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海とミサンガ  作者: 深田おざさ
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バイクガイドー立花うみ(1)

 15時20分、うみは校門の塀に腰掛けていた。そらがバイクに乗って来るのを待っている。それまで霧のように細々と降っていた雨は止み、雲の隙間から日光が漏れ出ていた。濡れた地面に光が鈍く反射し、じとっとした空気が肌に触れる。

 うみは蒸した空気に少し顔をしかめながら、ミサンガの世界に来る前の葉山桃たちとの会話を思い出していた。


 うみが桃たちとトイレへ行くと、ちょうどそらが個室から出てくる所だった。彼女の目立った銀髪を見た瞬間、うみは思わず、

「あ、」

 と声を上げた。しかし会ったのは昨日のミサンガの世界の中である。現実世界で会って話す機会はまだない。それなのに話しかけに言ったら桃たちに不審がられる。そう思ったうみは桃たちの話に合わせ、笑いながら鏡越しにそらを見た。鏡の中のそらと目が合う。

 おいー!ちゃんとこっち見てるじゃーん!

 うみは嬉しくなり、眉毛を少し動かしてみた。鏡越しのそらは気付くのか。しかしそらはうみが眉毛を動かす前に視線を外し、そのままこちらを見ないように急いで出ていったのだ。

 他人のフリするってよりも逃げてるみたいなんですけど。


「ねぇ、見た今の」


 桃の隣にいた田辺(たなべ)伊代(いよ)のひそめた声が、少し後ろにいるうみにも聞こえた。すこし笑い交じりの、馬鹿にしたような声質。その声質を散々向けられてきたうみはすぐに察した。

 今一緒にいるグループは、そらを侮蔑の対象としているのだ。そしてそらはおそらくそれを知っている。侮蔑の視線や態度は、たとえ本人が隠しているつもりでも、思っているより相手に伝わるのだ。それはうみ自身がその対象になったことで気付いたことである。

 この後の展開も知っていたうみは、桃にこそこそ話している伊代をよそにさっさと個室に入った。さげすみの声は、それに同意する人が多いほど大きくなっていくものだ。きっとこのあと、伊代はうみの方へアクションを起こす、うみはそう思ったのだ。

 この土地に来て初めて人間の嫌な部分を見たうみは、少し気分転換をしたかった。静かにポケットからハサミを取り出し、ミサンガをゆっくりと切る。






 そうしてミサンガの世界へ来て、学校内でそらと共にストレスを発散した。今は、街探検のためにそらがバイクを家から持ってくるのを待っている最中だった。


 数十分後、バイク乗ったそらが校門を出た右手側から現れた。昨日と同じように校門の横に停める。

「町の探検って、何するの?」

 そらはサドルからヘルメットを取り出しながら、うみに尋ねた。

「うちさ、引っ越してきたばっかだからさ、この街の紹介してよ!色んなとこ行ってみたいんだよねー!」

 うみはわくわくしながら、そらの差し出したヘルメットを被って後ろに乗った。

「紹介も何も、この街なんもないんだよ」

「ね!ももちゃん、、、あ、クラスの人が言ってた」

 桃が今日の昼休みにため息を付いていたのを思い出した。彼女は東京に行きたがっており、うみは質問攻めにあっていた。

「、、、そうなんだね」

 そらが少し言葉に詰まったのを、うみは見逃さなかった。

 やっぱり。そらちゃん()気付いてるんだ。

「そ!だから逆に知りたくなっちゃった!」

 あくまで自然に桃の名前を出したかのようにするためくすくす笑ううみを、少し呆れたようにそらが見る。

「ん?何?」

 バレたのではないかと思い、うみは思わずそらの背中をばしばし叩いてそらの思考を止めさせようとする。いてっ。と言いながら身を捩るそら。

 これで大丈夫だろうと思ったうみは、そのままそらの後ろに乗った。

 さっきのことは忘れよっと。これ話してそらちゃんと気まずくなんの嫌だし。

 うみはスマホを取り出して、先ほど誰もいない学校でかけ流したプレイリストを再生する。爆音のBGMが、うみとそら二人だけの世界に入り込んでくる。気分は上々。うみは音楽に負けないくらいの声量で、高らかに叫ぶ。


「よっし!じゃあ行こー!!」

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