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第14話、どうしてお礼を言われたのかわかりませんが、その目は反則だ。


「へー」


 国が滅びる、と言う言葉を聞いた所で、ルーナは全く興味がないかのような返答だった。

 一瞬驚いた顔をしてしまったクラウスだが、すぐにフッと笑うような顔をしながらルーナに返事をする。


「全く興味がなさそうな顔をしているな」

「クラウス様には申し訳ないのですが、興味と言うものがわかないです」

「そうか」

「……だけど、一つだけ思っている事はありますよ」

「思っている事?」


「――腹が立ちますね、その聖女様って。何様なんですか?」


 無表情のままでそのような言葉を返したルーナに、クラウスは驚いた。

 興味がないと言いながら、聖女の件についてはどうやら興味があるらしい。

 そのままルーナを見つめてしまったクラウスに対し、視線に少しだけ恐怖を感じたルーナは少し引いたような顔をしながら声をかける。


「な、なんですか……あれ、もしかして私、何か変な事を言いました?」

「……いや、だけど」

「だけど?」


「……腹、立っているのかって思ってな」


 聖女が召喚されて、周りが聖女を絶賛した。

 クラウスは間違っていたところを反論しただけなのに、全てクラウスの言葉は否定された。

 友人だと思っていた人たちは敵となった。

 家族たちも、自分の事を否定する存在が少しずつ出てきた。


 誰も、聖女と言う存在を、否定してくれなかった。


 しかし、閉鎖的な村で暮らしているルーナと言う存在は、その聖女に対して腹が立っていると発言してくれた。

 驚いた顔をしているルーナにクラウスは自分は間違っていないと言う事を改めて感じる事が出来た。

 いつの間にかクラウスは、ルーナに手を伸ばし、手を握りしめていた。


「く、クラウス様?」


 突然手を握られたルーナは驚くことしかできず、振り払う事も出来ない。

 強く、しっかりと握りしめられた手をどのようにしたら良いのかわからないルーナに対し、クラウスは一言、ルーナに告げる。


 

「ありがとう」


 

「……え?」


 何故お礼を言われたのか全く理解が出来ないルーナは呆然としながらクラウスに視線を向けていたのだが、いつも無表情な顔がこの時だけ優しい笑みを見せていた。

 好青年と言われそうなその笑みに一瞬驚いた顔をしてしまったルーナはその場から動けず。

 突然硬直してしまったルーナに首をかしげながらクラウスは彼女を見つめる。


 そんな二人のやり取りをシリウスはため息を吐きながら呟いた。


「……まるで、初心者同士の恋愛模様を見ているみたいだな」

『あら、二人とも初心者なんだから仕方ないわよ。お似合いの二人だと思うんだけどなぁ』

「俺は認めん」

『もう、少しは応援してあげなさい、シリウス』

「……」


 サーシャの言葉に舌打ちをしながら、シリウスはクラウスとルーナに視線を向けながら、考える。

 シリウスが考えていたのは、その『聖女』と言う存在だ。


「……まず、聖女の件だが、無意識に『魅了』を使っているのか、それとも意図的に『魅了』と言う魔術を使っているのか、が問題だな」

『意図的だったら?』

「性格悪い女だってことだろう。好きな男たちに自分だけを見るようにしているのだから」


 もし、無意識ではなく、意図的に『魅了』を使っているのであれば、相手はタチが悪い女だという事になる。

 それを考えると、これからのトワイライトの未来はない。

 クラウスのいう通り、このままでは間違いなく国が滅びると言って良いだろうと考えたシリウスはクラウスに問いかける。


「クラウス、それ以上ルーナを困らせるな」

「え、別に俺はお礼を言っているだけで……」

「まず手を放せ……それと、その聖女の件なんだが、どのぐらい魅了されてるんだ?」

「俺が国を出た時にはもう半分以上は……因みに第二王子、国王などは既に魅了にかかっている状態だった」

「国王までかかってんのかよ……厄介だな、おい」

「貴族は殆どかかっていると考えていい。性別関係なく……唯一、第一王子は留学中だから国には居ない」

「留学中?」

「隣の国にある学園に留学中だったんだ。だから、俺はその国に行こうとしていた」


 国の状況、聖女と言う存在がいかに危険だと言うのを知らせる為に――と、クラウスは話を続けた。


「行く途中で刺客に襲われてこのざまだ……簡単に蹴散らす事は出来たんだが、数が多かった」


 森の近くで襲われ、そして神父であるシリウスに会い、今に至るらしい。


「つまり、クラウス様はその第一王子って人に会う予定だったってこと、なんですね?」

「ああ」


 そのように発言しているクラウスを見た後、ルーナはシリウスに視線を向ける。

 ジッと見つめてくるルーナに対し、シリウスはその意味をすぐに理解し、返事をした。


「……お前の言いたいことはわかってるぞルーナ。わかった、何とかする」

「ありがとう、シリウス様!」

「と、言うわけだサーシャ、力を貸してくれるか?」

『ルーナとシリウスのお願いだもの。精霊を使って何とかコンタクトを取って見せるわ』


 フフっと楽しそうに笑いながら、サーシャはシリウスの頭を優しく撫でた後、ルーナとクラウスの二人に手を振ってその場から静かに消える。

 サーシャが消えた事で少し息を吸って吐いた後、シリウスはその場で身体を伸ばし、横になる。

 ルーナはクラウスから視線をそらし、気絶している男に目を向ける。


「少し肌寒くなってきたから、布団をかけないといけないな……」

「別に良いんじゃないか、風邪をひけばいい」

「いや、風邪ひいたら看病するのはボ……私なんですけど」


 クラウスとルーナのやり取りを耳から聞いていたシリウスは横になりながら聞こえないように静かに笑ったのだった。

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