第13話 朝ちゅん
「・・・で、カギはここにいつも入れているから、外に行くときはカギをかう事」
東名は碧に事務所の触って良いところといけない場所、それと設備の説明を済ませた。
「それと、ここに入っている資料は個人情報にはあまり関係ないが、写真に撮ってSNSにアップしたりするなよ」
「そんなことはしないよ、そんなことに何の意味が有るの」
碧が呆れたように答える、
「まあ普通はしないな、だけど俺が困るってことは結果的にお前の為になるだろ」
碧はぽんと手を叩くと目を見開いて大きく頷いた、どうやら気付いていなかったようで東名は余計な事を言ってしまったと顔を顰める。
「それでもお前はそんな事はしないだろう、そうでなければここには泊まらせないよ」
「へー、ほとんど初対面でもそこまで私を信用してくれるんだ」
「こういう仕事をやっているから、人を観察するのは得意なんだ」
「ふうん、そういうものなんだ」
碧はわざわざそんな事はやらないと思っていたのは確かなのだが、東名にそこまで人を見る目が有るのかと少し疑問に思った、とはいえ無関係どころか不利益にしかならない自分が行先も無く困っているのを助けてくれるという事は、東名の観察眼を認めるかは置いておいて、人並みのやさしさは持っているんだと思った。
「まあいいわ、泊めて貰うんだしね」
「そう言う事だ、あとエアコンはつけっぱなしでもいいが電気だけは消しておく事、それじゃあ俺はこれで帰るから、俺が明日来たら出て行ってくれよ」
「わかった、おやすみなさい」
「おやすみ」
そう言って別れた二人だったが、そんな挨拶する間柄じゃなかったと気付きしばらくの間悶々とした。
翌朝、差し込む日差しで目を覚ました碧は、いつもよりも寝過ごしていたことに気付き、使っているソファの寝心地の良さに驚愕した、
「これじゃあ居眠りしちゃっても仕方が無いかぁ」
そんな独り言を言いながら伸びをして事務所を出て行くために荷物を纏めていると、何やら話しながら階段を上ってくる声が聞こえてきた。
扉に近付き話し声に聞き耳を立てると、声の主は一人は東名で、もう一人はよく知っている人の声だった。