表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎上舞台  作者: 一桃 亜季
21/25

ラン・シールドの総帥

この章はちょっと早めに投稿します。

次が押しているので、気張って進みます。

応援よろしくお願いします。


偽りの神々シリーズ

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」


シリーズの4作目になります。

「ウインジン、また奴等が人間を引っ張り込んだようだ」


 部屋の中に入ってきたのは、どうやら女のようだった。見つかったら殺されると穏やかではない忠告をされたリンフィーナは、寝台の下で息をひそめる。


 ウインジンというのが、この青年の名前らしい。


「姉上、最近は悪戯が過ぎます。このままでは我等一族が見つかるのは時間の問題。こんなことをして何の意味があるのです?」

「そんなこと知らぬわ。私が止めようがあいつ等ももはや限界なのだろう。このままでは人の形を保つこともできぬのだからな」


 青年がため息をもらす。

「憂さを晴らしているのは、民だけではないのでしょう? 貴族達もまた限界を感じている」

 女は、青年の意図するところを組んで黙る。


「それはそうと姉上、私がお願いした頼みごとは、聞き入れてくださいましたか?」

 更に部が悪いことを聞かれたのか、女は黙ったままでいる。


「ラーディアの姫君をどうこうしようなどと、思いとどまってもらえねば、ラーディア一族を敵にまわすこととなりましょう」

「しかしウィンジン、あれを復活させるわけにはいかぬ。その前に息の根をとめてしまえばいいのだ」

「まだ覚醒すると決まったわけではありません」


 急に自分が話題に上ったことを自覚したリンフィーナは、その会話の不可解さに息をつめる。


「我等には魔女に対する積年の恨みがある。あの者さえ出現しなければ、銀髪である容姿、これほど疎まれる事もなかったのだ」


 ウィンジンはわざと自分の話をしているのだと、リンフィーナは悟った。魔女の話がどうというのは与り知らないことだけれど、リンフィーナを襲った、いや襲わせたのは、他ならぬ青年の姉なのだと。


 アセスと自分を襲った敵が目の前にいる。そう感じると胸の中がどくんと高鳴った。


 あのとき襲撃を受けなければ、自分の恋人は魔道士になることもなく、今も自分の傍らにいたかもしれない。今自分達を引き裂いた敵が目の前にいるのだ。敵を討ちたい衝動がリンフィーナの中で首をもたげた。


 しかし、本来であればリンフィーナの首を一番に差し出そうはずの弟が、自分を隠してくれている、この事情がわからない。


 恨み、という言葉だけが、キーワードのように耳に入るが、自分自身身に覚えなど全く無かった。


「もし、あの魔女がいなければ、私たちがこうなることも、オマエがここに閉じ込められる事もなかった。生涯許すことなどできぬものを、復活するなど、ふざけたことだ」


 女の怒りは、言葉とは裏腹に悲しげに響く。


「それでも私はあの魔女を恨んだことはありません、姉上。実のところ彼女の気持ちが一番わかるのは、我等が一族ではございませんか? そしてその復活も、彼女が望むところではなく、運命なのだとしたら……」


