ドワーフの武器屋
「いらっしゃい」
店にはドワーフの店主らしき人物が一人。
おれは武器屋の中に入ると、一目で、「良い店」である事が
すぐわかった。
「いっぱい武器あるにゃ~」
「斧かっこいい!!」
盛り上がっている2人には、下手に触らないようにと注意しておく。
おもちゃ屋に連れていった子供に壊さないようにと
注意する親の気持ちだ。
2人をよそに、おれは目当ての武器がないか店内を見渡す。
N品で上々から上級の出来、またSR物がけっこうな数
揃えてあり、短剣から槍、斧までバリエーション豊かに揃っている。
そして、店の端に置かれていた、まだ値札がついていないものを
一目みてドワーフの店主っぽい人に声をかける。
「すいません、これを購入したいんですが、いくらですか」
「ああ、それか。2つとも金貨1枚だ」
まあそれくらいだよな。
「じゃあ・・・それを2つともください。」
「んん?・・・お前、それがどんなエンチャントが
ついているかわかってるのか?」
「フリーズlv2とクリティカルlv2ですよね?」
「・・・。お前、名前は?」
「かおるんですけど」
「!! そうかそうか!お前がマティーニのギルマスか
わはははこれは傑作だ!」
目を大きく見開いたそのドワーフは、興味津々といった表情で
おれをしげしげとみている。
「いや~、すまんな大きな声出しちまって。
最近鑑定スキル持ちの冒険者はめっきり
見なくなったもんだから、嬉しくてな」
「あんたの仲間の2人、良いもんもってんじゃねえか。」
「ご主人様にもらったんだみゃ~!」
「なんか朝にね、ご主人様がぱああっと光を出してね・・・」
「ああああ、えーと、店主!支払いを済またいんだが!」
ベベが余計な事を言いそうだったので、俺が割って入った。
2人の防具は見た目N品の為、エンチャントしてる事がバレたら
隠蔽スキルを使っているとバレてしまう。あとで注意しておこう。
「ああ、そうか。まあなんだ。この子ら見た目も中身もまだ子供だが、
レベルは20もあるんだから、ほんと末恐ろしいな」
「いえいえそんな、とんでもないですよ」
「それで、あんたたちミストラルに行くんだってな」
噂ってのはほんと凄いな。みんな俺たちの行先がわかっている。
「はい、そのつもりです」
「だったら、魔物が襲撃する噂があるから、
もし本当に行く気なら注意するんだな。
まああんたらの事だから、下手に死にはしないだろうが」
グランドにも忠告をうけたが、この噂は本当のようだ。
「ご忠告ありがとうございます。気を付けてミストラルに向かいます」
「ああ、気を付けてな。」
支払いを済ませ、店を出ようとしたとき、後ろから呼び止められた。
「ああ、あとミストラルの武器屋に行ったら、ドワーフのスロールってのに、
モーズがよろしく言ってたと伝えてくれ!あいつ全然帰ってこねえから、
いつ帰ってくるんだって言っといてくれ」
「わかりました。ちゃんと伝えておきますね」
そう言って、俺たちはドワーフの武器屋を後にした。
しばらく町中を歩いていると、町の外が見えてきた。
外は壮大な草原が広がっており、ミストラルへの一本道が
通っている。
ミストラルまでの道は険しくはないが、ただ長い。
普通なら馬車を買って、5日かけてミストラルまで向かうという。
だが俺にはとっておきのUUの移動アイテムがある・・・!
「シェリー、ベベ、じゃあこれを履いてもらって良いかな」
次回、UUの登場です。