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出航!いざ ベーレ国!!



収穫祭は 大成功だった。

マスマルの事もあったが みんなと気持ちを交わすことができるようになっていた。

人間たちは 復活してから拠点でのんびり暮らしたいというものもいたのだが

生き返った今だからこそ、成し遂げたい事ができたものや

残した家族が心配なものや 目的を道半ばで断念したものなどがいたことも知った。

そして この拠点ではコットンなどの布がないので、コットンの種と布を調達に行きたいとも考えていた。

そこで船を作ってベーレ国に行ってみることにした。


ゴブリンの塔に残されていた日記には船のデザインのイラストが添えられており

そのデザインをもとに 数人の人間が船を土魔法で造っていった。

指から硬度の高い粘土を 繊細に出しながら造っていく地道な作業。


デザイン自体は異世界の船なのだが、地球の船なので トシユキがいなければ

どういった意図で造られているのかが理解できなかった。

だから トシユキは一日中、作業をしていた。


「俺も 手伝うぜ」


マイクという人間は、わからないながらもずっと手伝ってくれていた。

しかし マイクは思った。「こんな難しいことができるトシユキは 一体どこの国の人なのだろう?」と。

そして船は完成した。

運河を渡るには 少し大きいようにも感じるが、でも確り浮かんでいて

デザインは ヨーロッパ風の異世界のものなのだが先端が角のようなカーブで力強い。

船室があって 中で休むこともできるようだった。




出発の早朝 女神はエレナに励ましを送った。

女神は また神界に戻らなければいので一緒には行けないらしい。

でも 神として成長してもらうためにエレナをトシユキに託した。

そして トシユキが異世界へ旅立ったときに渡したあの「旅立ちのリュック」に三輪の花のシシュウを入れたのだった。



「ママ~ いってきます」

エレナは意外と緊張しておらず

いつもの草原を探索するときと同じ軽い感じで旅立とうとしていた。


「エレナ、、」

女神は しゃがんでエレナを両手で包み込むようにやさしく抱きしめた。

愛情という力は存在するのかわからないが でも愛情という力をいっぱい注いだ。


「エレナよ、世界を見てきなさい。街や人、動物や魔物、そして心が紡がれてできる糸に触れてくるのです。

あと、できれば・・・(小声)頃合いをみて、パパに立派な教会をおねだりするのですよ」

女神も異世界での暮らしを楽しみにしいていた。


「うん ママ」

エレナは おませな顔付きになって使命感に燃えて母の期待に応えようとしているのだった。



「大丈夫ですよ、女神様。エレナ様は精霊の可愛さですから、どこへ行っても人気者です」

横からマリアは両手を膝の上に乗せて、中腰のまましゃがんでいる二人に話しかけた。

耳にかかった髪の毛が下がって 揺れていた。


「エレナを頼みますね。マリア」

女神は 立ち上がると手の平からアイテムを出し

それを マリアに託した。

マリアは 自分にも気遣いをしてくれる女神様に心が温かくなるのだった。



・・・・

「荷物は運び終わったぜ。召喚主様・・いいや トシユキ、呼び捨てでいいか?」


「ありがとう。もちろん呼び捨てで!」

トシユキが収穫祭でゴブリンと一緒に踊ってからは なぜか 召喚主様と呼んでいた人たちが

トシユキと呼んでくれるようになっていた。

魔石召喚の思念のような力で、呼び合う生活をしていたトシユキは

あまりわかっていなかったが 人間たちにとっては一段上の人だったのだ。

だって 自分を召喚した主なのだから。

でも みんなをもてなすために、プライドを捨てて踊ってくれたトシユキに

自分から向かってきてくれる姿勢に感謝をしていたのだった。



「出航!!!」


船は岸から離れ ベーレ国を目指す。

土魔法で造った船は 力ずよくみんなを運ぼうとしていた。

船は 人と食料が乗るスペースは十分にある。

今回の目的は 町へ帰りたい人たちを送り届けること、

「私は ベーレ国でパン屋をやっていました。ヤーンといいます。主人と娘に会えるのが待ち遠しいです」

家族の再会を願うもの。


「わたしは 素性は明かせないけどお父さんを探して旅をしているの、ベーレ国へ行けばきっと手がかりが見つかる気がするわ」

小柄な姿だが父親を捜すために 確りとした冒険者になったもの。

そんな人たちの想いが載せられていた。

そして 女神とエレナ。

街の発展のためにも トシユキは葡萄酒がどのくらいの値段で売れるのかも知っておきたかった。

この航路が確立すれば 人とモノが行きかうことになるはずだから!



