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収穫祭2

みんなが寝静まったころトシユキのところへ

白髪の老人が訪ねてきた。

明日、女神は来るのかと聞いてきた。

来ると答えると、老人は自分は神だと名乗った。

そして、その姿を神へと変えた。


「実はな 私はマスルスという神なのだ」

マスルスは 火山の噴火と間違えてしまいそうな、力強い人間の姿だった。


「お前やこの村のようすを見せてもらっていたぞ。

明日は いきなり現れて女神に祝福を送ろうと思ってな、あの姿で潜んでおったのだ」

「そうだったのですか。きっと 喜んでくれると思います」

「それでだ お前に聞きたいことがある。女神についてだが、

お前の本当の気持ちを話してはくれぬか?」


トシユキは 喜んだ。

拠点のみんなにものろけ話をしていたので、実は誰も話を聞いてくれなくなっていた。

待ってましたとばかりに、顔をほころばせ、のろけ話を始めた。

あまりののろけぶりに マスルスもちょっと寒気を覚えたくらいだ。


「わかった。だが私はお前の本当の気持ちを聞きたいのだ。お前は、女神の何を好きになったから結婚したのだ?」


トシユキは 戸惑った。全部好きですというのは簡単、だけどどこが好きなのか?

顔?性格?一緒に過ごした時間?神力?ボヨン~な、お胸?

言葉に詰まってしまった。


「なんだ。答えられぬのか?・・なぜ答えられぬのだ?・・・。

そうか、ならば、お前にも祝いを渡そう。

私からの心からの贈り物だ。遠慮せずに受け取るがよい」


マスルスは少し大きな光る球体を出した。

そして トシユキに両手を出すようにと促した。


「よいか。この力は 受け取るのに少しばかり条件があってな。

お前が受け取りたいっと願わなければ 渡せぬものなのだ。それでも受け取ってくれるのか?」


トシユキは もちろん受け取ることにした。

光の球体は トシユキが願うたびに少しずつトシユキの手のひらに吸い込まれていくのであった。


「よしよし、これでよい。よくなじんでいる」


しかし トシユキは変化を感じなかったので

どんなものなのかと マスルスに聞いてみると・・・

すると マスルスは!!!


