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炎上舞台  作者: 一桃 亜季
6/25

死の淵

偽りの神々シリーズ

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」


シリーズの4作目になります。


        ※


 妹が生きるための衣食住の算段をしているころ、兄は生死の境を彷徨っていた。命が繋がってこそ、必要となってくる衣食住だが、兄サナレスは生死の淵にあって、あえて衣食住に意識を向けていた。


 そこは煉獄。地獄の炎に取り囲まれた中、彼の身体は焼け焦げて朽ちつつある。彼と同じように炎で焼かれた人々は、真っ黒な煤のようになりながら、その痛みにのたうちまわって悲鳴をあげている。


 サナレスは座禅を組んでそこに居た。考えることは、別世界にいる自分の日常。

 この地獄の底を実体験として感じてしまったら、その時から自分は痛みと恐怖にとりつかれ、燃え尽きてしまう。つまり幻に取り込まれてしまうと感じたサナレスは、あえてもうジタバタと出口を探して彷徨うことをやめ、自らの精神を統一させ始めた。


『目に見えるものに騙されるな』

 呪術は幻覚だといった講師の名前を自分はしっかり覚えている。


 リトウ・モリとの出会いは、サナレスにとっては貴重な経験だった。

 彼は科学の素晴らしさを力説し、呪術を使わずとも人の可能性が無限大にあることをサナレスに教えた。

 生涯で初めて恩師と呼べる、尊敬できる人だった。


 彼の言葉を自分のものにし、サナレスは故郷ダイナ・グラムを思う。

 衣食住が大切だと教えたのもリトウだった。

 何気ない生活はいつもそこにあって、人は幸せだと感じにくい。

 けれどそれを失ってしまった時、瞬時に人は頭を打って後悔する。


 自室の机で本を読んでいるときの感覚、炉端で食べ物を買い食いしているときの感覚、妹に会うために馬を飛ばしているときの感覚。


 サナレスはすべての日常で感じていた、肉体の感覚を自分の中に復元していく。身体が覚えているものに、魂が付随していく。


 それはまるで金縛りにあった身体を動かすようなもどかしい作業だった。しかもひとつ間違えると、この世界に飲み込まれて、魂が生涯救われることのない炎に焼かれ、消失するだろう。


 けれど先ほどまで、出口を探して歩き回っていたときよりも、サナレスの心は穏やかになった。

 いつの間に自分はこんなにも大切なものを抱え込んでいたのかと、懐かしく微笑む。


 手放してしまったら終わりだった。

 自分はそんなに諦めがいい方ではない。

 サナレスは固まった体の身体能力を記憶の中から構築していった。


『全てはまやかし』

 懐かしいリトウの眼鏡姿の顔が思い浮かんでは消えていく。


 愛しいムーブルージェを失った時、サナレスは死の淵の対岸を彷徨った。


 ーーけれど今、その淵で彼女が自分を呼んでも、応えられないと背を向けるだろう。

 彼女はこんな自分を許すだろうか?

 彼女を失ってから生き続けた自分の心変わりを、ーー彼女は許してくれるだろうか?


「炎上舞台6」:2020年10月19日


 リトウ・モリ。

森利刀は、「オタクの青春は異世界転生」で現在主役張っていますが、

このファンタジー、一応異世界転生ものです。


どう繋がるのかは後々わかるのですが、長編です。

お付き合いよろしくお願いします。


皆様の反応が励みになるので、応援よろしくお願いします。

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