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海とミサンガ  作者: 深田おざさ
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バイクガイドー立花うみ(2)

 うみとそらが乗ったバイクは、無秩序に並んだ車の列の間を通って行く。

「ねぇ!あれなに?!」

「あれは展望台だよ。學校以外だとあれがここらへんで一番高い建物」

「へー!じゃあ、あれは!」

「あれは知らない人の家かな」

 うみは色々な建物を指さしてそらに聞いていた。そらは聞かれたことにしか答えず、ゆっくりと同じ速度でバイクを走らせている。まるで機械のようだった。

「ねぇ!なんか違う!」

 うみは耐え切れなくなってそらの後ろで大声を上げた。そらはびくっと体を動かしてちらっと後ろを窺った。

「な、なに?」

「ちゃんと紹介してよー!」

「えっと、どうやればいいの?」

「んー、、、」

 うみは頭の中に、右手左手に見えるものを紹介しながら、加えて豆知識や現地の人にしか分からないような情報も教えてくれる、観光地にいるようなバスガイドを思い浮かべていた。

「バスガイドみたいにちゃちゃっと」

「えぇ、難しいなぁ」

「頑張れ頑張れ」

 うみは笑いながらそらの肩をたたいた。そらは左右を見ながら運転を続けている。横を向いた時にヘルメットの中から、そらが難しい顔をしているのがうみには見えた。

 真面目だなぁ。ホントに。

 うみはくすっと笑い、改めてそう思うのだった。


「あっち、あ、右手に見えますは、コブンでございます」

 そらは一瞬だけ右の横に大きい建物を指さし、どもりながら紹介し始める。あまりにもバスガイドに似せた喋り方だったので、うみは噴き出した。

「へ、変だった?バスガイドの人ってこんな感じじゃなかった?」

「いや、ごめんごめん。思ったよりバスガイドだったからさ」

「こんな感じで大丈夫?」

「うん。いい感じいい感じ」

「えっと、あちらがコブンです」

「コブン?なにそれ」

「コブンとは、えっと、子ども文化センターでございます」

「ぶふっ!だめだ!あはは!」

 真面目に敬語で話そうとするそらに、うみは耐え切れなかった。再び噴き出し、そらの背中をたたいた。

「いてっ」

 そらはぴくっと体を反らし、バイクを止めた。

「難しいよ、、、」

 そらはヘルメットを被っていても分かるくらい、恥ずかしがってうつむいた。

「敬語がおもしろすぎて。最初みたいな感じでさ、ふつーに喋ってみてよ」

「、、、分かった」

 そらは小さくうなずくと、またバイクを走らせ始めた。


「右のあれが、ごんごん山って呼ばれてる、めっちゃ広い森なんだけど、、あれ?」

 少し走らせた後にそらは右の大きな森を紹介し始めたが、途中で言葉を止め、空の方を振り向いた。

「あのさ思ったんだけど、生物はみんなこの世界からいなくなるのに、植物ってそのままなんだね」

「え?!」

 そういえばそうじゃん!

 うみは言われるまで全く気付かなかった。というよりも、全く考えたこともなかった。確かに大きな森がそこにたたずんでいる。今思えば、先ほど校門で空を待っている間も、近くにあった花を無意識に眺めていた。

「ぜんっぜんそんなこと考えてもなかった、、、」

 唖然とする海を見て、今度はそらがふっと笑った。

「なにさ!」

「いたっ」

 今度はそらの腕をぺしんと叩いた。

「でもホント、なんで木とかは残ってるんだろ」

「呼吸とかのためかな?だとしたらすごい融通の利いた世界だけど、、、」

 そらはぶつぶつと言いながら考え込む。

「てかそれは置いといてさ、もいっかい言って。この森の名前」

「え、あぁえっと、ごんごん山?」

「そうそれ、なんで森なのに山なの?しかもめっちゃ変な名前だし」

「えー、、なんて言ってたっけな、小学校の頃に聞いた気がするんだけど。確か森の中に炭焼き小屋があって、薪割りとかしてる音が聞こえてくるから、みたいなのだった気がする」

「へー。なんか面白そう!ね、今度行こうよ!」

「そ、そうだね」

 そらはうみの提案にあまり乗り気でないような返事をした。

「怖いの?」

「ちがっ、でもほんとに、あそこって幽霊が出るとか噂されてるんだよ?」

「なにそれ、怖いんじゃん」

 笑ううみに、そらは必死に反論する。

「怖いって言うか、危険なんだよってことを、、」

「大丈夫だって。ミサンガあるし」

「、、、幽霊って生物に入るのかな、、、」

 そらはまたぶつぶつ言いながら、うみは流す洋楽を鼻歌で歌いながら、二人は森の横を通って行く。


 そらの言う通り、この街には面白みがなかった。コンビニやスーパーはあるものの、カラオケや映画館はおろか、喫茶店の1つもない。そらは自虐的にそれをうみに紹介していった。

「生活には困らないけど、遊ぶ場所がないね」

「確かに」

 うみはけらけらと笑った。

 そうこうしていると、バイクが交番を通り過ぎて少し行ったところで、そらは左側を指さした。それを見た瞬間、うみは目を大きくさせた。うみが長年憧れを持っていた()()が、そこにあったからだ。そらがこれまでのように淡々と紹介する。


「これが駄菓子屋だよ」

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