スケボーとローラースケート
ブックマークが少しずつ増えてきており、モチベーションアップに
繋がっております。皆様本当にありがとうございます。
不思議と落ち着いた光を放つそれは、現実世界の言葉でいうと
紛れもなく”スケボーとローラースケート”だった。
「「???」」
2人ともよくわからないといった表情だ。それもそのはずだ。
こんなの最初見たときは、どう乗れば良いのかなんてわからない。
オンラインゲームであるあるなのかもしれないが、移動アイテムで
他より目立ちたいと思ったことはないだろうか。
装備で他より劣ることは仕方がないとして、移動アイテムでちょっと目立って
みたいと考えたことはないだろうか。
【高速移動】【浮遊】エンチャント付のUUは、とんでもなくレアだ。
金貨の価値でいうと、恐ろしい値段になる。
もともとはイベントの特別賞のアイテムで、限定数のあったものだった。
当然俺たちマティーニは取りにいき、まずはN品を手に入れることに成功した。
だが、それだけでは使い物にならない。
【高速移動】【浮遊】の2つのエンチャントが
付いたのは奇跡以外に他ならない。そのままだと、道に大きな石や
障害物があるとすぐこけてしまうが、【高速移動】オプションのおかげで
高速移動かつ周りを魔力でコーテイングできる事により、道端に落ちている
障害物を気にせず走行することができる。
さらに、【浮遊】オプション付で、なんとローラーが横になり、
飛行することができる。
もちろん使用者の魔力値が低いと出来ないので、シェリーとベベの
場合は、当分高速移動のみだろう。
俺たちのギルドは奇跡的に成功したが、他のギルドはエンチャントに失敗して
アイテムごと消失した所も少なくなく、
「さよなら、みんな」
「おれ、引退します」
「夢で逢えたら」
「仕事辞めます」
など、モチベーションをがくっと落としたユーザーが
引退宣言してみたり(おそらく引退したユーザーはいないだろうが・・・)
リアルでの決断を後押しされてしまった人もいたようで、
まさにいわくつきのアイテムなのだ。
「おれはスケボーに乗るから、二人はローラースケートをつけてくれ」
「すけぼお?」
「ろーらあこーす?」
2人にローラースケートを装着させ、魔力付与の仕方について簡単にレクチャーする。
すると、不思議な光とともに、ローラースケートに魔力が付与された。
「「うおおおおおおお」」
「ご主人様~!!!これ、これええええ」
「楽しいいいい!!!」
すると二人は、ミストラルに続く道を高速で突っ走っていった。
おれもスケボーに魔力付与をさせ、高速で追いかける。
通常、馬車でミストラルまでいくと、寄り道なしで5日はかかるようだ。
スケボーとローラースケートなら、
頑張れば1日で着く。
まあそんな無理はする気はないので、途中で野宿して
2日かけていく予定だ。
隠蔽スキルでUUであることは隠しているが、
それでも貴重なUであることは変わりない。
出来れば目立ちたくないので、隠蔽スキルを使って、
町中では普通の靴の見た目でカモフラージュするつもりだ。
もしかしたら1000年後のこの世界であれば、これからいくような
城下町なら、スケボーやローラースケートを履いている人は
いっぱいいるかもしれないが・・・まあおそらくいないだろう。
俺たち3人は、道を高速で移動していく。
すると、先の方で魔物に襲われている馬車らしきものを目視する。
「商人が襲われてるにゃ!」
「おいら助けてくる!」
馬車に近づく前に、二人のローラースケートは、
隠蔽スキルを使って、普通の靴のような外装で
カモフラージュした。
馬車を襲っているウルフ達のレベルを確認すると
10~12くらいで、ウインドルークの町の周りにいた
魔物より一回り強い。
シェリーとベベのレベルは20なので、問題なく倒せるはずだが、
今回は人の命がかかっている。速攻で倒してもらいたいので、
光魔法上級、全体ステータスバフ”スターリンク”をかける。
2人の身体能力は飛躍的に向上し、馬車まであっという間に
辿り着き、ウルフ達を次々に葬っていく。
馬車には商人が一人と付き人が2人乗っていた。
商人の方が深いダメージを追っており、馬車の奥で
うずくまっていた。
おれは素早く馬車に乗ると、周りのウルフ達を素手で
ふっとばしていく。
ウルフ達を素早く蹴散らすと、
「通りすがりの冒険者様。助けていただいて、
本当にありがとうございます」
付き人の2人から、大袈裟とも思えるくらい
とても感謝された。
おれは馬車の中に入り、商人の状態を確認する。
ダメージも大きいが、毒をもらっている。
「アースヒール」
「アンリカーム」
おれは、光魔法中級の回復魔法と
上級の全状態異常回復魔法を唱えた。
「おおおお、冒険者様、あなた様は賢者様だったのですね」
ちゃいますねん、知らん間に使えるようになっとったんですわ。
商人の顔色はみるみるうちに良くなっていき、ゆっくりと
意識を取り戻した。
「あなた・・・は?」
「通りすがりの冒険者ですよ」
「おおおお。私たちをウルフ達から救ってくださいまして、
ありがとうございました。」
「いえいえ、ウルフ達をほとんどやっつけたのは、この子達ですよ」
「助かって良かったんだみゃ」
「悪いウルフ達を懲らしめるのは当然だし」
胸を張ってそう言った2人は、誇らしげで
おれとしても微笑ましく思えた。
「私は行商人のクリストと申します。これからミストラルへ
向かう途中だったので」
「私たちもミストラルに向かう途中でしたから、
道中で助けることができて良かったです。」
「ミストラルに向かわれるならお気を付けください。恐らく
明日には魔物の群れがミストラルを襲撃するはずです。」
ということは、クリストはその噂を知って、ミストラルから逃げてきたということか。
「あなた様もお強いですが、ミストラルを襲う魔物は得体の知れない連中です。
ミストラルに行くのはおやめください。」
「そうですねえ・・・」
すると、シェリーとベベがスッとこちらに来て
「わっちがミストラルを助けるんだみゃ!」
「おいらが町を守るんだし!」
そう言って、
2人はそれが使命であるかのような表情を見せた。
「ご忠告ありがとうございます。私たちも簡単にはやられませんが、
もし危ないと判断した場合は、すぐ撤退しますから」
「そうですね、それが良いと思います」
うんうんといった表情で、ようやくクリストもホッとしたようだ。
シェリーとベベは全然納得している様子はなく、何か言いたげで
あったが、おれがスッと2人の前に手を出して制した。
「本当に助けていただいてありがとうございました。
出来ればお名前をお伺いしたいのですが・・・」
「私はかおるんと申します。」
「かおるん・・・・!そうでしたか、そうでしたか・・・!」
納得、といった表情で、おれを上から下まで見下ろしていた。
「では、まだ道中ありますので、これで失礼致します。」
「かおるん様、これはお礼です。ぜひ受け取って下さい」
そういって数枚の金貨を渡そうとしてきたが、やんわりと断った。
そうゆうのちょっと困るんだよね・・・。
こうして俺たちはクリストと別れ、彼らが見えなくなったところで
またローラースケートとスケボーに乗り換えた。
道中、シェリーとベベの魔力が切れてきたり、体力が落ちてきたときは
無限ストレージでストックしているミドルマジックポーションを飲ませたり、
休憩を入れながら走った。
すると、だんだん周りが暗くなってきたので、適当な
広場らしい所があったので、ここで野宿することにした。