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 私達はエルフの国を出てからいろいろな町を巡った。


「──クリス、王国の騎士を辞めちゃって良かったの?」


 旅の道中で、私はクリスに聞いた。


「ああ、前の戦争では戦い過ぎたよ。これからは剣以外の道を探そうと思うんだ」


「ふぅん。戦場では『地獄の番犬』と恐れられたあなたが、丸くなったものね」


「……もう、誰も殺したくないんだ。それより、ルィンはエルフの国を出て良かったのかい?」


「うん。いいの。エルフの国は排他的でクリスには住みにくいと思うし」


「オレはルィンのためなら我慢するよ?」


「嫌だよそんなの。それに私ももっと自由に暮らしたい」


「そうか、分かった。どこか自由に暮らせる場所を探そう」


 そうして、私達は人間の国で治安の良さそうな町を見つけると、家を買って住み始めた。


 クリスは鍛冶見習いとして鍛冶工房で働き、私は織物を織る仕事に就いた。


 町の人達はみんな、エルフの私にも優しく接してくれる。


 そして、教会で──。


「──クリス、あなたはルィンヘルを妻とし、死が二人を分かつまで、妻のみに添うことを誓いますか?」


「誓います」


 クリスはそう言うと、私に微笑みかけてくれた。


 彼は黒いタキシードを着ていてとても凛々しい。


 私は彼とは対照的に、純白のウェディングドレスを着ている。


「ルィンヘル、あなたはクリスを夫とし、死が二人を分かつまで、夫のみに添うことを誓いますか?」


「誓います」


 私もクリスに微笑みかける。


 式の前、彼が私のドレス姿を見て、何度も「綺麗だよ」と言ってくれたのを思い出した。


「では誓いのキスを」


 そう神父さまが言うと、私達はお互いを見つめて、唇を重ねた──。


「おめでとう! クリスさん!」


「おめでとう! ルィンヘルさん!」


「おめでとう! 二人とも!」


 教会を出ると、町の人達が私達を祝福してくれた。


 穏やかな町、優しい人達、良い環境に恵まれて私はとても幸せだった。





 十ヶ月後──。



「──ふー、ふー、ふー」


「ほら、ルィンヘルさん、頑張って、もう一息だよ」


「はい……! ふー、ふー、ふー」


 町の産婆さんが家に来てくれて、私は出産に臨んだ。


 陣痛が始まってから、既に八時間経っている。


 噂には聞いていたけれど、出産がこんなにつらいなんて!


 「んーーーー!!」


 私は力強くいきんだ。すると──。


「んぎゃー! んぎゃー!」


 部屋にけたたましい声が響いた。


「ルィンヘルさん、産まれたよ! 元気な女の子だよ! おや、もしかして……」


「んーーーー!!」


 私は再度いきんだ。すると、また産声が轟いた。


「まあ、ルィンヘルさん。双子だったよ! どちらも女の子。どちらも元気な子だよ」


「はぁ、はぁ……。まあ。本当に……?」


「ほら、赤ちゃんだよ」


 産婆さんは、私に二人の赤ん坊を渡してくれた。


 私は双子を抱き抱える。


「ああ、何て愛しいの。あなた達は私の宝物よ」


 そこへ奥で控えていたクリスが部屋に入って来た。


「ルィン。よく頑張ったね」


「うん。クリス、見て。双子よ。どちらも女の子」


「ああ、なんて可愛いんだ。すごいよルィン! 本当に本当にありがとう」


「ふふ。良い家族にしようね」


「ああ。勿論だ」


 私達は、双子にフィアとアリアと名付けた。


 二人はハーフエルフで、エルフの私と違って成長は早く、人間と同じようにすくすくと育って行った。





 一年経ち──。


「見て! クリス! フィアが立ったわ!」


「フィアー! 父さんは嬉しいよぉぉぉ」


 それを見て触発されたのか、アリアも──。


「見て! クリス! アリアも立ったわ!」


「アリアー! 父さんは嬉しいよぉぉぉ」


「ふふ、親馬鹿ね」





 三年経ち──。


「ママ、ひ!」


 突然、フィアが私に言った。


「どうしたの、フィア。 ひ、て何?」


 すると、フィアは指先から火を出して見せた。


「な! それは火の精霊!? フィア、まさかあなたは精霊の加護を? すごいわ!」


 と、私が驚いていると、フィアに続いてアリアも言い出した。


「ママ、かぜ!」


「え? どうしたの? アリア?」


 すると、アリアの指先から突風が吹いて来た。


「な! それは風の精霊!? アリア、あなたもなの!?」


 エルフの中にはごく稀に、精霊の加護を授かる者がいる。


 その割合は1%にも満たず、私も今まで数人しか出会ったことがない。


 それなのに私の娘は二人とも精霊の加護を授かってしまったようだ。


 二人は天性の精霊使いなのだ。

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