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第20話、村のクソババアは優秀な魔術師。年齢感じない


 野菜を取り終わり、ルフトとちょっとだけ気まずい雰囲気になりながらも、ルーナは全く気にする事なく教会に戻ろうとした時だった。

 大きな杖を持った一人の老婆がルーナに気づいて声をかけてきたのである。


「ルーナ、これから教会かい?」

「あ、くそば……いえ、おばあちゃん。そうですよー」

「なんじゃい綺麗な顔を作りお……ああ、なるほど、客人がおるから猫を被っておるのか」

「ええ、そうですよ……悪いですか?」

「ヒヒ、気持ち悪いったらありゃしねぇ……まぁ、良いんだがな。わしは気にせんよ」


 そのように言いながら気持ち悪く笑う老婆にルーナは一瞬嫌そうな顔をしながら顔を引きつらせていたのだが、すぐに笑顔に戻る。

 きっと、ルフトは目の前の老婆が何を言っているのか全く分からないのであろう。

 首をかしげながら二人のやり取りに視線を向けた後、老婆はルフトに目を向ける。


「この男かい?きょうらんって言っていた奴は?」

「いえ、彼は先ほど来たばかりの人質?です。クラウス様は教会でお休み中です」

「なるほど……この村も、そろそろ危ないかもしれんなぁ……わしらの隠れられる場所じゃったんだが……まぁ、運命ならば仕方がない事じゃ」

「……」


 そのように言いながら笑っている老婆に、ルーナは何も言えない。

 この村が何故閉鎖的で、誰にも知られない場所に居るのかすら、ルーナには理解出来ないのだ。

 老婆が言っていた。


「この村には結界が強くはられておるからの」


 強い結界と言うのはどのような結界なのか、ルーナにはわからない。

 ただ、外部の人間は簡単には入らせないように、人間ではなく、森の精霊たちが行っているらしい。

 数年以上の前に余所者として入り込んでしまったルーナはそこまでの事情を未だに知る事はないのだが。

 そして今年は二人の余所者が入り込んでいると言うのは、老婆にとっては一大事のような事らしい。


「前から聞きたかったんですけどおばあちゃん。この村ってどうしてこんなに閉鎖的で、隠れている感じなのですか?」

「その事情を知りたければ、サーシャに聞けばよい。サーシャなら質問すれば答えてくれるじゃろう。なんじゃ、聞いた事ないのか?」

「考えた事なかったから聞いた事ないですね、うん」


 他人事のように答えるルーナは本当に興味がなかったことなのだろうと、老婆は深くため息を吐く。


「……このクソ孫は興味がない事は全く聞かない性格じゃったな。はて、誰に似たのか」

「クソ神父に似たんですよ、クソババア」

「可愛く、『カルーナおばあちゃん』と言うんじゃクソガキ」

 

 キーッと叫ぶように言いながら、カルーナと名乗った老婆は怒りだす。


 カルーナ――この村の中では一番の年よりの老婆であり、ルーナにとっては本当のおばあちゃんのような存在でもある。

 現にカルーナはルーナの事を『孫』のように扱い、優しくしてくれる。厳しいところもあるのだが。

 ルーナとシリウスの二人は、そんなカルーナの事を『クソババア』と言う。

 この村に来た時から怒られいびられ、そして優しくされ、と言う三コンボを食らい、性格がねじ曲がってしまったからである。

 そんなねじ曲がってしまった性格になったルーナをいまでも可愛がっているクソババア、カルーナなのだが、彼女はルフトに再度視線を向けた後、ルーナに声をかける。


「あの男、何か魔術にかかっていなかったかい?」

「流石カルーナおばあちゃんだー……『魅了』にかかっていたと、クラウス様が言っていたんですよ。変な感じはしていたんですけどね」

「ふーん、『魅了』ねぇ……つけた相手はだれなんだい?」

「トワイライト王国の、召喚された聖女様らしいです」

「……『勇者召喚』か」


 カルーナはそのように言いながら苦い顔をしているようにも見える。

 嫌そうな顔をしつつ、カルーナは静かに息を吐いた後、ルフトに目を向けたと同時に、持っていた杖の先をルフトの額に当てる。


「意識が一瞬でぶっ飛ぶけど、若いから大丈夫じゃろ?」

「え、何を――ッ!?」

「あ」


 次の瞬間、小さく何かを呟いたと同時にルフトはその場にてぶっ倒れる。

 突然倒れた事で反応が出来なかったルーナは驚いた顔をしながらカルーナに目を向けると、カルーナは笑いながらルーナに向かって答えた。


「二度と魅了がかからないように、簡単な魔術を施しただけじゃ。一日寝てる事になるだろうけど」

「……流石、この村では優秀な魔術師だね、クソババア」

「この村ではじゃないわ、この世界で優秀な魔術師なんじゃとあたしは!」


 ハハハっと楽しそうに笑うカルーナの姿を見て、ルーナは静かに笑みを零した。


 カルーナ・エルシェンド――彼女は、嘗てこの世界を闇に染めようとしていた指名手配中の魔術師など、誰が想像するだろうか?

 ルーナですら、その事実を知らないまま、笑っているカルーナに向かって呟いた。


「流石クソババア。年齢感じさせない程、優秀だねー」


 のんきにそのように呟きつつ、ぶっ倒れてしまったルフトをどのように運ぼうかと考えるルーナだった。

読んでいただきまして、本当にありがとうございます。

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