真っ赤な葡萄酒4
夕方になり 帰りの道はエレナがマリアの手を引いて船着き場まで歩いていく。
夕日は 橋や人や木々を橙色に染めていた。
「ジャラン~♪ ジャラン~♪ ジャン~♪」
「それは 神の光♪ しかし 善行を行う悪の神は魔女の帽子の塔へ・・♪」
そして路地の遠くからはハープの音色が聴こえてきた。
金属感のある音と歌声が 夕方の夕日の街の景色に静けさを与えている。
「あれは マイクさん? マイクさ~ん」
マリアが路地で歌っている二人のそばにいるマイクを見つけた。
路地でハープを奏でていたのは ドワーフのハーパーと歌っていたのはエルフのミーフだった。
「よお! 食堂から帰ってきたのか? マリア、紹介するぜ。こちらのエルフがミーフさん、そしてこっちのドアっ子がハーパーだ。」
「あら マイクさん ドアっ子なんてひどいわ がはは」
俺たちは ジョンのスープ屋で夕飯を一緒に食べることになった。
「じゃぁ みんなコーンスープで」
「あいよ」
出てきたコーンスープを飲みながら 俺たちは話をした。
「さっき歌っていた歌は何の歌ですか?」
「あれは この世界で起きた神話を歌にしたものです」
この世界に住みたいと思った神様がこの世界の神になるために人々に良い事をするのだけれど
結局 人々から嫌われて、最後は悲しい結末を選択するという歌だった。
そして ミーフとハーパーは仕事がないときは 街で歌って路銀を稼いでいるらしい。
「一族の借金を返すために 旅をしているんだ」
マイクが言うには 二人がお金をためているのは一族の借金を返すためらしい。
エルフの酒屋からツケで一樽のニードを買ったご先祖様たちが100年間支払いを忘れたために
すごい金額になってしまったらしい、ドワーフはともかく、寿命が長い種族らしいトラブルなのかもしれない。
そこで 一族一同で返しているということだった。
でも ベーレ国で銀貨の雨が降ったと聞いてやって来てたのはよかったんだけど、
当てが外れてしまったのだとか。
「勇者だけどよ、 ギルドでクエストを受けてから帰るらしいぜ」
勇者は ギルドでクエストを受けたのでしばらく帰ってこないらしい。
ギルドのクエストは お金のほかにもアイテムが報酬だったりする。
あるアイテムが目当てで ベーレ国から「火山と温泉の町ミクロネーゼ」に続く街道に出てくる
バッタバッターという魔物を駆除するのだとか。
一匹一匹は弱いのだが、繁殖力の強い魔物らしいので時間がかかるということだった。
そういえば「火山と温泉の町ミクロネーゼ」といえば 以前、港バザーで「砕けた聖剣の欠片」を
扱うことが出来るかじ屋が住んでいるという場所だった。
港バザー経由で仕事の依頼をしているのだがどうなっただろうか?
伝説の金属だけに 時間がかかるという話ではあった。
すぐには完成しないだろうが機会があったら 温泉に行きがてら見にいってもいいかもしれない。
「温泉かぁ~」
「あの温泉は・・・・私なんて3回もスタートに戻っちゃいました・・」
「私はゴールで来たわよ、最後は竜の口の像から出てくる温泉ブレスがあったの。
勇気を出して飛び込んだのよ がははは」
「トシユキー エレナも行く!」
トシユキが 温泉のことを考えていると 気づいたミーフがミクロネーゼの話をしてくれた。
どうやら 火山の洞窟を利用した温泉らしくダンジョン温泉というのが名物らしい。
回転する壁などの仕掛けもあって楽しめるのだということだった。
もちろん家族水入らずで入ることが出来る貸し切り家族風呂もあるらしく、
家族連れからご年配の夫婦まで 誰でものんびりできる場所らしい。
エレナも楽しそうに話を聞いていた、女神と三人で行けたらいいのだが。
イヤ よし! いつか行こう。
「では 私たちはこれで。久々に楽しく話せました」
「まったねー マイク!がははは」
ミーフはすました感じのおじぎをし
ドワーフの ハーパーは元気よく 何度もマイクに手を振っていた。
「ミーフちゃんの 歌声が耳から離れないぜ」
マイクは 帰りの船の上でもミーフの歌を口ずさんでいた。
数日たって・・女神が帰ってきた。
しばらくエレナとの再会を楽しんていた。
そして トシユキはベーレ国で起きていることを女神に相談してみた。
「そうですか、ベーレ国ではそんなことになっているのですね」
女神はトシユキの話をときには深くうなずき、ときには 小首をかしげて聞いた。
きっと ベーレ国で起こっている事が何なのか説明してくれるはずだ。