「呪いをかけた!! お前は明日・・・・死ぬ!」といったのだった。

それは 死の呪いだった。

永遠に続くと思われていたこの幸せが、明日のこの時間で終わってしまうのだという。

戦って勝てるかわからないし、こうして考えている間にも時間は過ぎて行ってしまう。。


「そんな顔をするな。解放されたければ自分が呪われていると、、女神かお前の娘に話せばよい。

話せばお前は、苦しみから簡単に解放されるだろう。。そういう呪いだ。

むろん話さないのも自由だがな。はっはは。

明日、一日、自分の気持ちをよく考えて伝えるがよい」


マスルスは 老人の姿に戻って去ってしまった。


呪いの事を伝えれば 開放されるらしいが、

伝えた相手がどうなるかは、聞いても教えてはもらえなかった。

トシユキは 一晩中悩んだ。

夜は長かったけど 残された時間はどんどん短くなっていった。

「でも 明日の収穫祭は 確りやらないと・・」


眠れないまま 収穫祭の当日になった。


「よいしょ!! よいしょ!!」


トシユキたちの掛け声に合わせて 朝は餅つき大会が始まった。

餅をついているのはウサギのピョンチ、ストン、ストンと綺麗なフォームでついていく、

ウサギの餅つきが見れるのは、きっと異世界だけだろう。


つきあがった餅は テーブルの上に広げると 「うわ」「うお!」っと

みんなが 一斉にちぎって食べていく。

プリプリした餅の触感を楽しみながら ホホを抑える人たちや、餅を伸ばして遊んで食べる

ゴブリンたちがいた。


「アチアチです。エレナ様」

「ほっほっほふ」


マリアは エレナにお餅を食べさせてあげている。

アツアツのお餅を 少しづつちぎってエレナに渡すと 

食べているエレナを見て「天使ですぅ~」と神様に言っていた。

ニコニコと嬉しそうな姿だった。



「かんぱーい!」

葡萄酒で酒盛りが始まった。

みんなで造った葡萄酒は トシユキの地球の知識もあり大成功の出来だった。

こないだつってきた魚や いろいろな異世界食材を使ったオードブルが並ぶ。


復活して初めてお酒を飲んだ人たちは、歓喜と歌声が聞こえる。

そりゃ~ 生き返って飲むお酒の味は 生きている実感を味わえる格別なものだっただろう

「お~♪ この酒樽を~♪」

ジョッキを掲げながら一人ミュージカルを始めるものや しみじみとお酒を流し込む者もいた。



日も少し傾き始めて みんなが酔っ払ってきたころに舞台ではゴブリンたちの踊りが始まる。

ゴブリンは こん棒を持って片足でケンケンと飛び跳ね、戦いの舞を踊る。

見事な踊りに歓声が上がり、会場は盛り上がっていった。


トシユキも 実は途中から一緒に踊ろうと考えていたので、

ゴブリンっぽい恰好をして、舞台へ上がっていった。

突然の参加に歓迎の声が上がった。

トシユキは踊りだす。 ゴブリンと一緒にケンケンと片足ではねながらぐるりと

一回転してみた。

でも 何かが違うようだ。何が違うのだろう?

結局、ピエロ役として爆笑になってしまった。


一緒に踊っていたゴブリンたちも ニヤニヤしながら首を横に振って笑っている。

どうやら ゴブリンの踊りは奥が深いようだ。

ちょっと 恥ずかしくなったトシユキは

「お手上げ!」というポーズをとって退散したのだった。

だけど 踊り終わって会場に戻ると 人間たちからは暖かい声をかけてもらえて

みんなの一員になれたと感じることができたしみんなは暖かかった。

召喚主様からトシユキへと呼び方が変わったのだった。


さらに 時間が過ぎた。。

収穫祭は順調に進んでいるが このまま時間が過ぎてしまっていいのだろうか・・・。



葡萄酒は何種類か造ったのだが、赤ワインが一番人気だった。

人間とゴブリンしか飲まないかと思われたが ケロ子やピョンチたちまで飲んでいた。

ケロ子はホホをピンクに染め、ピョンチにいたっては、酔拳を覚えてしまいそうな勢いだったし、みんな愉快だった。

トシユキもイノシシと戦った日を思い出しながら楽しく飲んでいた。

思えば みんながいなかったらここまで来ることはできなかっただろう。

みんなありがとう・・。そして もうすぐ さようなら・・。



「エレナとマリア ちょっといいかな」


トシユキは 二人の前にシュワシュワと泡の立っているジョッキを持ってきた。

「これは? シュワシュワはしてますね。お酒のようですが・・?」


マリアは これはお酒じゃないかと聞いたのだが 違うらしい。

発泡葡萄酒を作る工程を利用すると、ジュースにもシュワシュワを付与できると、トシユキは説明していた。

「パチパチ するぅ~」

ジュースの甘さと はじける触感を口の中で楽しんで

口に含むたびに ニマニマと笑って「えへへぇ」と喜んでいた。

マリアも美味しいと思ったのだが同時に思った。こんなすごいことを思いつく、

この人はどこの国から来た人なのだろうっと。

 

収穫祭も後半になっている。もうすぐ終わる。

二人の喜ぶ顔を見たトシユキは 心が満たされているような、そんな顔をしていた。



「なんだ?」


トシユキは、老人に姿を変えているマスルスのところへ葡萄酒を持ってきた。


「よかったら 収穫祭を楽しんでいってください」


ジョッキを手渡そうとしたが、受け取ってはもらえなかった。

そればかりか、さらに 辛いことを言い出した。


「呪いが早まっているな。早くするのだ。

このまでは夜どころか夕方までは持たぬぞ」


ジョッキを持って戻っていく トシユキをケロ子が後ろからピョコピョコとついていく、

ケロ子の視線はうるんでいるようにも見える。

いつからかトシユキの側から離れなくなっていた。



女神様が遅れて会場に現れた。

現れると 動物たちが集まり、首を垂れ、人々は立ち膝になりその美しさに感謝の念を送った。

また 3D美術館が開催されたのだった。


女神はエレナとの再会を喜び、そのあとは座ってエレナを膝に乗せて

マリアと話をした。

マリアは エレナを褒めちぎっていて、その話に女神はクスクスと笑っていた。

エレナは 気持ちを抑えられずに ブンブンと腕を振っている。

久しぶりにママに会えて 嬉しいようだ。

 

トシユキが 自信のある笑みを浮かべてジョッキを持って現れた。

造った葡萄酒のなかで一番いい樽から 持ってきたのだ。

女神は葡萄酒を飲んでから、息を一つ飲み込んだ。。

「いい 出来ですね。おいしいです」といった。

その言葉にトシユキは 泣きそうな顔になっていた。

胸に刺さった。。。


「ゲロゲロ・・」

ケロ子が 励ましてくれているように鳴いている。


マスマルは老人の姿のまま トシユキたちの前に現れて

「そろそろ 時間だ。トシユキよ。あと一言だけ話す時間をやる。さあ 気持ちを伝えるのだ」

と言ってきた。

とうとう 運命の時間がやってきてしまった。

早かった。夜どころかまだ 夕日にすらなっていない。

そんなに 呪いが回るのが早かったのだろうか。

伝えるのか?どうするのか? 何もしなければあと5分も持たないだろう。

どうする??


