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海とミサンガ  作者: 深田おざさ
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全校集会ー谷崎勝吾(2)

「おせぇぞ谷崎ぃ!!」

 生徒指導の福本先生にどやされながら体育館に滑り込んだ勝吾は、既に体育館にいた全生徒の注目を浴びた。

 一緒に屋上にいたことを悟られないように、勝吾はそらと時間をずらして入場した。そらは幸い間に合い、合流して体育館へ入場で来たものの、2つ前の勝吾のクラスは既に体育館にいたのだ。

「さーせーん」

 勝吾はそう言いながら自分のクラスに合流し、自分の列に加わった。

「ほいよ、お前の」

「マジで助かった。施錠間に合わないとこだったわ」

 前に座る(せき)雄大(ゆうだい)が、勝吾に彼のバッグを渡した。

 勝吾はそらとタイミングをずらしたところまでは良かったものの、教室に着くころには施錠されてしまい、荷物を教室に取りに行くのは間に合わないと感じた。そこでなにかと仲の良い関に連絡し、荷物を持ってきてもらったのだ。

「おいー、福本に自首しろよー」

周りにいる友人にいじられ笑われる勝吾。勝吾はそらとは違い、男女ともにふざける仲が多い。彼が違和感に気付いたのは、関の頭をひっぱたいてからだった。

「あれ?なんでゆーだいが俺の前?お前となりだろーが」

「え、だって立花(たちばな)さんいるじゃん」

 あ、そっか、そうだ。

 関の言葉を聞いた瞬間、勝吾は思い出した。今日転校してきた彼女のことを。

 この高校では、体育の時間以外は男女混合の出席番号順2列である。今までは隣に関がいて、集会中もふざけることができた。今日からは勝吾と関の間に一人入ることになり、勝吾のとなりは変わる。しかし勝吾はそのことに不満はなかった。

「あ、おかえりー」

 後ろで葉山の声が聞こえ、勝吾はそちらに目をやる。大瀬良(おおせら)杏奈(あんな)として女優をしていた立花うみが、そこに立っていた。彼女は少し葉山と会話をしてから、こちらに向かってきた。

「あ、となり、俺っす」

 勝吾は自分を指さしながら、うみへ話しかけた。うみは一瞬だけ勝吾の髪を見て、

「よろしくねー!」

 と笑いかけた。

 勝吾の髪は真っ赤な短髪。奇抜なその容姿は、色々な意味で注目を浴びるのだ。そして男子の中でも人一倍大きな体は、初対面ならばほとんど誰でも一歩下がってしまうだろう。おまけにうみは女子の中でも身長は小さいほうなので、余計に勝吾に驚くだろう。

 うみは動揺もせずにすぐに腰を下ろし、勝吾もつられて腰を下ろす。

「立花さん、こいつうるさいから、代わりたかったらいつでも言っていいっすよ」

 関はここぞとばかりにうみに話しかけた。勝吾はおい、と関の背中を小突く。

「ふふっ。ありがと」

 テレビ越しで見たままの笑顔に、勝吾は感激した。

 マジでホンモノだ。俺めっちゃついてるな!

 勝吾は初めて、自分の谷崎という名字に感謝した。


「、、、以上です」

 拍手。

 長い校長の話に退屈していつの間にか意識が半分ほど飛んでいた勝吾は、全校生徒の拍手で目を覚ました。いつも話している関の背中にちょっかいを出しても反応が返ってこなくなったので、仕方なくじっとしていたのだ。

「寝てた?」

 拍手の最中、うみが笑いながら話しかけてきた。勝吾は頷きながらつられて笑う。

 なんだこれ、最高か?

 勝吾は今起こっていることが夢なのではないかと自分のふくらはぎをつねった。痛覚はある。

「ありがとうございました。それでは、全校集会はこれで終了になります。何か連絡のある先生はいますか」

 そのアナウンスと共に緊張がゆるみ、あちこちでざわめきが立ち始めた。それと同時に勝吾の前に座っていた関がこちらを振り返った。

「なぁ、今日福本ずっといねぇ?」

 勝吾は体育館を見渡し、保険の先生が話しているのを腕組して聞いている福本を見つける。

「ほんとだ」

 実際、福本が集会にずっといることは珍しい。彼は集会が始まると体育館から出ていくのだ。そういう日は、必ず()()がある。

「荷物検査の日かぁー」

 勝吾は呟いた。福本が珍しくいる時、それは荷物検査がある日なのだ。彼自身が一人ひとりのカバンを見て回り、不要なものを学校に持ってきていないかを確認する。そもそもこの高校自体、まじめな生徒が大半なのでそのようなことをする必要はほとんどない。しかしたまに勝吾のような生徒がいるので、抜き打ちで検査が行われるのだ。

「お前、今日は持ってきてないよな?」

「ふつーに持ってきちゃいましたっ」

「やってんじゃん」

 勝吾は関にタバコを持ってきていることがバレている。しかし関はそのことを先生に通報する訳でもないので、勝吾は変わらずに持ってきている。

「今から?」

 不意にうみに話しかけられ、勝吾と関は驚いたが、共に頷いた。

「まぁ変なモノ持ってこなきゃ大丈夫だよ。こいつなんてさ、」

 関が余計なことを吹き込もうとしたので、慌てて小突く。

「ざけんなおら」

「ぃてっ」

 うみは勝吾と関のやり取りには触れず、へー。と言って横に置いたカバンに触った。

「はい、じゃ福本先生」

 保険の先生の話が終わると、福本にマイクが渡った。

「はいじゃあちょっといいかなー!」

 福本のドスの聞いた声が、マイクも通さずに体育館内に響き渡った。全体が静かになるのを待ち、沈黙の中でマイクをオンにする音がする。

「それじゃあ今から、例年通り今年の体育祭の団長発表と決意表明に入るんですが、やってる間に、僕の方から荷物検査やっていくんで、バックのチャック開けて、待っててくださーい」

 福本が話し終えると、またざわざわし始めた。

「では、団長の方々、登壇お願いしまーす!」

 アナウンスの声が響き渡るのと同時に、勝吾はポケットに入ったスマホの震動を感じた。先生にバレないようにこっそり見ると、それはそらからの通知だった。

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