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幸せの選択肢3

俺は 海に潜ってダシに使えそうな海藻を探している。

手のひらから出した 風魔法を使わなくても何となく 口の中に直接空気を出せるようにもなっていた。

「今頃 二人は何をしているのかな?」


動物たちもいるので きっと仲良くしていることだろう。

でも エレナに思い出を残すって事は これでよかったのだろうか?


「あ これだな」


海藻を集めて拠点へ帰った。

トシユキは 少し物足りなさを感じていた。


「おまたせ」


今のところはトシユキが料理を作っている。

料理といっても こないだ造ったばかりの大きなかまどで

煮たり焼いたりしているだけなのだが それでも 質素な味付けを好む女神たちには

評判が良かった。

トシユキも 料理がうまくなったと勘違いをしていたので幸せだった。


「女神様は このあたりで採れるもので一番好きな食べ物はなんですか?」


女神とエレナの好みは ほとんど同じなので トシユキは

エレナが下界で過ごす思い出に 何かを食べさせてあげたかったのだった。


「そうですね。とても希少なのですがサツアン芋と呼ばれる芋があります」


このサツアン芋は サツマイモのような形状で、

でも焼き芋にするとトロ~リと透明な蜜が出てくるくらい甘くておいし~い、芋らしいのだ。

森の中に生えているらしいのだが 幻の芋らしく

ゴブリンたちの間でも 貴重なものとされているらしい。


サツアン芋か!


トシユキは こっそりと一人で森へ出かけることにした。

サプライズしたいのだった。

ただ 今まで探索したところを探しても可能性は低いので

森の奥まで行ってみることにした。


途中では 葉っぱをカッターのように飛ばしてくる魔物や

小さな爆弾の付いた実を放り投げてくる樹木の魔物までいたのだが

交わしたり逃げたりしながら うまく進んでいくことができた。


しかし 肝心の芋は一向に見つけられない。


「そんなに簡単に手に入れられるなら 幻の芋ではないか・・。」


肩を落として 拠点へ向かうと塔が見えてきた。

塔は 拠点とは近い距離にあるのだがゴブリンがいるので今まで遠回りをしていた。

でも 今日は疲れた。

塔の近くを通って帰ろう。


「塔が見えてきたな」


側まで来てみたが いつも現れるゴブリンが現れない。

こんなに近くまで来たことはなかった。

茶色い三角形の塔なのだが 近くで見ると帽子の形をしていることに気が付いた。

しかも 塔には模様が彫られており何かファンタジーな感じをかもし出していたのだった。


突然!!


視界が空を向いた。大きく宙を舞って木に体を激しくぶつけてしまったようだ。

何が起きたのか?

体を起こして焦点を合わせていくと そこには、いた! オーガが一匹。

不格好な長い腕に ムキムキの筋肉を付けている。

そして 牙のある鬼の姿だった。

塔の近くを通ったことを後悔したが 戦うことにした。


「ガオオーー!」

魔物は必殺技として瞬間的にしかエナジーが使えないのだが

トシユキは 一定の間エナジーをまとい続けることができるので

時間が長くなればなるほど トシユキが有利になった。

大きなオーガを追い払ってしまった。


「ウサギ キック!! バシバシバシ」


今度はさっきの騒ぎでゴブリンに気づかれてしまった!


