小休止
やっぱり私の出発は雨になった。
別に昨日の時点で今日が雨だとかいう天気予報を見たわけじゃない。私のこれまでを考えれば、この天気は当たり前なのだ。どこにいても、なにをしても、結局はその人の本質は変わらない。気付けばいつも同じ結果だけが残る。
電車はあと2分でやってくる。ホームに屋根すらないこの駅で電車を待つことも、目の前の森に不気味さを感じ、早く電車が来ないかと思うことも、もうない。後ろから風が吹いて、私の傘が少し揺れる。露先からぼろぼろと大きな雨粒が落ちていく。
最初は本当に楽しかった。それまでの私には到底想像もできないような、本当にきらきらした日常だった。でも今考えると、そんなものはなくてもよかった。あっけなく落ちれたはずの高さは、これまで耐えてこれた高さは、その時の私には怖すぎた。
『まもなく1番線、電車がまいります。危険ですので、、、』
静かな駅に消え入りそうなかすれたアナウンス。この声もこれが最後だ。電車に乗り、手前のソファに座った。目の前には森がある。私は思わず顔を背けて後ろを向き、街の方を見た。電車に乗る時はいつもこうだった。雨で濁った景色に、この街で一番きれいに見える海はない。街並みは遠くなるほど灰色にまみれ、建物同士の区別もつかない。
ふと、あの子の顔を思い出す。こんなことになって、あの子はどう思っているだろう。怒っているだろうか。泣いているだろうか。それとも、こんな私を笑っているだろうか。
電車がトンネルに入り、ごうっという鈍い音と共に、目の前が暗くなった。窓がガラスのようになり、私に私の顔を見せてくる。
「おまえは結局、どこまで行ってもこうなのだ」
と窓に言われているようで、前を向いた。そこにも窓。今度は全身が写る。私は仕方なく目を閉じた。
今更自分を見るなんて、死んでもごめんだった。