手からお金か何かを出して おままごとか何かを交えながら
「○○だったから いけなかったのです」と教えてくれるだろう。
そうすれば トシユキの心の中にあるモヤモヤしたものも晴れていくと
そう思った。
「トシユキ これを覚えていますか?」
女神は 部屋にある葡萄酒をコップについだ。
そのコップに指を入れるとかき回し始めた。
そして トシユキに飲むようにっと差し出した。
その葡萄酒を飲んでみると美味しいのだが薬品臭い味がした。
「これが 簡単で完璧な葡萄酒です。ですがあなたはこれを毎日飲みたいと思いますか?」
「いいえ、せっかく作って頂きましたが 毎日飲みたいとは思えませんね。
何かで割れば毎日、飲めると思いますが。。」
女神は微笑んだ。
「わかりましたね?このことを忘れないでください」
てっきり手からお金を出して説明してくれるのかと思ったけどそうじゃなかった。
神様っていうのは 人々を育てるために人に悟らせるようなことを言う。
ただ 普通の人が女神と会話をしたのなら、ここで終わりだ。
でも 俺と女神は夫婦ですからぁ~、もっと 聞いちゃいましょう。
「・・・・・女神 俺たち夫婦じゃないか」
ベーレ国で起きているお金と経済の現象について詳しく話を聞いてみた。
・・・。
・・。
・。
なるほど、、お胸がボヨヨンね・・・。 実は話の途中で挫折した。話が難しすぎた。
しかも 最後には答えが二つ以上あるみたいなことまで言い出すのでお手上げだった。
いや でも やっぱり女神は優しい。最後にちゃんと答えをくれた。
「あなたの経験したこと。それを形にすればいいのです」っと 心臓を指さしたのだった。
そうだ。 自分の行動で多くの人たちを助けられるかもしれないし、
結局は食堂の子供たちだけしか助けられなかったという結果になるかもしれない。
でも きっと どちらも正解なんだ!
ありがとう女神様。勇気 もらえました!
「ありがとう 女神様」
「ちょっと まって・・」
「ハートですよね? 自分のできることをやってみます」
トシユキは 女神に励まされて自分のやれることをやろうと決心した。
そのための準備に情熱を傾けようと意気揚々と女神の元を去っていったのだった。
「・・・。」
「エレナ すみません。抱きしめさせてください」
「うん ママ」
エレナは ママの何かを感じ取った。
女神はエレナを抱きしめた。
そして エレナの髪の毛を ハサミで散髪をするように、二本の指ですくった。
「トシユキ・・ また 髪が伸びましたね。」
神様であっても さみしいと思うのだろうか。
トシユキは ベーレ国の食堂を中心に配給を始めた。
おわんに一人一杯の 食事が配られる。
「食べられない人がこんなにいたのかよ」
マイクは驚いていた。
配給を始めると たちまち長い行列ができた。
一杯しか食べられないのに、並んでも空腹が満たされることはないのに並ぶ列、
マイクや マリアが献身的にコツコツと配給を配り、トシユキはとにかく野菜を
ぶつ切りにして食材を煮込んでいった。
食堂の子供たちも 野菜をブチ切りにして鍋に 入れてくれた。
遊び感覚でも人数が多いので助かった。
そして。 食べ終わった人たちが無償で配給を手伝い始めた。
スラム街が近い人たちは 魔法の行使が苦手な人たちが多いと 一目でわかったけど
でも 野菜を手にした彼らはたくましかった。
素手で野菜を引き裂いたり 土魔法が使える人と協力してかまどを作ったり
そこに トシユキが火魔法のマグマをかまどに注いだりと、
一丸となって 食事を作ることが出来た。
頃合いを見て トシユキが話を切り出した。
「毎日 食べられる暮らしをしてみたくはありませんか?」
みんなは そりゃ 毎日食べられる暮らしがしたいに決まっているだろう。
っとトシユキを見上げた。
自分たちが下を向く癖があったことに気付く者もいた。
そして トシユキは みんなの前に綿花と糸を並べて見せて
草原で織物産業をスタートさせると 宣言をしたのだった!!
草原はモンスターと共存することになるので通貨はほとんど使えない。
カエルに金貨を渡しても、おしっこをかけられるのが落ちだろう。
だから ルールがいくつかあったが 特徴的なことを一つ上げれば最低限の食料は
配給されるという、配給制というルールだった。
ベーレ国は小さな国なので元々 村のような小麦や綿花を自給していた国だった
だから お年寄りの中には 織物の技術のある人達が多くいたのですぐに人は集まった。
「これなら 何とかなりそうだ」