日記に書かれていた通り、運河が広いので魔物が出てきても全く追いつかれる気配はなかった。

時々 現れる可愛いモンスターが欲しくなったが船は止めらるわけにはいかなかった。

その間にも みんなは酒盛りをしながら楽しそうに期待を膨らませている。

ベーレ国は 大きな運河を二つに分けて両側に街が建っており船で物資を運ぶことも

考えられてつくられた国のようだ。

あと何日かかるかはわからないが 葡萄酒の樽が空っぽになる前に到着してほしい。




「キラービーだ!!」


マイクが叫ぶ!

前方から数匹のキラービーが飛んでくる。

右へ進んで止まる! 左に進んで止まる!とスイスイと こちらへ飛んでくる

動きに統率が取れていた。

「ファイアボール!!」

「ブホォ ボボボボー」


非常用のオールを頭上にグルングルンと振り回して ファイアボールを生成する少女がいる。

さっき お父さんを探していると言っていた小柄な子だ!!

大きなオールに逆に振り回されそうになりながらも オールをグルグルと杖のように回し

マグマのようなファイアボールが頭上に生成されていくのだった。


※ファイアボール・・マグマのような火の球体を頭上に生成して相手を攻撃する人間が使う火魔法


マイクの指示で弓をみんなが一斉に放つ。放つ!

ゴブリンたちが 作ってくれた弓だ。小型で狭い船からでも場所を取らず扱いやすい。

キラービーは倒されていくが 矢をすり抜けてきた奴らはトシユキとケロ子たちで攻撃を阻止していった。


キラービーをやっつけた!!

トシユキはキラービーの魔石を手に入れた。



「ゲロゲロ!!」

ケロ子が何かの異変に気付いたようだが 何もいない。。

「きゃーー!」


マリアがエレナを抱きかかえて叫ぶ。

マリアの周りに バリアのような魔法障壁が表れてバチバチと火花が出ていた。

火花の光で 何かの物体が見える。

よく目を凝らすと アスファルトにできたカゲロウのように、モヤモヤした何かが魔法障壁に

覆いかぶさろうとしていた。



「エナジーランス!!いけー!」



トシユキは まとったエナジーを右手に集めるとエナジーは槍の形に変形した。そして投げつけた!!


「ぐぎゃぁぁ・・」

モンスターは倒された。後でわかったのだが これはシャドーというモンスターだったらしい。


※ エナジーランス・・マルマスが実はあの夜にトシユキにちゃんと力を授けていた。

悪い神ではなかったのだ。

その力とはエナジーを具現化する能力。

エナジーランスは すべての属性を集めて新しい力を生み出すことで

肉体を傷つけることはできないが精神と魔力を攻撃する能力がある。


「大丈夫か マリア!」


「はい 女神様のカゴのおかげでなんとか・・ふぅ・・」

これは??

マリアは 水晶玉のような小さな玉を見せてくれた。

どうやら女神様は マリア達を守るためにアイテムを渡していたようだった。


「シャドーは こんな場所に出現するようなモンスターじゃないぜ。どうなっているんだ・・」

シャドーは こんな爽やかな森の中に出るような魔物ではないらしく

戦場や廃墟などに潜み、その半透明な体を生かして人を襲う魔物だということだった。

トシユキたちの知らないところで 何かが動いているのかもしれない。


「小さいのによく頑張ったわね。ご褒美にこれをあげるわ」


小柄な少女は エレナにコインのようなペンダントを渡した。

土魔法で作られたコインのようで 表と裏に何かが描かれている。


「それは 私の心が崇拝する【天使と悪魔】よ。きっとあなたを守ってくれるわ」

コインには 表に天使、裏に悪魔の絵が描かれていた。


「あのあの、天使と悪魔のどちらを崇拝しているのですか?」

「こういったものは、どちらとかじゃないのよ。天使と悪魔なの」

少女は マリアに神の教えを説いていたのだった。



それから1日ほど進むと ベーレ国が見えてきた。

海からの風を利用した風車が何連も並んでいる。

街並みはヨーロッパの石造りの建物で 草原暮らしの長かったトシユキには懐かしさを与えた。

そして 街のずっと向こうにある 物はなんだろう?

宙に浮いているような・・でも 飛行艇にしては大きすぎる。宙に浮いているのは山だろうか?

遠く大きな何かが浮かんでいた。


大きな運河の両脇に 船を接岸できるところが見えてきた。

何艘ものボートのような小型の船があって 中には牛も載っているようだが 

小舟で運んでいくのだろうか?フルーツをいっぱいに積んでいる船もある。


ベーレ国に 胸が躍った。。

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