「ブォーーン ブォーーン」



アタリを見渡すと 茂みがガサ、ガサガサとゆでだした。

オシャレをしていると思っていたゴブリンの角笛は 仲間を呼ぶためのものだ。


トシユキは 逃げようと思ったがここは塔の近くだったので

ゴブリンたちは すぐに集まってきてしまった。

「囲まれた・・」


そのとき 一匹のオシャレゴブリンが 俺の前に立って 仲間に何やら話し始めた。

言語はわからないのだが それは 力説だった。

そうか あのとき森で オーガに食べられたところを復活させたゴブリンか。

ゴブリンに感謝した。

しかし そのオシャレゴブリンと俺は 弓を突き付けられてしまう。

ゴブリンも「すまねぇ~」といった顔をしていた。

俺たちは ゴブリンの村へ連れてこられた。

やっぱり あの塔がゴブリンの村になっているようだ。

塔の形をはっきり見ると 魔女の帽子のような形の塔だったのだ。


「これは 魔女の帽子!」

昔ここで何が行われていたのかはわからない。

ただ 今は俺たちは弓を突き付けられている。


そして 村は戦争でもあったかのように 荒らされていた。

先住民の方が使っていそうなテントが何棟も倒されており

囲炉裏もめちゃくちゃ 柵もめちゃくちゃに壊されていた。部族間の衝突でもあったのだろうか?


長老と思われる、ゴブリンがやってきて何やら喋ってから俺に魔石を渡してきた。

「そういうことか!」


俺は魔石召喚を始める。

ゴブリンの召喚に必要なアイテムは・・・・「芋」だった。


「これなら 復活できるぞ」


トシユキは 恐る恐る囲炉裏に近づき芋を見つけると一匹目のゴブリンを召喚した。


目の前で起こった奇跡だった!


それを見た。ゴブリンたちから静かな歓声が上がった。

そのあとは 召喚をどんどん繰り返していった。

芋がなくなれば ゴブリンたちは芋を取りに行った。

そして ある魔石を召喚したとき。

俺を助けようとしたゴブリンが召喚したゴブリンを抱きしめたのだった。


「まさか 愛の再開まで見られるとはな」


ちょっといい気分にもなって召喚をつづけた。

最後のほうは ゴブリンたちの踊りや歌に囲まれて それはもう、お祭り騒ぎだったのだ。


トシユキはステータスと一緒に 魔物の言葉も取得した。

言語を扱う魔物と話ができるようになった。

村長のゴブリンと 話をしてみるとこの村はオーガに襲われたのだという。

オーガは 地球のスズメバチのような魔物のようでミツバチのようなゴブリンたちを

一方的に襲うのだということだった。


「それは気の毒に」


同情したトシユキは ゴブリンたちに復活したゴブリンにはレベルというものが

できたと説明した。

実際に 少し狩りをさせると、ゴブリンたちはすぐに、そのことを理解した。

もう これでゴブリンたちは大丈夫だろう。



俺は 塔の中に興味があった。

魔法関係の何かが眠っているかもしれないぞ。


期待に胸が躍った。


ゴブリンの村長に話をすると 快く案内してくれるという。

塔の一階は ゴブリンたちの部屋。

二階は 村長の部屋だった。

村長の部屋は 木製のイスはいいのだが。散らかっていて骨やら角やらが散乱している。

ゴミの片付けのできない村長かと思ったのだが、よくよく見れば気が付いた。


これ 村長のコレクションか?


大人スキルで それなりに褒めてあげると初めて褒められたのか、とても上機嫌になっていた。

帰りに好きな角を一本くれるという。

もちろん 丁重にお断りさせていただいた。


三階から上の階へは 行ってもいいそうなのだが ゴブリンたちは「行けない」と言い出した。

そして 階段を少し上がると後ろのゴブリンたちから 感謝の念のようなものを感じたのだった。


結局、四階まで上がったのだが 本と魔石を一つ手に入れただけだった。

本は 日本語で書かれており、この魔石は人間のものらしい。

あとで 浜辺にでも行って埋葬してあげようと思う。

魔石は 魔力の石だから、いつかは砕けて自然に帰る。 

きれいな場所に埋葬してあげたい。



帰りには 沢山のお土産をもらった。

砂金や魔石の入った革袋から ハーブや芋から野菜や角までいろいろとカゴに入れて持たせてくれた。


そして・・・ 最後に表彰式のようにある 芋を手渡された。

そうだ ツルがそのままついた、サツアン芋だった!!


