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コント「誘拐犯と我が子をさらわれた母親の電話」

プルル…


母「はい、もしもし」


誘拐犯「お宅の息子は預かった」


母「え?」


誘拐犯「驚いたか。返して欲しければ……」


母「……」


誘拐犯「おい何を黙ってる」


母「ちょっとスマホいじってて」


誘拐犯「我が子さらわれてスマホなんかいじるな!」


母「ごめんなさいね。それで?」


誘拐犯「返して欲しければ身代金1000万円用意しろ」


母「分かったわ」


誘拐犯「よし、受け渡し方法は……」


母「もう渡したわ」


誘拐犯「え、もう!?」


母「今時はスマホですぐ振り込めるから」


誘拐犯「スマホって凄いなぁ」


母「まあウソだけどね」


誘拐犯「ウソかよ!」


母「信じちゃった?」


誘拐犯「信じたよ。スマホの凄さに感動してたのに……」


母「ごめんなさいね」


誘拐犯「いいか、ふざけてると息子を傷つけてやるぞ!」


母「やめてちょうだい」


誘拐犯「俺は怒ってんだ。やると言ったらやる」


母「やめた方があなたのためって言ってるのよ」


誘拐犯「……俺のため?」


母「実は私の息子、空手の達人でね」


誘拐犯「なんだと!?」


母「瓦割りが三度の飯より好きで」


誘拐犯「好きすぎだろ」


母「そのうち色んな家の屋根の瓦を割るようになって」


誘拐犯「すごい迷惑!」


母「ついには屋根ごと壊すようになって」


誘拐犯「俺より犯罪者じゃね!?」


母「しかも嫌なことがあるとすぐ暴れる癖があって」


誘拐犯「え?」


母「特にどこかに閉じ込められるのが大嫌いなの」


誘拐犯「ええ!?」


母「早く謝らないと命にかかわるわよ」


誘拐犯「すぐ謝ってくる!」


母「まあウソなんだけどね」


誘拐犯「ウソかよ!」


母「ごめんなさいね」


誘拐犯「さっきからウソばかりついて……可愛い息子がどうなってもいいのか!?」


母「確かに可愛いわね」


誘拐犯「だろ?」


母「目に入れても痛くないぐらい」


誘拐犯「よく聞く表現だな」


母「実際入れたこともあるし」


誘拐犯「あるの!?」


母「こういうのって実際やらないと意味ないでしょ」


誘拐犯「そうかなぁ。で、どうだったの」


母「痛かったわ」


誘拐犯「あ、やっぱ痛いんだ!」


母「だけど入れるのは案外楽で、問題は出す時」


誘拐犯「入れるの楽なんだ」


母「出す時は目に引っかかっちゃって大変だったわ~」


誘拐犯「想像するだけで痛いよ」


母「まあウソなんだけどね」


誘拐犯「ウソかよ! また引っかかったよ!」


母「ところであなたなんで誘拐なんかしたの」


誘拐犯「決まってんだろ。金が欲しいからだよ」


母「お金が欲しいなら真面目に働けばいいじゃない」


誘拐犯「真面目に働くなんてバカらしくてやってられっかよ」


母「確かにそれは分かるわ」


誘拐犯「へ?」


母「誘拐の味を覚えちゃうと働くなんてバカバカしいわよね」


誘拐犯「誘拐の味……?」


母「昔ある国の大統領を誘拐して10億ドルゲットした時は笑いが止まらなかったわ」


誘拐犯「大先輩でしたか!」


母「あなたも頑張ってね」


誘拐犯「はい、いつか先輩のような誘拐犯になってみせます!」


母「まあウソなんだけどね」


誘拐犯「またウソかよ!」


母「ごめんなさいね」


誘拐犯「もう息子は無事じゃ帰れねえぞ!」


母「やめてちょうだい」


誘拐犯「もうおせえよ!」


母「兄が弟を殺すなんて残酷すぎるわ」


誘拐犯「どういう意味だ?」


母「告白したいことがあるんだけどいいかしら?」


誘拐犯「どうぞどうぞ」


母「実は私、今あなたが誘拐してる子を産む前にもう一人子供を産んでたの」


誘拐犯「そうだったのか」


母「だけど育てる自信がなくて、ある施設に預けることにしたの」


誘拐犯「そういうこともあるんだな」


母「私はもう二度とその子に会わないと誓った……。だけどどうしても会いたくなってしまった」


誘拐犯「分かるぜその気持ち」


母「私は探偵を雇って、その子が今どこでどうしてるか捜したわ」


誘拐犯「そしたらどうなった?」


母「なんとその子、誘拐犯になってたの!」


誘拐犯「なんだって!? それってまさか……」


母「そう、あなたは私の息子なのよ」


誘拐犯「なにいい!?」


母「大きくなったわね……」


誘拐犯「母ちゃん……」


母「声を聴くだけで分かる。立派に育って嬉しいわ」


誘拐犯「ごめんよ、誘拐犯になっちまって……。俺、俺……」


母「まあウソなんだけどね」


誘拐犯「ウソかーーーい!!!」


母「いいリアクションだわ」


誘拐犯「信じちゃったよ! 俺の涙を返せ!」


母「ごめんなさいね」


誘拐犯「もう許さん! こうなったら……!」


母「……」


誘拐犯「あれ? 子供がいなくなってる!」


母「どうやら救出されたみたいね」


誘拐犯「一体何が起きてる!?」


母「最後にウソじゃない本当のことを教えてあげる」


誘拐犯「教えてくれ!」


母「実はこの電話があってすぐ、私はスマホで警察の知り合いにメールして捜査を依頼したの」


誘拐犯「え」


母「私はウソであなたの気を引いて、その間に警察はあなたの居場所を特定したってわけよ」


誘拐犯「全て策略だったわけか……」


母「だけどあなた、素直で根はいい人だと思う。罪を償ってやり直して」


誘拐犯「フッ……ウソでも嬉しいよ」






4月1日ということで嘘だらけのコントとなりました。

楽しんで頂ければ嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言]  まあ、ウソなんだけどね →ごめんなさいね  が、楽しめました。  パターンにするのは、リズムが生まれていいですね。
[良い点] 一読後に読み返してみますと、冒頭の部分に後の伏線があったのですね。 お母さん、黙ってスマホを弄っていたと思ったら、そういう事をしていたのですか。 お母さんの当意即妙なウソが軽快でテンポよく…
[良い点] 特に瓦割のくだりが面白かったです。 息子、もの凄い勢いで瓦割ってますね。 それと最後のオチの台詞で、綺麗にまとまっているのが良かったです。
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