第07話 それは秘密です
律子と東名は資料を見ながらこれからの事を話し合った、当然期間が延びる事による料金や、通勤中の尾行をするのかしないのか、当然話は平行線になる事もあったが、東名の作成した資料の説得力によって律子が押し切られる形で話し合いは終わった。
「では、このプランで再びタケミチ様を監視いたします」
「はい、よろしくお願いします」
律子は東名に頭を下げ、席を立とうとしたがどうにも腑に落ちないことが有り、顔を上げて東名に問いかけた、
「最後に一つお聞きしたいのですが、よろしいですか」
「はい、なんでしょうか」
「この資料は大変素晴らしい物でしたが・・・、その、変な話ですが出来すぎていると思うのです、東名さんはどうやってこれだけの内容を調べたのですか」
律子の問いに東名は透かさず、調査方法についてはお答えしかねます、と答えた。
律子は東名の言葉を受け少し首を傾げたが、答えられないこともあるか、と無理やり自分を納得させたのか細かく頷いた後で東名に向き直った、その姿を黙って見ていた東名が再び口を開く、
「不思議に思うのも分かります、分かりますがそれをお答えすることは出来ません、ですが、聞き込み等せずにこれだけの資料を作れる探偵事務所は恐らく他には無いでしょう、今回は資料の作成に時間がかってしまいましたが、その分ご満足いただける内容になっていると自負しておりますが、どうでしょうか」
「資料には何も問題は無いです、あとは・・・その・・・」
律子は口籠りながら核心を突いてくる、痛いほど刺さる言葉に東名は苦笑しながら、
「お任せください、ですがこればかりはお相手の都合もありますので」
「次にいつ二人が会うのはいつごろになるでしょうか」
「はい、前回娘さんと鉢合わせたことで、後ろめたさが沸いたのかもしれないですね、あの日以降は特にお伝えするような動きが有りません」
「わかりました、それでは失礼します」
再び頭を下げた律子は、今度は席を立ち事務所を出て行った。