「そんな運命あってなるものか! お前は……」


 優しすぎるのだ、という呟きが聞こえた気がした。


 リンフィーナは身を隠していることができなかった。事の真相に近づきたい。自分を襲った理由を問い正したいという思いがあふれ、女の前に姿を現した。


「どういうことなのか、説明してちょうだい」

 怒りと言うよりは、むしろ焦りから出た行動だった。喜怒哀楽が激しいリンフィーナの感情が、彼女の中でふつふつと沸いて出てくる。

 突然姿を見せたリンフィーナに、女は一瞬言葉を失って目を見張った。


 しかし次の瞬間だった。


 慌てた青年がリンフィーナを庇おうとするが、それよりも早く女の剣がリンフィーナに切りかかった。


「ラーディア」


 女は剣呑な目でリンフィーナを見据える。最初の攻撃を、リンフィーナは自らの剣で防いだが、圧倒的な力の差に、柄を握る手がじんじんとしびれている。


「私はリンフィーナ・アルス・ラーディア。どういう理由で私を狙うの?」

「飛んで火にいる夏の虫とはおまえのことだ。せっかくラーディオヌの総帥に助けてもらった命、わざわざ捨てにきたというか」


 女が二度目の剣を振り下ろしてくるのを、リンフィーナはベットの御簾をつかみながら、ひらりと交わした。


「いけません、姉上!」

 舌なめずりしながら、獲物を追い詰めようとする姉を弟が制止しようと声をあげる。

「よくものこのこと、私と弟の前に顔を出せたものだ」

 激しい怒りが暴走し、一刻もはやく処分したいと女の気迫が伝わってくる。


 彼女から感じ取れるのは、あきらかな憎しみだった。自分の知らないところで、これほどまで人に憎まれていようとは、リンフィーナには合点がいかない。合点がいかないものを、はいごめんなさいと殺されてあげるほど、リンフィーナもひ弱ではなかった。


 柄をしっかりと握りなおし、リンフィーナも身構える。

 二人の剣が再び合間見えようとしたそのとき、青年が何かをつぶやき、二人の剣は宙を舞った。


「ウィンジン!」

 邪魔をしたのが弟だとわかった姉は、咄嗟に叱咤するではなく、狼狽した。蒼白な顔の青年は、姉のほうをじっと見据え、ただ首を振った。


「おまえ、……おまえ大丈夫なのか!?」

 青年の体調があまりにも優れない様子なので、リンフィーナも戦意を無くして立ちすくむ。


「ウィンジン、……ウィンジン」

 何度も名前を呼び、心配で側に駆け寄ろうとする姉に、青年は力なく微笑み返す。

「私は大丈夫ですから姉上。彼女に剣を向けるのはやめてください」


 リンフィーナも青年を見つめる。なぜこの女に憎まれるのかもわからなければ、どうして弟の方に庇われるのかもわからない。


 不安そうな顔になるリンフィーナにも、青年はたおやかに笑って見せた。

「大丈夫です。貴方が心配することではありません。これは私たちの諍いなのですから。巻き込んで申し訳ありません」


「ウィンジン、お前……」

「姉上が冷静でなく、誰がラン・シールドを統治するのですか? 我が総帥」

 弟の言葉にリンフィーナは絶句した。


 それを尻目に、二人は寄り添い合い、姉が弟の身体を支える。


 よく見ると二人は酷似していた。激しい気性を持つ姉の顔と、その弟の顔は、性格の違いさえなければそっくりである。


 双子――。


 リンフィーナの方を、二人で見つめる姿は、鏡でも挟んでいるかのようだ。


「私たちは、ラン・シールド一族の総帥。ウィンジン・イドゥス・ラン・シールドとユヴァス・イドゥス・ラン・シールド。姫君に働いた無礼、姉に代わって謝罪する。そしてあなたの疑問は、私達ではなく、あなたの一族の総帥に訊ねたほうがいい」


「ジウス様に――?」


「私たちと同じく、長寿なのは、今はもう彼くらいのものでしょうから。そして貴方の出生に関わるすべても、知っていらっしゃるのは私たちではなく、貴方方の氏族だ。すべてを明らかにして欲しいのは、むしろ我等の方なのです、姫君」


 求めた答えが、自分の一族にあるだなんて、にわかには信じることができなかった。しかし自分を見る四つの赤い瞳には、偽りが入る余地など無く、まっすぐに自分を捕らえている。


 確かに何時も、何時も、自分は刺客に狙われてきた。それは年を重ねるごとに回数が増え、相手も想像を絶するほど強大だったりする。


 けれどその理由が自分の出生と関係するなんて、初耳でしかなかった。あまりにも荒唐無稽な話である。


 それなのに。


 自分だけが知らされていないだけで、一族の父であるジウスが、すべてを知っている、と言うのだ。

 サナレス兄様も知っているというのだろうか。


 膨らむ疑問に、今は誰も答えるものがない。


「貴方は気をつけなければならない。貴方の出生を良く思わないものは、我が氏族だけではない」

 ただ言葉が重くのしかかった。

「炎上舞台21」:2020年10月23日

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