バイクガイドー成宮そら(3)
「そうだ、ちょっと私の教室寄っていい?」
そらはうみと廊下を歩きながら思い出した。
「昨日のタバコ返すよ」
全校集会で荷物点検があった際、そらは勝吾に言ってうみのタバコを隠してもらい、うみが点検にひっかからないようにしたのだ。勝吾によって回収されたタバコは昨日のうちに勝吾がそらに渡したため、今はそらが持っている。今日はうみに返すために、そのタバコを持ってきていた。
そらはうみの返事を聞かないまま、3組の教室に向かって駆け出した。とその時、うみが突然噴き出した。
「あははっ!」
「なになに、どうしたの?」
「だって、、、あははっ!」
うみは駆け寄ってきたそらの腕をバンバン叩きながら笑い、涙をぬぐう。
「そらちゃんって、もしかして天然なの?」
「え、何で?」
そらは驚いた。何か変なことを言ったか、思い出してみる。
「言ったじゃん。ミサンガ切っちゃったら元通りだから、今貰ってもさ、現実に戻ったら結局またそらちゃんのバッグの中だよ」
「あ、そっか」
全く気付いてなかった。そうじゃん。
そらが気付いたのを見て、うみはまた笑う。
「昨日もさ、ほら、海にはサメが!!って言ってたし」
「ちょ、ちょっと!」
そらは急に恥ずかしくなって、自分とうみの間を手で遮った。顔の熱さから、赤面していることを自覚した。うみはまだ笑っている。
「それでね、うち笑い堪えてたの!でもそらちゃん、ぜんっぜん気付かないし!」
不思議とそらはうみに笑われていることに対して嫌悪感がなかった。好きな人を笑わせることができたことで、恥ずかしさの内に嬉しさを感じていた。
「で、結局何するの?雨だから室内でできることする?」
そらは話題を無理やりそらした。
これ以上バカにされたら、さすがにはずかしい、、、。
「うーーん」
うみはおもむろにスマホを取り出し、何やら操作し始めた。
「15時くらいにぃー、、、」
「うん?」
「雨止むらしい!それまで校舎内で遊ぼ!」
そらは今日の朝の準備をしながら、横で流れていた天気予報を思い出してみる。
「今日は一日中雨だって、天気予報でやってたけど」
「のんのんのん」
うみは得意げにスマホをそらに見せてくる。そらはそこに書かれた水色のゴシック体を声に出す。
「ゼッタイ当たる、、、!ウェザー・ウェザー・マサコ、、、。え?」
「これ、ホントによく当たるから!」
「ウェザー・ウェザー・マサコって誰?」
「え、知らない」
めっちゃ怪しいな。
そらもそのアプリを調べてみた。利用者は100人以下と表示されている。
「全然使ってる人いないんだけど、、、」
「あのね!」
うみはそらに指を向けた。その顔は自信に満ちている。
「これは知る人ぞ知る、天気予報アプリなの!特別にそらちゃんにも教えてあげてるんだから!」
うみにスマホを奪い取られ、勝手にインストールさせられてしまった。濃い紫色のアイコンが非常に目立つ。
「じゃあ一応信じるよ、、、」
そらは諦めてうみに従い、15時まで校舎内で時間を潰すことにした。
15時までは2時間あったが、それはあっという間に過ぎていった。
「好きな曲、爆音で流そう!」
二人は放送室へ向かい、流している音楽を止め、自分のスマホにプラグを差し込んだ。二人の好きな曲を入れたプレイリストを作り、音楽を流した。
「次は教室水浸し!」
二人はうみのクラスに向かう。教室の前に設置された水道でバケツいっぱいに水をため、教室に撒く。机も椅子も、書類も黒板も、すべてが濡れていく。何度も何度も撒くため、水が教室からあふれてきてしまった。
「黒板に絵描きたい!」
今度はそらの教室へ。二人で好きなように黒板にチョークを走らせていく。途中でネタがなくなり、絵しりとりもした。
「歌おう!」
再び放送室へ。うみがマイクにプラグを差し替え、そのまま歌い出した。そらは音楽室からマラカスとタンバリン、ビブラスラップを持ってきて、うみの歌に合わせて色々と鳴らしていく。
「次は、、、!」
うみの発想力は底を尽きなかった。うみの自由気ままな行動に、そらはついて行くのがやっとだった。どれも普段ならできないことで、少しの罪悪感がありながらもそれを圧倒的に凌駕するワクワク感がたまらない。そらは久しぶりに心から笑った。
「上履きを体育館の天井に当てたい!」
二人で上履きを思いっきり上に蹴り上げていると、そらのスマホのアラームが鳴った。
「あ、15時だ!」
そらは体育館の窓を開け、外を確認する。
「止んでる!」
「うそでしょ?」
「ほらね!これがマサコの力!」
うみはそう言ってにたりと笑うと、そらの手を引いて昇降口へと走る。
「で、今日は何するの?」
そらの質問に、うみは笑って答えた。
「今日はね、街の探検!」