トシユキは エレナを見た。。。

・・・。

・・。

そして ニッコリ不自然に笑ってうなずいた。

エレナは 意味が分からなかった。

結局、何も話さない、話せない。実の子に話すことは、できないようだった。


そして 女神を見つめた。。

座っている女神を見ている利幸の唇は 少し力が入って震えている。

顔も少しだけこわばっているようだった。

「女神様・・」

女神様に口を開いた。

女神様は 少しだけ目を見開いて 何の告白があるのかとその美しい瞳を

トシユキに向けている。


「女神様・・ 俺は 上辺だけでも、成り行きでもない、本当に女神様を愛しています!!」

「ええ もちろん私も同じ気持ちです」

女神はわかっていますよっとばかりに あっさりした言葉を返した。


マスマルは老人から神へと姿を変えた。

「トシユキよ。それがお前の本当の気持ちだ。お前は頭で考えるクセがあるようだ。

最初から ここで感じたものをそのまま言葉にすれば、、それでよかったのではないか?」

マスルスは 自分の心臓を指さしてそう言ったのだった。。





「マスルス あなた!トシユキに何かしましたね」

女神の顔つきが変わった。マスマルを見た。


「ああ、明日、死ぬ呪いをかけたと言った。。そして奴は答えを見つけた。

娘よりもお前を選ぶとは 予想できなかったがな。はっはは」


呪いというのはウソだった。

最初から マスルスに試されていたのだった。

本当に女神のことを想っていることはわかったのだが、

トシユキは 腰が抜けてそのまま座り込んでしまった。



「まだです! 今度は私があなたと勝負をします!あなたはトシユキを見くびり過ぎなのです」

女神の勝負とは 葡萄酒の味比べだった。

マスルスに 神の力で葡萄酒を作り出すようにと、強く!強く!強制した。


「勝負になるはずがないであろう・・」

マスルスは コップに水を出してからそれを神の力で葡萄酒に変えた。

簡単に美味しそうな香りが漂う葡萄酒ができてしまった。


女神は トシユキの葡萄酒をマスルスに渡して飲むようにっと促した。


マスルスは 一口、口に含んで目を閉じた。。。

息を数回してから、うなずいた。。。

そして 飲み込んだ。。

「ゴックン。」


「では 次にあなたの葡萄酒を飲んでみましょうか?」

「それには及ばん、女神よ。わかりきったことだろう。。トシユキの勝ちだ。騙してすまなかったな」


「ようやく、わかりましたね?」

女神は微笑んだ。 



この後 マスルスの葡萄酒を飲ませてもらったのだが、味はそれなりによかったのだが

どこかに薬のような味のある葡萄酒だった。

神の造る葡萄酒は 簡単で完璧な葡萄酒らしい。。

完璧なものだからこそ、楽しんで飲むことができない味になるのだということだった。

じゃぁ これは出来レースだったのか?

それは違う。

トシユキの造った葡萄酒は 神の造るレベルを超えていたから

だから女神は勝負を持ち掛けたのだった。


収穫祭は 無事に終わり夕方になった。

マスマルは 問いかける。


「トシユキよ。 将来、この村はどうなるのだ??」

「農園を中心に 発展させていこうと思っています。

ブドウ畑を広げて、街を作って、パン屋を作って、

綺麗な海が見えるので、将来は海の見える教会なんてのもいいかもしれません」


夕暮れに 村の将来を語るとマスマルはおでこを「トントン」とたたいて首を振っていた。

女神の顔も 夕日に染まってなのか、とても赤く見えたのだった。。。


・・・・・・・


マスマル「祝福に行ってきた。場合によっては子供を神界へ連れて帰ろうかとも思ったが、その心配もいらなかった。

トシユキは 教会を建てると言っていたからな! 本気も本気よ。こちらまで恥ずかしくなるわ。 はっはは!」


??「教会だって! じゃぁ 神界から異世界に女神を連れだして、異世界の神にするつもりなのか?」


マスマル「むろん、そうだろう。信仰も集めねばならぬからすぐにとはいかぬだろうが、だが修道女はすでにおったぞ、奴はすでに動いておる」


??「・・・。」

マスマルは 去ってしまった。



??「街なんて、作らせない、、邪魔してやる。クシシ」


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