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シェリーとベベ

迷宮の第一階層にたどり着いた俺は、マッピングスキルを使用し、

10階層までの道順をおおよそ把握する。


魔物のレベルについては、概ね20前後、オークとウルフ、蜘蛛とベーシックな魔物だが、

急激に魔素の濃度が上がったせいか、より攻撃的になっているようだ。


(道中が面倒だから、ハイドを使おうか)


ハイドとは、

中級レベルの闇魔法であり、自分の存在を極端に薄くし、

敵とのエンカウント率を下げることができる。

高レベルになれば、存在自体を消すことができ、

敵に対抗スキルがない場合、奇襲を仕掛けることも可能である。



ハイドを使用し、迷宮内を超高速で移動する。

道中、魔物と戦闘中の冒険者を何人か見つけたが、どれも苦戦をしており、

ギルド単位で行動している所もあった。



気づかれないよう背後を抜けていきながら、

苦労することもなく7階層までたどり着いた。



この辺りまで来ている冒険者はほとんどいないようで、

気配はほとんどなかった。だが、



(2人、気配を感じる。レベルは・・・4と5!?どうやってここまでやってきた??)



7階層ではオークとウルフがコンビで群れを作っており、

装備もシルバーシリーズ同等のものを持っていた。

とてもレベル4や5が太刀打ちできる魔物ではない。



急いで気配があるフロアまで移動すると、犬人族と猫人族の少女2人が

オークとウルフ達にじりじりと追い込まれているところだった。



「こっちくんなだし」


「私たちここでおしまいだみゃ」



だし?みゃ?



このままだとオークの一撃で瀕死もしくは即死し兼ねないので、

中級の時魔法であるテレポを使って、オークと2人の間に割って入ることにした。


「みゃ!!??」


「誰かわからないけど、助けてほしいんだし~」


ハイドの闇魔法の効果が解け、存在がいきなり露わになったせいか

オークとウルフたちは一瞬困惑した表情を見せたが、すぐに冷静さを取り戻し、

勢いよくおれたちに襲いかかってきた。


「テレポ」



犬人族と猫人族の少女を両腕に抱えたおれは、テレポを使って

オークとウルフの背後に一瞬でまわりこむ。


「フォーチュン・フィール」


2人を包んだ光は、柔らかであたたかい緑色の光で、2人をまとっている魔力が

何倍にも膨れ上がっていた。


2人にかけた魔法は、全ステータスをかなり底上げするバフの一種で、いまであれば

2人ともレベル15程度には身体能力が上がるはずだ。


「みゃみゃみゃ!!??」


「すごい魔力が体から溢れてくるんだし!!!」


オークとウルフ達も、2人の急激な魔力の上昇に一瞬怯んだ。だが、好戦的に

なっている彼らは、お構いなしに襲い掛かってくる。



「この装備を使ってみて」


そういって2人に渡したシルバーシリーズの槍と短剣は、見た目こそ平凡ではあるが、

おれの魔剣スキルで特別にコーティングされた、シルバーらしからぬ一品になっている。

攻撃力だけでいえば、アダマンタイトに匹敵するレベルだ。



「こんな装備みたことないみゃ~!」

「これなら、オーク達をおミンチにできるんだし」


2人は猫人族には短剣スキルが、犬人族には

槍スキルがそれぞれレベル1だが

備わっていた。



おれは突撃する2人を後援する形で、2人のサポートにまわった。

身体能力が格段に向上している2人は、力ではオークと互角になっており、

早さではウルフとも対等に戦うことが出来ていた。



犬人族の少女の槍は一撃がとても強力で、ウルフを一撃で葬っていた。

猫人族の少女の短剣は、2刀流を駆使し、手数を武器にオークの体力を

ものすごいスピードで奪っていった。



おれはというと、2人が与えられたダメージを光魔法を使って瞬時に回復するととともに

オークとウルフ達にもデバフをかけ、少しばかりのサポートをしてあげた。


そうこうしているうちに、

20体近くいた魔物の群れはあっという間に全滅し、2人のレベルは一気に10になっていた。



「すっごい、すっごいよご主人様~!わっちオークをやっつけたんだみゃ~!」

「それもこれもご主人様がくれた槍のおかげだし」



いつおれがご主人様になったんだ・・・。


周囲には魔物の気配はなくなっており、先ほど倒した魔物の群れが、

この7階層のほとんどであったことがわかった。




「ところで、君たち二人はどうしてこんなところにいるんだ?」


「わっちはシェリーだみゃ」


「おいらはベベなんだし」


「シェリーとベベっていうんだね。おれはかおるん。駆け出しの冒険者だよ」


「ご主人様はすっごい強いんだみゃ!駆け出しなわけないみゃ」


「そうなんだし。とっても強いんだし」


「そんなことはないけどね・・・。」



ここに迷いこんだのは、何かの転移魔法か、それとも迷宮の罠によるものか・・・?



「わっちたちは、落とし穴のトラップに引っかかって、この階層まで移動したんだみゃ」



なるほどね、落とし穴か。1階層から移動したとしたら、危険極まりないトラップだな。


「ここまで移動した時は、わっちたちは気を失っていて、気がついたらオークたちに

囲まれていたんだみゃ」


「そういうことだったのか。シェリーたちも姫救出クエストに参加してほしいってアーニーさんから

頼まれたのかい?」


「おいらたちは頼まれていないんだし。あの時ギルドでジェリノア王女が迷宮に連れ去られたって

聞いて、急いで迷宮まで向かったんだし」


おれが1階層から降りている間に後から迷宮にたどりつき、1階層で落とし穴の罠に

引っかかって、7階層まで一気に落ちてきたってことか。


「2人を地上まで送るよ。おれには転移魔法もあるし、すぐにここまで戻ってこれるしね。」


「ご主人様!わっちたちをジェリノア姫のところまで連れて行ってほしいんだみゃ」


「村を滅茶苦茶にしたあいつたちをやっつけるには、レベルアップしなきゃいけないんだし」





詳しい話はわからないが、どうやらシェリーとベベの村は魔物によって滅ぼされ、

その敵討ちをするために、さっきギルドで冒険者登録をしたばかりのようだ。


敵のレベルもよくわかっていない状態で、姫救出クエストの為に迷宮に飛び込むなんて、

無謀にも程がある。




「通常の敵なら任せても大丈夫だが、ここのダンジョンマスターは

倍近くレベルが高い。無理だと判断したら戦闘から離脱して、

すぐにおれと交代だ」



「みゃ~!」「だし~!」




こうして3人パーティとなった俺たちは、8階層へ続く道へと進んだ。

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