俺は 飛び上がって喜んだ。

俺がいくら探しても見つけられなかったのに ゴブリンたちは探してくれたのだという。


「やったー!サツアン芋だ!!」


早速、鑑定リングで調べてみると

「おめでとう。これは私の大好物です。甘くてとっても美味しいの・・・・」

と ウィンドウに手書きの文字がたくさん書かれていた。


エレナの顔が浮かぶ。

きっと おいしいと言って飛び跳ねてくれるだろう。


ウキウキしながら 拠点へ帰った。



「実はですねぇ~ お二人に食べてもらいたいものがあるのですよ」

「これは サツアン芋ではありませんか?!」


サプライズなのに もったい付けてしまう性分があるのだが

焼き芋を見せると 女神は気づいた!!


そう サツアン芋ですよ。どや すごいでしょ!

女神の気配が感じられなくなった。 

目を通してすべての神経が芋に注がれているためのようだ。


「二人で食べるといいですよ」

「トシユキは 食べないのですか?」


俺は 胸がいっぱいだった。

それに 美味しいものなら 少しでも多く二人に食べてもらいたい。


二人の向かい合う笑顔。

エレナの口についた芋。 女神の胸元にこぼれて留まる芋。

二人で食べる姿は 親子そのものだった。


「おいしいー」

「おいしいね エレナ」。。。。。





ブドウの木が大きくなり花が咲いたころ。


「もう お別れはいいのですね。」


「うん」


「それでは 私の中へ・・・・」


エレナは 女神に抱き着くとそのまま スーっと消えてしまった。

女神は 一人でハグをしているような恰好になり、そのまま止まっていたが

静かに 涙を二つ流した。

一つはエレナの涙かもしれない・・・。



俺は女神様にお礼を言ってから、女神様の大きな心が詰まった胸に向かって

声をかけた!


「エレナ ブドウが実ったら 収穫祭やろうぜ!! 

お父さんのところにも、たまには遊びに来てくれよ!!」


・・・。

・・。


「はぁ。もう ダメ!」

女神は よろけて俺のほうへ倒れこんできた。

俺は女神の手を握った。

女神のうるんだ瞳と俺の顔は近い。


甘い香りがする。

女神の瞳って かわいい・・

唇も 水のようで、心の何かが流されてしまいそうだ・・・。



「はい! できました!!」



女神は体制を直すと 俺に手を出すようにと促した。

そして 自分の手のひらをオレの手のひらに重ねる・・

二つの手の中から 光る球が現れて 大きくなっていく。

さらに 大きくなって破裂して煙の中からエレナが出てきた。


「ただいま! トシユキ!!」


エレナは 俺に飛びついた。

俺は エレナを抱きしめてグルグルと回りながら再会の喜びを確かめ合った。

本当に良かった。 

女神も 微笑んでいる。動物たちも見える。

でもどうして?


「エレナは 神として生を受けたのです、これでまた一緒に暮らせますね」

女神は微笑んだ。



ありがとう女神様。お帰りエレナ!! ずっと一緒だ!!


グルグルもおわって俺から離れたエレナは 今度は女神のところへ抱き着きに行った。

「ママも抱っこ!!」


「エレナは 女神様の子供ってことになるんですね」


「ええ そうですね。 そして あなたはパパですよ!」


ん? ん??  パパだって!




「もう トシユキってば!! エレナを好きにさせるなんてズルいです。

私も あなたが好きになってしまったではありませんか!!恥ずかしい(/ω\)」




そうか エレナと女神の心が一つになったから、女神は俺のことを好きになっちゃったんだ。



「えー!!!!! 」

俺 なんか 知らないうちに女神と結婚しちゃってました・・・

もちろん、子供もいます・・・。


俺たちは 浜辺に来た。 そして改めてプロポーズをした。


「女神さま 俺と結婚してください」

「はい (〃ノωノ)」

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