表が行われる。総合優勝、横断幕や応援パフォーマンスの最優秀がそれぞれあり、1~3年の学年別の優勝も分かる。

 色別の成績の付け方は少し特徴的で、4つの色に対して1学年が6クラスあるため、足りないクラス分の成績はくじ引きで当たったクラスの成績が加点される。例えば、そらの所属する緑団は1年生が2クラス、2年生が1クラス、3年生が2クラス所属しており、2年生が1クラス足りない状況にある。そこで2年生の学年種目や学年リレーなどクラス単位の種目の成績が1クラス分足りない。そこでくじ引きを行い、出たクラスの成績が緑団2年生の2クラス目の成績として適応されるのだ。このくじ引きは優勝を目指すに当たって非常に大きなカギを握ることもあり、大いに盛り上がりを見せる。今年も例年どおり、団長4人が前に出てくじを引いていく。

『緑団、2年学年種目タイフーンの2クラス目は、、、』

 団長がくじを引く。沈黙が流れる。

『5組!ということは、緑団に2位のクラスの成績が入ります!』

 一同歓声。

「エグっ!!」

「え、しかも1位も緑団だからヤバくね!」

 このようにくじが引かれていき、最後に優勝が発表される。これを読み上げるのは体育祭実行委員長だ。ゆっくりと台に上ってくる。

『では皆さん、お待たせいたしました。成績の発表に移りたいと思います。今年の体育祭、総合優勝はー、、、』

 恒例のドラムロールと、生徒たちからの

「ぉおーーー!」

 という盛り上げが起こる。

 ドラムロールが止まり、生徒たちが一斉に静まり返った。全員が次の言葉を待つ。


『黄団です!!』



『みんな、最後まで一緒に駆け抜けてくれてありがとうございました!結局優勝はできなかったけど、今までで一番サイコーに楽しい体育祭にできたと思います!』

 総合2位で体育祭を終えた緑団はグラウンド真ん中で集合し、団長と副団長の最後の言葉を聞く。彼らが話している最中、そらのとなりにひばりが来た。

「成宮さん、改めてリレー出てくれてありがとう」

「ううん。こちらこそ」

「やっぱりめっちゃ速いんじゃん」

「あ、ありがとう」

 そらは何だか恥ずかしくて、彼女の顔を見れないでいる。

「そういえばあたしらのクラス学年1位なったから、もしかしたらしまちゃんに何か奢ってもらえるかもね」

 「しまちゃん」とは、そらたちの所属する2年3組の担任の島田(しまだ)先生のことである。種目決めの時は勝ってデカい顔を職員室でしたいと言っていたので、それはどうやら叶えられそうである。

 そらはひばりをようやくちらっと見た。車いすに乗る彼女に、そらは自分の言ったことを思い出す。


「体育祭が終わったら、ちゃんと話したい。私のこと、、、。」


「あ、あの、藤堂さん、、、」

 そらは思い切って話しかけた。ひばりがこちら向く。

 きっと教室に戻ったら、村川(むらかわ)さんとか榎田(えのきだ)さんとかが居るから話せない。今しか、、、。

 そう思いながら声を出そうとした瞬間、大きな拍手が起こった。団長たちの話が終わったのだ。そして解散の流れになり、女子たちの撮影タイムが始まった。ひばりも副団長に呼ばれ、村川れなに連れていかれてしまった。

「ごめん、成宮さん。またあとでで大丈夫?」

「あ、、、。うん、、、。」

 強制的に連れていかれながらそうそらに言ったひばりは、人ごみの中に消えていった。

 そらは辺りを見渡した。皆が写真を撮ったり話したりしている中で、そらは一人でいる。

 教室戻って着替えてよ。

 そう思いながらそらは、生徒席の方へ自分の席を取りに行こうと歩き始めた。


「いた!成宮さん!」


 そんな時、背後から声がした。振り向くと、そこにはやこがいた。

「なにしてんのさ。ほら、最強リレーチームで写真撮るよ!」

 やこはそう言いながらそらの手を取り、ゆみ、るる、はるみ、いくみがいるところまで走っていく。

「あ、来た」

「みんなで撮ろー!」

「成宮さんこっち入ってぇー」

「いいい、一緒に撮りましょう!」

 そらは彼女たちのもとへ駆けながら、こみ上げてくる感情に気付いた。今まで目の端でしか見ていなかった光景に、今は自分が入っている。ヘッドホンで遮った”普通”に、そらは、、、。


 そっか。私、、、。私は、、、。


「成宮さん?」

 思わず足を止めてしまったそらの方を、やこが振り返る。

「何でもない」

 そらはあふれ出そうな涙を必死に抑え、彼女たちの輪の中に入った。

「じゃあ撮るよー」

「よろしく!いくみん!」

「あべはる、もっと寄ってぇー」

「すすす、すいません!これでどうですか?」

「良い感じぃ」

「いたっ!るるちゃん、足踏んでるって!」

「あ、ごめんゆみ」

「ほら撮るよー!」


「はい、チーズ!!」

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